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第四十六話 国家精霊料理人の実力

 エレベーターに乗り込んだ俺は二人に、今朝届いた手紙の事について尋ねた。

 

 「ねぇ、今朝届いた手紙見た?」

 「オリエンテーションのお知らせの手紙? 見たわよ」

 「え? なにそれ? おりえんてーしょん?」

 

 フィナンだけが確認していないようだ。俺は心の中で、やっぱりか、と苦笑した。

 

 「はぁ……、そんなことだろうと思ったわ……。部屋のドアの隙間に新聞と一緒に手紙が挟まってたはずよ」

 「手紙……、あったっかなぁ? あははっ、気づかなかったや!」


 俺はあっけらかんとしているフィナンに念のため、今夜行われるオリエンテーションについて説明した。


 「今日の夜、この前入学式があった場所で、新入学生のための説明会があるんだよ」

 「なるほどなるほど!」

 「遅れちゃだめよ?」

 

 フィナンはニカッと明るい笑顔を浮かべながら右手で「了解っ!」と敬礼した。


 「一階デス!」


 一階に到着した俺達はお腹を空かせながら食堂へと向かった。

 食堂横に併設されている売店の店頭では、ドワーフの店主が足を組んで新聞を読みながら煙草を吸っている。

 今の時刻は朝の七時頃、起きている生徒はまだ少ない。皆授業が再開するまではゆっくり過ごしているのだろう。きっと明日からは多くなるはずだ。


 食堂に入り、キッチン前に並んだ。ここでキッチン内の人に食べたいメニューを伝えるのだが、俺は当然の如くムエットとスープのセットを頼んだ。

 イオラはパンケーキとサラダとコーンスープのセット。

 フィナンはベーコンとレタスが挟まれたサンドウィッチとコーンスープのセット。そしてオムレツとソーセージとサラダだ。フィナンだけ少し多めだ。

 

 料理を受け取った俺達は、二階の景色が良いお気に入りの場所に座った。

 

 「フフッ、マサトったらまたムエットなのね」

 「よく飽きないねぇ~」

 「うぅ、お恥ずかしい……。でも気に入っちゃって……」


 いただきますと三人で口を揃え、俺達は朝食をスタートした。

 

 今日のスープはコーンスープだ。スープは日替わりで変わるようだ。ちなみに昨日はミネストローネだった。

 昨日食べたミネストローネもかなり美味しかった。

 キャベツ、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、そしてミネストローネに欠かせないトマトが入っており、栄養価がとても高いスープだった。

 トマトの酸味、そしてベーコンとチーズのコク。この二つが良い感じに野菜の味を引き立てていた。


 そして今日はコーンスープ。黄金のスープの真ん中に、クルトンとパセリが散りばめられている。まるで黄金色の海のど真ん中に、ポツンと島が立っているかのようだ。

 俺は木製の軽いスプーンでスープをすくい口に運んだ。

 

 「――美味い!」

 

 その一言しか出ない。分かってたけどやっぱり美味かった。

 トウモロコシの香ばしい香りと、コクのある甘いトロトロのスープ。なめらかで喉越しが良く、全く飽きが来ない味だ。

 イオラとフィナンも同時にスープを口に運んだ。


 「ほんと……、今日の日替わりスープも文句なしに美味しいわ! いったいどうやったらこんなに美味しく作れるのかしら……」

 「パンとの相性も抜群だよ~」


 フィナンがそう言うので、俺はムエット用の細長く切ったバケットをコーンスープにディップして食べてみた。

 言うまでもなく、美味い。フィナンの言う通り相性抜群だ。半熟卵にディップするのも美味しいけど、こっちも悪くない。


 それから俺達は黙々と朝食を食べ続けた。

 食べている最中、フィナンがこの前の噴水広場での事を話し始めた。


 「そういえば、このあいだの先生達の調理すごかったね~!」

 「このあいだって、噴水広場での話?」

 「そうそう~!」

 

 この前の子供達大量失踪事件の時の話だ。

 悪霊、及び今回の事件の首謀者、ジョンズワースを無事に捕まえた後、校長の粋な計らいで、戻ってきた空腹の子供達に、先生達と俺達三人でお昼ご飯を作ってあげたのだ。

 

 その先生達の調理スピードと言ったら、もう言葉にできないほど早く、正確だった。

 校長が、少し手が足りないのだが、と言ってはいたが、絶対に先生達だけで数百人分の料理を完成できたはずだ。それくらい余裕があるように見えた。

 

 各々の精霊とのコンビネーションもばっちりだった。

 命令を出さずとも、まるで心で会話しているかのように、ビックリするくらいスムーズに調理が進んでいた。

 これが国家精霊料理人なのかと改めて認識させられる一日だった。


 「私達もあれくらい早く調理できるようになるかしら……」

 「分からない……。でも入学式の時、校長は君達次第って言ってたね」

 「えぇ。でもきっと過酷な道のりになるわね……」


 イオラはそう言うが、イオラの瞳には闘志の炎が宿っていた。なんだかんだ言っても皆やる気満々だ。

 そんな話をしているうちに朝食が終わった。


 席を立ち、オボンと食器を返却口に返した俺達は、オリエンテーションが始まるまでまだ半日もあるため、各々の時間を過ごすことにした。

 


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