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第二十八話 至高のムエット

 数分が立った頃、ようやく部屋から出てきた。

 

 「お待たせ~」

 「まったく、貴方は相変わらず朝が弱いんだから……。じゃあ行きましょうか」


 フィナンと合流し、食堂に朝食を摂りに行くべく、一階へと降りる。


 一階にはまぁまぁ人がいて、食堂が混んでいるのではないかと俺は少し心配する。

 

 食堂前に到着。

 すると、入り口の前に何やら看板が立っている。

 

 近くまで行って見てみる。どうやらメニュー表のようだ。

 そのメニュー表には、目立つように大きく、とあるメニューが書かれていた。


 「『ムエット』だ!! 僕これにしよーっと」

 「ムエット?」

 「マサト知らないのかい? 朝ごはんと言えばムエットって相場が決まってるのさ!」

 「へぇ~、じゃあ俺もそれにしてみようかな」

 「私もムエットにしようかしら」


 メニューを決め、食堂へと入る。

 食堂内は割と人がいる。みんな席で朝ごはんを食べているようだ。

 そして、その大半の人が見たこともない料理を食べている。

 遠目で見てみると、お皿の中央に卵が置いてあり、それを囲むように、野菜や細長いパンらしきものが盛られているのが分かる。

 あんな料理見たことがない……。


 キッチン前の列に並ぶ。

 真上にもメニュー表が飾ってある。まるでファストフード店の様だ。サラダやデザートなどが入ってるショーケースまでも置いてある。

 

 ざっと見る限り、メニューは三十種類ほどあるみたいだ。

 ここで食べたいメニューをキッチンの人に注文して、最前列にて料理を受け取るシステムのようだ。


 俺たちはキッチンの中の人に、今日のおすすめ『ムエット』を注文する。 


 列がどんどん消化されていき、すぐさま自分たちが最前列となった。

 そして僅か二分ほどで注文してたムエットが出てくる。

 

 「これがムエット……」


 周りの人が食べているのと全く一緒だ。

 白い器の真ん中には、小さいガラスの置物に乗っかった、上半分が切られた半熟状の卵が。その周囲には時計回りに、細長く切ったバケットが数本とアスパラガスにベーコンを巻いたもの。そしてミニトマトとブロッコリー。最後にイチゴとメロンが盛られてある。

 栄養バランスもちゃんと考えて作られている。


 それだけではなかった。

 ムエットの器の周りには、コンソメスープとコーヒーまで付いていた。このムエットはセットだったのだ。

 

 俺達はおぼんを受け取り、景色の良い所で食べようと二階へ持って上がった。

 ちょうど窓側の席が空いているのでそこに座って食べることにした。


 「うわぁ! 久しぶりだねムエット!」

 「コーヒーとスープも付いてるだなんて……最高ね」

 

 イオラとフィナンは目をキラキラさせながら、まるで子供の様にときめいている。

 

 窓から差し込む光が、半熟卵を照らし、まるで宝石の様に輝いている。


 「いただきます」と三人で口を揃え、まずイオラとフィナンが食べ始めた。


 二人とも細切りに切ったバケットを手に持ち、半熟卵にディップして食べている。

 そうやって食べるものなのか……。


 「う~~ん! たまんないっ!」

 「ほんとね! この卵、甘みとコクがあってすごく美味しいわ! バケットもカリカリに焼かれていて文句なしね!」


 ごくりと唾を飲む。早速いただいてみよう。

 俺は二人の真似をするように、バターの良い香りがする細切りバケットを持ち、半熟卵にディップし口へと運んだ。

 

 ――カリッ。


 心地良いほどのバケットの音が鳴り響く。

 同時に、イオラが言っていたように、卵の甘みとコクが口中に広がる。味付けでもされているのではないかと疑ってしまうほどだ。

 

 そのカリカリサクサクな触感は、癖になってしまいそうなほど楽しい。

 気づいたら三本目に突入していた。


 次にアスパラベーコンを食べてみることにする。

 綺麗な黄緑色のアスパラガスには、程よくグリルで焼いた跡が付いている。それにカリカリに焼いたベーコンが巻かれている。

 

 やはり言うまでもなく、これも美味い。

 程よい苦みのあるアスパラガスとベーコンの甘みのある脂が絶妙にマッチしている。それに加え半熟卵である。

 きっとベーコンの代わりに生ハムでも美味いだろう。今度作ってみようか……。


 もはや俺の手は止まることなくムエットを口に運び続けた。

 二人も黙々と食べ続けている。

 

 景色の良い席で、みんなと美味しい料理を食べる。これ以上に幸せなことはないだろう。


 最後に残ったみずみずしいイチゴを口に運び、ようやくムエットを食べ終わった。


 「ふぃ~! 満足満足~」

 「これなら毎日食べても飽きないわね」

 「そうだね、明日も来ようか」


 俺たちは食後のコーヒーを飲んで一息吐く。

 この上ない満足感に満たされている気分だ。しばらくこうしていたい……。


 窓の景色を見ながらコーヒーを飲んでいると、俺はある事をひらめいた。

 

 「今日は街を探索してみようかな」

 「今日は街かぁ! いいね! 僕たちも付いていっていい?」

 「いいよ~」

 「街なら私もちょうど行きたかったの。ローザさんの雑貨屋を見て回りたいわ」

 

 みんなの意見が一致したところで、食べ終わった食器を返却口へと持っていき、食堂を後にした。


 

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