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破壊製ドローン

 昼頃のクリスタ。


「俺にドローン開発室にきてくれって?」

「ああ、レイティアが呼んでる」


 俺は今自動車の開発に携わっている、その休憩時間にゲームをしていたらアラステッドのやつがやっかい事を持ち込みにきやがった。

 俺の休憩時間を削らないでくれよ。


「俺はドローンの知識はあまりないぞ」

「開発室に呼んでるだけだ、開発を頼んでるわけじゃない」

「屁理屈か」

「いいからさっさとついてこいよ」


 まったくレイティアのやつめ。

 毎回他の他の担当から呼ばれるんだが、俺を便利屋とでも思っているのか。

 給料あげてくれよ。


「連れてきたぞ」

「きたぞレイティア」

「あっ、ごめんねフリュウくん、突然呼び出したりなんかして」


 まったくだ。

 開発者たちに指示をしていたレイティアが俺を見るなり駆け寄ってきた。

 にしてもドローン開発室だけやけに広くないか、天井も高いし学校の体育館くらいはあるぞ。


「……すごい数のドローンだな」

「数日後にクリスタ主催でドローン展を開くのよ、大規模の展示をするつもりだから準備ね」


 体育館なみの開発室を眺めると大きなドローンから小型のドローン、プロペラのないドローンや飛行機まで置いてある。

 さすがレイティア、本気をだすとすごい。

 パーツとか創世神の力で作り出してしまうからな、こういう分野ではチート級だ。


「こんなでかいドローン初めて見たよ」

「ったく、破壊神はわかってねえなぁ」

「だから社内ではフリュウって」

「大丈夫、ここに普通の人間はいないから」


 そうなのか。

 とりあえず天罰神、自分はドローンに詳しいからって上からきやがって。


「そこまで周りが見えない俺じゃねえからな」

「はやく話を続けろ」


 天罰神はやれやれとジェスチャーしてくる。すごくうざい。

 喧嘩するなら受けてやるぞ。


「今まではドローンってのはラジコン感覚、つまりホビーだな。あとはTVとかで撮影したりしか使いどころがなかったんだ」

「だから小型のイメージしかなかったのか」

「そうだ。今ではドローンは大型化してホビーや撮影用だけじゃなく産業用として開発が進められているというのに」


 やれやれとか言いながら説明は丁寧だな天罰神。

 いくつものプロペラをつけ、アームのようなパーツがついたドローンは大型のUFOキャッチャーに見える。

 天罰神は説明しながらその大型ドローンに手をやった。


「これはクリスタが開発した配達用ドローンだ。このアームでがっちり掴んで荷物を運ぶ」

「トラックの代わりみたいな感じか」

「そうだ!それだ!」


 天罰神は声を張り上げて俺を指さす。

 えっと……突然テンション変えられると反応に困るのでやめてもらいたい。


「今の物流はトラックが中心だろ、だが今は物流の需要が高まりまくりだ、道路は渋滞だし人手は足りないしとな」

「宅配業者の給料に関してニュースにもなってたな」

「どこもドライバー不足だ」


 またしてもやれやれとジェスチャーする天罰神。

 物流の件はクリスタに無関係ではない、思うところがあるらしいな。


「空なら渋滞なんてないし、何より早いからね」

「今一番速くても注文から一日ってとこだろ?ドローンならその気になれば注文から数時間で届けられる」

「早っ」


 ゲームとか通販で買うときも一日は確実にかかってしまうからな、夜中なら翼だして飛べばいいのだがそうはいかない。

 というか今回真面目だな。


「今のところは晴れの日しかなかなか飛ばせないが、雨にも対応したドローンはいろんな企業が開発している」

「そりゃ雨の日にラジコンなんかで遊ばないしな」


 機械にとって雨は天敵、それは変わらないらしいな。

 すると天罰神はドローン開発室になぜか置いてある小型飛行機のところに俺たちを連れていった。


「雨の日はこれだ」

「は!?」


 飛行機ってドローンじゃないだろ。


「これは無人の……家庭用飛行機とでも言うべきか」

「普通の家に飛行機はないぞ」


 一応滑走路とかあって金があるならそのくらいの大きさは買えるだろうが、たぶん北海道くらいにしかないな。


「そもそも企業にあるんだから企業用よね」

「まぁとりあえず、無人で動くんだ」

「まじの等身大ラジコンじゃないか」


 これで遊んでみたいな。乗りながら操作とかしてみたい。

 ラジコンはいくつになっても楽しめるからな。

 で?それがどうした。


「荷物を積んだこの飛行機が、滑走路のある地域に限られるが運ぶことが可能だ、飛行機には雨の日なんて関係ないからな」


 飛行機が雨に弱いなんてさすがに恥ずかしいからな。

 だが天罰神、お前がスゴいんじゃなくてドローンがスゴいんだからな、お前が威張るなよ。


「じゃあなんで使わないんだよ」

「使えないのよ」

「普通はこんな便利なの使ってる」


 必死だなお前ら。

 めっちゃ使いたいのが伝わってくるぞ。

 なんかすまん。


「政府のお偉いさんの敷地にドローンが落ちたって大騒ぎしたでしょ?それからも墜落事故がいくつも報道されてるじゃない?」

「それは知ってるよ」

「世間的にドローンは悪いイメージがあるわけだ」


 創世神も天罰神もため息まじりに愚痴をこぼす。

 なるほど。クリスタは大企業だ、世間的なイメージを崩すわけにはいかないということか。ちょっとでも問題があれば批難の嵐だからな。


「今では小型の撮影用ドローンがTV撮影で活躍していて、ドローンの実用性を番組が間接的に宣伝してくれているから、若者からのドローンに対するイメージはそれなりに改善されているのだけれど」

「ニュースに敏感な中年世代からのイメージは悪いままだ」


 そりゃ仕方ないな。

 TVが世間に与える影響は凄まじい、見ている人としては真実に聞こえてくる、そして番組ごとにドローンに対するイメージが違うのだから世代ごとに感じているものが違うだろう。


「その悪いイメージを払うために何か案でもあるのか」

「とりあえずドローンの事故を減らさないとね」

「まず人の少ないところを飛ぶ、川に沿って飛ぶとかな。あとは夜中に飛ばす」


 夜中に飛ばすって、なんかサンタみたいだな。

 朝起きたらドローンサンタが荷物を届けてくれました、なんて夢のないことはするなよ。


「というかそれって事故が起きたときの被害の減らし方じゃないか」

「仕方ないじゃない、世間は残酷なんだから」

「叩かれた時への逃げ道を作っておくのが俺たちだ」


 お前らなぁ、そもそも事故るなよ。

 車でも自動ブレーキとかあるじゃないか、ドローンにも墜落防止システムつけろよ。


「だってこの世にあるもの全ては万能じゃないのよ、事故が起きにくくはするけど、起きてしまった時どうやってマスコミに叩かれないかってとこが大事なのよ」

「悲しいがそれが限界なんだ」

「お前らが言うならそうなんだろうな」


 創世神であるレイティアが監視して作ったドローンだ、部品の欠如といった事故はまず起こらないだろう。

 ならどうやって事故が起こるのか、そこまでしても起きてしまうものなのだ。


「そういや忘れてたよ、なんで俺を呼んだんだ」


 まさかドローンの話を聞かせるためじゃないよな。


「あっ、そういえば私が呼んだのよね。これの実験台になってもらおうと思って」

「でかっ……なんだこのドローン」


 イスがついたドローン。

 なんか嫌な予感がする。


「ドローンの悪いイメージを消す去るためのドローン展なんだけどね、その目玉として人を乗せるドローンを展示するつもりなの」

「人が乗れたら確かにインパクトはあるな」

「それでフリュウくんに乗ってもらいたいの」


 きたぁ。

 そうだと思ったよ。


「なんで俺なんだ、ドローン開発室の連中でいいだろ」

「理由はこれだ」


 天罰神が紙を何枚か見せた。

 ランキング?


「頑丈そうな神ランキング一位、破壊神フリュウ」

「は!?」

「まだまだあるぞ。骨折しなさそうランキング一位、メンタル強そうランキング一位、本番に強そうランキング一位、、操縦上手そうランキング一位、ドローンから落ちても無事そうランキング一位」

「どんだけ俺グランプリとってるんだよ」


 というか最後のランキングだけ絶対クリスタが集計したよな!?

 というか誰に聞いたんだよ……天体陸の神々か。

 神々十万人に聞いた!へんてこランキング!とか書いてあるし。

 俺の周囲からのイメージって頑丈そうなんだな。

 むしろ二位が知りたいわ。


「ちなみに頑丈と骨折とメンタルの二位が鋼鉄神」

「ほんと八百万やおよろずの神だよな、なんにでも神がいる」

「本番の二位が劇団神」

「初めて聞いたぞ」

「操縦が竜神」

「ミコトか!」


 他の神からのミコトに対するイメージが見えたな。

 千と●尋の竜に乗るシーンを想像してるらしいな。

 残念ながらミコトが竜になるぞ。


「ドローンがフリュウくんに十万票集まっててね、これはフリュウくんに頼むしかないかなって」

「本当に聞いたのかそれ」


 胡散臭いランキングしやがって。

 どうしても俺にドローンに乗らせたいらしいな。


「お願い、上手くいったらボーナス出すから!」

「引き受けた」






「なかなか便利だなこれ」


 ドローンに乗って真夜中の街を見下ろしながらマンションへ向かう。

 左手に荷物をもち、右手にドローンのコントロールパネルをもって操縦、なかなか難しいがゲーマーには簡単なことよ。


「つーか高さが足りないか、上に……うおっ」


 ドローンは高低差に強いとは聞いていたが、予想以上にはやかった。

 マンションとかだと配達の人はとてもめんどうだからな、ドローンだとそれも解決できるのか、便利だ。はやく世に出回るといいな。


「ただいまー、開けてくれ」


 だが事前に報告しておかなかったのはダメだな。窓はもちろん開いていない。

 室内が騒がしくなった、気づいたか。


「フリュウさん!?」

「何やってるんですか!」

「ドローンの試乗をな」

「会社の新製品ですか」


 マティルダとミコトが出迎えてくれた。やっぱ二人とも可愛いな。

 なんか新鮮だ、窓から部屋に入るのは。

 この景色をレイティアは見ていたわけか、誰も家にいなかったら窓を割って入るところだったぞ。


「とりあえずただいま、そっちに跳び移るからさっ」


 よっと。

 ズドン……。


「あ」

「えっ」

「ドローン落ちちゃいましたよ!?」


 跳び移ったはずみでコントロールパネル離しちゃったみたいだ、ヤバイ、これはものすごーくヤバイ。

 いい意味じゃなく本来の意味でヤバイ。


『午後11時半頃、マンション付近で大型ドローンが墜落する事故がありました。このドローンはクリスタの新製品で、後日予定されていたクリスタ主催のドローン展は中止になる見透しです』


 こんなことにさせるかぁ!!


「目撃者の記憶は全て破壊する、あと証拠になりそうなものも全て破壊する、ミコト手伝え」

「は、はい。ただいまっ」






「無事ドローン展を開けてよかったな」

「これで少しドローンのイメージ改善されるといいね」


 無事ドローン展は開催された、俺はレイティアと回ることになった。


「それであの大型ドローンどこいったの?」

「いや……破壊しちゃって」

「ま、私の創世神の力があればいくらでも作れるけどね」


 はぁ……どうせレイティアが作ってくれるし、大事にならなくてよかったよ。

 たぶん事故が起きるのも、今回みたいにしょうもない理由なんだろうな。

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