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ビーターになりたい*

「ただいまー……あれ?」


 誰もいないようですね。

 ふっふっふ、私は最高に自由です!フリーダム!

 高校から帰ってソファにダイブし今日も平和なゲーム日和。

 誰もが羨む日常ってこういうことではないでしょうか。

 常に自由時間。

 さっそくイベント消化しますか。


「うーん……ここの攻略難しいですね。タップパターンを頭に叩き込みますか」


 私がやっているのは音ゲー。ポケ●ンでいう砂パの代表的な並びを略したような名前のアプリをやっています。

 ヒントですか?岩悪の砂まき要員と地面鋼の高速アタッカーです。

 普段はアクション系のゲームを好んでやっているのですが、やはり一人でやるのは寂しいところ。家族皆とやりたいです。

 あと野良は信用してない。

 それに私一人だけ強くなってしまうと装備の差で歪なパーティになってしまいますからね。支えあって攻略していこうって感じが薄れてしまうので嫌です。

 私は一人でやるときはソロ用のストーリーをやっているか音ゲー練習をしています。


「ハ●ヒのEX難しすぎでしょあれ、親指勢を殺す気ですか運営さんは」


 こういう時はYou●ubeで譜面確認をするに限りますよ。

 さて検索検索。

 これ親指でできる人は親指が別の生き物になってますよ。


『ファーファッファファー』


 壮大なBGMですね。これは……私の大嫌いなやつ……広告!

 広告うざいんですよー!

 私の大切な時間を奪ってく憎き広告めー!

 TVでもいいとこで広告いれるんですから!そんな会社大嫌いですからね!絶対買ってあげませんからね!


『クリスタッ!』


 あれ?クリスタ?

 フリュウさんが勤めてる会社じゃないですか!さっきの撤回撤回。大好きです。

 いつも養ってもらっております。どんどん広告いれてください。


『ついに実現!』


 ほうほう。

 何がですか。


『VRMMOプロジェクト始動!』


 なんですと!


『脳から直接プレイヤーを動かし、仲間と共に仮想世界を駆け抜けろ!ギルドを作り仲間と共に対戦だ!』


 なんですと!


『最終日に開かれる5VS5のチーム戦を勝ち抜き製品版を誰よりも早くGETだ!クリスタッ!』


 なんですと!


『βテスト事前申し込み受付中』


 なんですと!


「なんですとー!」






「ただいま」

「マティルダお待たせっ、ご飯買ってきたよ」

「今日はいろいろ忙しくてハンバーガーですが」


 フリュウさんが二人を連れて家に帰ってきました。

 ご飯なんて今はどうだっていいんですよ!

 仮想空間を共有するゲームができたって本当ですか!本当なんですよね!?

 その真相を確かめなければ。


「フリュウさん!これ見てくださいよ!これ!」

「いきなりどうしたんだ。ちょっと待って着替えてくるから」

「いいからこれ見てくださーい!」


 私は洗面所に向かうフリュウさんに画面を突きつける。

 すいませんフリュウさん、すごく失礼な行動をしてしまいました。

 私も冷静な判断ができないくらいこの情報が嬉しいんです、なので気分を害さないでください。


「ああ……βテストのやつか」

「VRMMOができたって本当ですか!?」

「じゃなきゃβテストなんかしないだろ」


 どうやら本当のようですね、社員のフリュウさんが言うんですから間違いないです。

 ミコトさんもムラマサさんも驚いてますよ。この広告及び募集は今日から始まったらしいので知らなくて無理はないですが。

 それにしてもとうとうSA●みたいなゲームができるんですね。

 ただ、仮想空間を作った天才ラスボスがレイティアさんになるのは納得いきませんが。


「えっ!?本当のことフリュウさん!なんで教えてくれなかったの!?」

「だって事前にネットに流れると怖いだろ」

「俺たち家族の仲ですよ」

「家族だとしてもどこから流れるかわからないだろ、クリスタの信用に関わる」


 まったくフリュウさん、こういうとこは頑固なんですから。

 けど一日中PCの前で仕事してるムラマサさんとか、この家一番のゲーマーミコトさんとか、高校生の女子ということで世間的に口が軽そうなイメージがあるかもしれない私とか、不安要素ばかりですね。

 でも信用してほしかったです。

 まぁ事前に教えてもらっても特に何かあるわけではないのですが。


「ちなみにβテストの人数はどのくらいなんです?」

「2000人だ」

「え……」


 少なすぎませんか。


「2000人だけですか、0が1つ少ないのでは」

「2万じゃないぞ、それであってる」


 えー。

 これ当選しますかね。


「となると競争率は」

「日本中で2000人だからな、かなりの競争率だ」

「なんでそんな少ないんですか」


 遊●王というカードゲームでも応募して当選すると貰える神カードがありました。それでも外れた人は多いはずです。

 ですが家庭用ゲームというのは●戯王の人口よりも多く、敷居も低い、そして当選する人数は少ない。

 当選するには生涯の幸運すべてを注ぎ込むくらいしないとダメですね。

 今swi●ch欲しいよぉとか言ってる、いわゆるs●itch難民みたいな人が何倍も現れますよ。


「だってまだ試作段階の稼ぎにならないゲーム機を量産するのって会社としてはなんの利益にもならないわけだよ」

「そうかもしれないですが」

「公開βテストになるのは最終日の大会、そこまでいろんな問題を解決して成功させないと、クリスタの今後に関わる」

「あのレイティアさんが失敗する未来が見えませんがね」


 人間としては不良品ですが。

 会社としてもこれ以上定員を増やすことはないでしょう、仕方ないですね。


「とりあえず応募していい報せがくるのを待つんだな」

「一生こないかもしれませんよ」

「それは運がなかったと思って製品版を待つんだな」


 そんなぁ……。

 ゲーマーとして誰よりも早く攻略するとか大好きな私たちにとって定員の限られたβテストはまさに憎しみの連鎖なんですよ。

 そうなったらその大会の放送を荒らしまくってやりますからね!


 食後。


「フリュウさんお願いです!コネでβテスターにならせてくださいよう!」

「無理だって、2000人ぶんしかない激レアチケットなんだぞ!FG●とか●●●●(砂パの並びの略称)といった闇ガチャゲームで最高レア度の排出率より何倍も低いんだぞ!」


 でもでもでもでも!

 やーりーたーいーんです!


「駄々こねてもダメだからな」

「むー!」

「俺じゃなくてレイティアに頼んでこい」


 いや、あの人に借りを作るのは嫌です。

 βテスターになるまでソファは私が占拠してやりますからね!


「私もテスターになりたいな」

「俺もです」

「二人まで……」


 援軍がきましたね、これで3対1ですから多数決的にβテスターにしてくれますね。

 もっとフリュウさんを追い込むのだー。

 でも困らせない範囲でお願いしますね。


「でもフリュウさん、私たちをβテスターにするのはいい案だと思いませんか」

「どういうことだ」

「今回クリスタがやるβテストは全国的に募集しますよね、仮想空間という新しい分野なので世間からの注目度は他のゲームとは桁外れになります」

「まぁそうなるだろうな」

「TVでバンバンやってるからとりあえず申し込んでおこう、といったあまりゲームをやらない人もいるでしょう。他のゲームのβテストのようにゲームをバンバンやってる人だけではないはずです」


 なるほど、話が読めてきましたね。ミコトさん上手いです。

 つまり……


「私たちのようなゲーマーを一定数参加させなければβテストとして成り立たなくなるのではないですか?」

「なるほどな」






 翌日。


 テッテッテーテレレレテレー。

 国際孵化をやってる時に何度も聞いた音楽で電話がかかってきました。

 フリュウさんからですか!


「はい!マティルダです!お帰りなさい!」

『ただいま』

「珍しいですね、わざわざ電話なんて」

『ちょっと一人で運ぶのは大変な荷物があってね、マンションの前にいるから来てくれないか』

「わかりました」


 フリュウさんが一人で運べない荷物なんてこの世にあったんですか。フリュウさんすごい筋肉してますからね、外から見ると少し腹筋が割れている程度なのですが、神補正があるからかオリンピック選手を軽く越えます。

 せっかく頼まれたわけですし、私がフリュウさんからのお願いを断るなんて考えられませんし行ってきますか。


「お待たせしました」

「ごめんねマティルダ、突然呼び出して」

「いえいえ、周回数が1減るだけなので気にしないでください」

「すごい気にするよ」

「すいません、でも周回よりフリュウさん優先ですから」


 失敗しました、正直に言いすぎてしまいましたね。

 周回数1減るのってかなり大きいじゃないですか、普通であればキレますね。

 フリュウさん、本当に気にしないでくださいよ。


「気にしなくていいならもうその話はなしで」

「はい。それで荷物というのは」

「これだよ」

「これ?」


 表面の白いダンボール箱ですね。

 その箱が4つ、フリュウさんなら余裕で運べそうですが。


「何が入ってるんですか?」

「まだ開けるなよ、ムラマサとミコトも一緒にね」


 二人で二つずつ箱をもってエレベーターに乗りました。

 エレベーターの中でフリュウさんウキウキでしたね、本当に何が入ってるのでしょう。


「ただいまです」

「ただいま、ムラマサ!ミコト!カモーン!」


 フリュウさんのテンションが高い!?


「開けますよ」

「どうぞ」


 パカッ。

 中には一枚の紙が入っていました。読んでみましょう。


『おめでとうございます。あなたはクリスタの新商品ゲームシステムとなるVRMMOのβテスターとして選ばれました』


 なんですと!


「なんですと!」

「どうだ、スゴいだろ」

「ありがとうございますフリュウさん!」

「でもコネで選ばれるのは無理だって」


 そうですよね。どうやって選ばれたのか気になります。


「昨日ミコトが言ってたよな、ゲーマーを一定数入れるべきだって」

「言いましたね」

「開発のほうもそれ考えていてな、応募してくれた人からゲーマーだけでくじ引きをして500人選出することになったんだ」


 ゲーマーくじ引きの500人にこの家族全員当選した?

 とは考えにくいですが。


「そしたらレイティアが『クリスタ関係者からの推薦枠を何人かだして、そうしたほうが実際に話を聞けて都合がいいから』って言って推薦枠でもらってきたわけだ」


 レイティアありがとうございます!

 本当に会長としてはしっかり働いてるようで、こういうときは頼りになりますね。


「だが条件がある」

「なんでしょう」

「最終日の大会5VS5って知ってるよな、その大会チームはこの四人とレイティアだから、よろしくな」


 仕方ないですね。

 レイティアさんが必死に作ったフリュウさんとの繋がりというわけですか。

 このくらいはのってあげましょう。


「βテストは一週間後だからな、それまで待てよ、外部にも絶対このこと話したらダメだからな」

「わかってますよ」


 リンクスタート。

 一回言ってみたかったんですよね。

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