表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/30

イン天大陸

 食事を終えてお風呂にも入って、暇な時間って本棚を漁ったりしますよね。

 漁る人も漁らない人も、とりあえず私は本棚を漁ったわけですよ。

 色とりどりの本が並ぶ我が家の本棚。ライトノベルやら漫画やら哲学本やら料理本、さらにはゲームの攻略本まであるわけです。

 そしたら一際巨大な本がありました。

 しかも何冊も。


「これは……なんでしょうか」


 ペラペラ。

 少し粘りのあるページをめくっていきます。中には写真がたくさんあるのでアルバムのようですね。

 にして本当に神って成長しないんですね。私であろう子供が写っている写真の前、つまり私がここに来ていない時からまったく顔が変わってません。


「アルバムってなんか楽しいですね。あ、これ私が初めて天大陸に行った時の写真じゃないですか」


 懐かしいです、あのときは中学生に入ったばかりの時期でしたね。

 にしても私こうして見ると可愛いですね。

 天大陸の出来事は今でも鮮明に覚えてますよ。


「お風呂あがったぞ」

「フリュウさん。ちょっとこれ見てくださいよ」






 中学生1年生の春頃にフリュウさんは顔だしの義務ということで天大陸に戻ることになりました。

 当時の私は今思い返すと恥ずかしいです。

 これは……お迎えの馬車に乗っている写真ですね。


「そろそろ天大陸につくからゲームはおしまい」

「えー、また宝玉が足りないんですよ。これじゃあ一式装備作れません」

「とりあえず到着してからね」

「ぶー」


 そう言ってゲーム機をとりあげられてしまいました。

 当時家族でハマっていたゲームはモンダン4でしたかね。

 霊峰の霧まみれで景色の変わらない退屈な山道でした。当時の私にはこの退屈が耐えられなかったのでしょう。

 あとフリュウさんの隣に座れて照れ隠しもありましたね。


「退屈ですー、神も人間も魔王も退屈は等しく悪なんですよ」

「もう少しだから我慢して?」

「我慢できません!時間の有効活用のためにもモンダンやりましょう!一式作ったら満足しますから!」

「だめー。馬車酔いするよ」


 はぁ。当時の私はフリュウさんになんて失礼な言葉を言っていたのでしょうか。

 それに一式とか……ないですね。

 モンダン4は一式装備の性能があまり強くないシリーズでしたから、一式は地雷とか言われてた時代ですからね。恥ずかしいです。

 一式ゆうた乙、とか部屋に入った瞬間投げ掛けられる悲しい時代でした。

 話を戻すと、フリュウさんからゲーム機を奪い返して馬車酔いしたという赤面ものの思い出があります。


「うう……気持ち悪いです」

「まったく、よしよし」

「しばらくこうさせてください」

「はいはい」


 最終的には馬車酔いしたお陰でフリュウさんにもたれかかることに成功したのですが、その時の私にはそんなことで喜ぶ余裕がなかったです。

 すがる気持ちでフリュウさんに抱きついて天大陸まで行きました。

 なんで抱きついてる写真なんて撮るんですか。

 レイティアさんに見られたらどうするんですか!


「ほら外を見てよ、レイティア自慢の街並みだぞ」

「あの人自慢の街並みとかあまり興味ないのですが……」


 当時からレイティアさんは私の中で変な人というイメージがあったので不信感しかなかったのですが、さすが創世神と言った感じでした。

 石畳とレンガでできた遠目から見てもなごやかな雰囲気を感じられる神のお膝元。天大陸の街です。

 石畳とレンガの他に花や用水路でとても楽しげな魅力的な街でした。これが創世神が本気で造り上げたものらしいです、レイティアさんは本当に普通の状態なら文句なしなのですが、神でも欠点てあるんですね。






 馬車はものすごく大きなお城の前で終点となりました。このお城が魔王対策本部になっているようです。神はそれぞれで自宅があるのでここは仕事場のような感覚ですね。

 私たちはフリュウさんの仕事場でくつろぐことになりました。


「どうぞ」

「へっ?」

「では」


 フリュウさんの部下の神様でしょうか、ケーキを置いて出ていきました。無愛想ですよ。


「えっと……」

「どうした食べないのか。というかなんで主の俺にケーキないんだよぉ」

「子供サービスですよ」

「いい年してケーキなんて欲しがらないでくださいよ」

「あの……フリュウさんもミコトさんもムラマサさんも食べないのに……私が食べていいのかな」


 だって神って完全階級制らしいですし、神ですらない私が優先される理由がわからなかったんです。

 実は隠し子だと勘違いされたなんてその時は思いませんでした。

 ですが破壊神の子供なら確かにそこらの神より階級高くなるかもですね。

 もぐもぐ。

 すると突然扉が乱暴に開きました。


「よぉ!聞いたぞ破壊神!帰ったんだってなぁ!」

「げ……天罰神……」


 金色の髪をかきあげた派手な男の人です。

 なんか落ち着いたフリュウさんとは対称的な性格ですね。


「ん?なんだその子供は、隠し子かなんかか?」

「んなはずねぇだろ」

「照れるな照れるな。いい加減お前もその化物みたいに優秀な遺伝子を受け継がせる気になったのだろう。これは拡散しなければ」

「しなくていい」


 その時の天罰神の言葉はよく理解できませんでしたが今では理解できます。

 フリュウさんは地位と権力は最高クラス、しかも顔もなかなかいいですね。17歳で止まっているので年下好きに受けそうなかっこ可愛い顔をしています。

 そんなフリュウさんがいて女神達が黙っているはずもなくファンクラブまであるそうです。


「にしてもこの娘可愛いなぁ」

「むー!むー!」

「はっはっは!怒りっぽいところも破壊神そっくりだな」

「天罰神……」


 天罰神だかなんだか知りませんが、ほっぺたプニプニを初対面でやってくるような人は嫌いですね。ぽかぽかしてやりましょう。

 ぽかぽかぽかぽか。

 なんか、全然効いてません。


「フリュウさん、お腹がすきました」

「マティルダお前さっきケーキ食べたろ」

「俺も腹へったぞ、作れよ破壊神」

「お前は帰れよ」


 シャバッ……シュバッ……。

 なんか、おやつが出てきました。

 すごい速度で使用人らしき人が届けてくれました。

 クッキーですか。


「またケーキが食べ……」

「おいおい」


 シュバッ…シャバッ……。

 忍者みたいですね。

 ショートケーキを高速で届けても崩れていないです。そう言えばクッキーもこぼれてませんでしたね。


「これ旨いな」

「美味しいです」

「なんでお前も食ってんだよ」


 天罰神さんがつまみ食いしてきますが、私一人でこの量は辛かったので許してあげます。

 クッキーとケーキもぐもぐ。


「じゃあ俺にはモンブランをよこせ」

「来ませんね」

「ここ俺の部屋だからな、破壊神派閥しかいないからな」

「嬢ちゃん、モンブランを」


 仕方ないですね。

 けどフリュウさんをいじるには人数が必要ですし願いを聞いてあげましょう。


「モンブランを二人ぶん」

「だからなぁ……」


 シュバッ……シュバッ……。

 素晴らしい!

 どうなってるんですかここの使用人さんは!

 あ、でもモンブランは私のぶんだけでした。


「半分こにしましょう」

「お嬢ちゃん優しいなぁ。お父さんみたいになったらダメだぞ?」

「誰がお父さんだ」


 そうです!フリュウさんは私の未来の夫です!

 そう言えるほど当時は怖いもの知らずじゃなかったですね。

 それにそんなこと考えてもいなかったです。


「モンブランうまし」

「ここに住みましょうよぉ」

「ダメだ、夕方には帰るからな」


 いけずぅ。

 でもここだとインターネット繋がりませんからね。ゲームでいろいろ制限があるので不便ですか。

 でもここまでチヤホヤされるの初めてですよ。

 むしろフリュウさんが全然ワガママに育ってないのが不思議です。


「じゃあ……フリュウさんの手料理を」

「おいおい」

「いいぞお嬢ちゃん!」


 シュバッ……シャバッ……。

 あ、忍者な使用人さんがきた。


「破壊神、ぜひ手料理を」

「なんで俺が作る感じになってるんだよ」

「嬢ちゃんの頼みは絶対だぞー」

「破壊神、難しいようでしたら私が手を動かして作りますので」


 えー。なんかそれは悲しいですよ。


「あー!わかった!作るよ!作ればいいんだろ!」

「やった!」

「イエーイ嬢ちゃん」

「イエーイ」


 ですが、当時のフリュウさんあまり料理は上手ではなかった気がします。この時をきっかけに料理を練習するようになったんですよね。


「ど、どうだ。炒飯チャーハンなんだけど」

「……えっと……あの……うん!美味しいです」

「無理しなくていいぞ」


 ごめんなさい。あんまり美味しくなかったです。

 お米はパサパサ感が少ないですし、炒飯って感じがしなかったです。


「お前の炒飯大味過ぎて旨いわけねえだろ考えろよ」

「いい加減帰れよお前は」


 でもフリュウさん。その通りでした。

 それからしてお昼御飯の時間になりました。私は満腹になってしまったのでお城のなかをグルグルしてると伝えて別行動をすることに。

 そこで私は破壊神派閥の建物から出て、天大陸の街並みを眺めていました。


「え……?」

「誰だ貴様は」

「かっ……はっ……!」


 死ぬかと思いましたよ。ここは魔王対策本部、そして私は魔王です。

 普通なら駆逐対象でした。

 私のお腹を槍のような武器で貫かれましたね。

 魔王ですからすぐ再生しますが、すごく痛かったです。


「どうして……」

「それはこっちの台詞だ、なぜ魔王が対策本部にいる」

「私は……破壊神の家族ですよ」

「ここまできてそんなことを信じると思うか魔王」


 こんなモブ神にやられるなんて絶対お断りですね。

 後でわかったことなのですが、当時の私は角の制御が完璧ではなかったので綺麗な街並みでわくわくしていたら角が顕現しちゃったらしいです。


「逃げないと……!逃げるには……この人殺らないと!」


 この話にバトル要素をつけるつもりはないので、ここから私とモブの壮絶な戦いが繰り広げられられるのですが割愛させていただきます。

 なんだかんだで私はモブを追い詰めました。


「この魔王めが!本部を攻めにきて生きて帰れると思うなよ!」


 モブは仲間を呼んだ。

 本部内にサイレンが鳴り響きました。

 ドタドタとモブが増殖します。

 なんですか、私はもしかして努力値振りにきたんですか。

 またしてもバトル要素をなくすために割愛。

 いろいろあって私はモブに囲まれて追い込まれました。

 現実の戦いは数ですね。


「てこずらせやがって、殺れ」


 量産型の神が一斉に槍を放ちます。

 ここほんと死ぬかと思いましたね。


「そこまでだ」


 パキッ……。

 そしたら槍が全て折れたんですよ!

 スゴくないですか!

 破壊の風が吹いたとでも言っておきましょう。


「何やってんだお前ら!破壊神の隠し子だぞコイツ!」

「黙れ天罰神」


 どうやらモブは天罰神派閥のようですね。

 すごい慌てて逃げていきました。


「怪我はないかマティルダ」

「え……は、はい」


 惚れました。

 私の初恋のスタートです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ