白い箱
甘ったるいお別れをすまし、私は研究所のほうへ向かっていた。そこに2次元と3次元をつなぐポータルが作られているのだ。
なかなかきれいな建物じゃん。それが私の第一印象だった。
研究所は窓のない白い立方体の形をしていて、不要なものはすべて排除されていた。
というか、ドアすらなかった。
どうやって入るんだろう。
インターホンすらないとは困った。私はどうしたものかと2,3分ほどうろうろしてみたが、結局何も見つからなくてイライラしてきたので糖分を摂取することにした。
ピンクのフリフリをほどくと中には黒色の固いものが何枚か入っていた。さすが天然素材のオドールさんだ。クッキーすら焼けないとは、、。まあ仕方ない。idolのつもりがスペルミスでodolになってしまったおっちょこちょいさんめっ、というのが彼女の設定なのだ。まあ、こういうのは気持ちがうれしいものなのだ。彼女のファンなら、この手作り感に逆に高揚していることだろう。
1枚いただいてみたが、まあ食べれないことはない。この絶妙なへたくそさこそ彼女の骨頂なのであろう。だが、1枚だけ食べられないのが入っていたことだけは許しがたい。表面にはmicroと書かれている。
なんだ?自分が巨乳だからって、希少価値な、逆にステータスにもなる私の胸をけなしているのだろうか。
そんなことを考えていると、いつの間にか日は暮れ、あたりは少し暗くなっていた。
あの白い箱だけが青白く光っている。
ちょっと憂いがある宝石みたい。
そう思って、壁に触れた瞬間、
「お名前をお願いします。」
どこからか声が聞こえた。私はあたりを見回したが、そこには誰もいない。
どういうことだ。私にはさっぱり理解できず、ただただ汗だけが流れた。
まあいい、名前を聞かれていたんだった。まずはそれに答えよう。
「ボクはボクッコVer8.2です。留次元の件で来ました。」
無機質な声は返す。
「いらっしゃいませ、ボクッコ様、3次元行きの件ですね。少々お待ちください。」
無機質な声の返答と同時に箱に穴が開いた。
「どうぞ、お入りください。」
「あっ、どうも。」
私はなぜこんなにへりくだっているのだろうかと少し自尊心が傷つけられながらも、その穴に入ってみた。
その中は白い箱とは相反する空間だった。