お見送りにアイドルを
「わたし、ボクさんに1年も会えなくなるのかなしいです、、、。でも、ボクさんが2次元と3次元の架け橋になってくれるなら、わたしこれいじょう嬉しいことはありません。ぎゅっ、これ、わたし、ボクさんのおしごとがうまくいくようにっておまもりつくったんです、、、。がん、ばってね、、。」
涙しながら自作の、しかもピンクにふりふりがついた一見すると化粧品のポーチに見えるくらい大きなお守りを渡してくるのは私の先輩、オドールさんだ。
この人はいつもこうだ。
水飴を型にはめて蜂蜜でコーティングしたくらいの甘さを誇っている。しかも、それが善意100パーセントなのだから余計に気味が悪い。少しくらい悪いほうの含意を匂わせてくれたほうがまだ人間らしいのに。まあ、この人は人間の理想として作られた美しいボーカロイドなのだからしょうがないか。
「ありがとうございます、オドールさん。ボク、二つの次元をより仲のいい関係にできるようにあっちで尽力してます。」
「うん、ボクさんなら絶対できるよ。あっちの世界でたくさんおともだちをつくってきてね。」
ああ、なんてきれいな目をしているのだろう。濁りのない、まるでダイヤのような輝きをした瞳は今の私にはまぶしすぎる。もうこんな完璧ともやっとお別れだな。
「おまもりの中にクッキーはいってるから、おなかすいたら食べてね。きのう、つくったんだ。」
いいひとじゃねえか。甘いものには目がない愚かなわたしだった。