4今までとこれから
「おはよう、ゆーま、よしよし」
くっ、朝起きたらいきなり慰められてる俺、来ん年二十歳。
「お、おはよう、リルルそういえばリルルは何歳だ?」
「う〜んと十二、ゆーまは?」
「もう少しで二十だ」
頭を撫でてやる、よし勝った。
「ゆう坊や、アホ二人が来とるよ」
あいつらか、朝から濃いな、胸やけするわ。
「兄貴ぃい〜」
「……モーニン」
ははははは、何て返そうかな、くっそぅ、えらい難問だな、英語かよ。
「お、おぅ」
駄目だった、もうね、負けでいいよ、朝で油断してたし。
「ど、どうしたんだ、こんな朝早くに」
ふーっ、よし、落ちついてきたぞ。
「いやいや、早く兄貴に会いたかっただけですが」
「……ポッ」
はぁ、もしかして、あいつ、自分の事、かわいいとか思っちゃってんじゃーねぇだろうな! いやそれはないか、ないよね、許されねーよ? お前はナマハゲが泣いて逃げるレベルだからな!
「そ、そうか、なら散歩でもするか」
流石はリルルだ、しっぽで飛ばないか心配なほど、喜んでるな。
「リルルは散歩好きなのか」
「まぁまぁ」
リルルのまぁまぁは凄い可能性を秘めてるな。
「そ、そうか」
今日も広場はガキんちょが多いな。
「おぅ、おめえら朝から元気だな」
「あ、ゆう兄だ!」
「おはよう〜」「遊んで〜」
「……ゆうにい」
ははは、子供は、かわいいなぁ。
「後でな、稽古つけてやるよ」
「「「やった〜」」」
「ゆーまの稽古、多分危険」
「お、おぅ、俺が弓を教えてやるから」
「コクコク、アブナイ」
あれ、え!? おぃ……はどうしたんだよ!
「後、お前には言われたくねぇよ」
いかん、つっこんじまった、アイツ絶対わざとだ、顔が「……ヤッタ」って顔になってやがる、ふぅ〜落ち着こう。
「い、いや、そうだな、ちょうどいいか、俺もお前等に、話したい事があるんだよ」
全部話そう。
「お前等には、いやこのスラムの皆には、知って貰いたいんだよ、俺が何処から来た、とかな」
「……ゆーま」
「アニキぃい」
「……!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ兄貴、おぃ、おめぇらスラムの皆集めろ!」
「「「うん!」」」
いやいや皆て……
「お、おい、まて体調悪りぃ人とかもいるだろうが」
「大丈夫っす」
何だこいつら、目がキラキラしすぎてて怖い
「……キラキラ」
「……キンキン」
「……キラキラ」
あ、集め過ぎだろ、どうしよう、帰りたくなってきた、うぉ、婆さんやエルザも来てやがるな、何百人居るんだこれ……
「すげぇ人数だな、こんなに居たのか」
「へへっ、大体三百人くらい、いるっすよ」
「……コクコク」
「ゆーま、聞きたい」
「そうだな、聞いて欲しい」
こいつらはもう大切な家族だ、一つ一つ全部話そう。
カネに壊された家族の事、カネに困り裏切られた事、カネが憎く恐い、助けられなかった自分に絶望し崖から身をなげた事。
「ゆーま」
リルルが悲痛な顔で抱きしめてくれる、――ありがとな――
「で、死んだと思ったらな、すんげぇ数の神様が居たわけよ」
「ま、まじですか!」
「「「おおおお〜」」」 「神様?」
「ああ、号泣してたな」
「えぇ?」
「その時、俺は神様を八つ当たりで憎んでたからな」
「うん、わかる」
そっか、わかっちゃうか。
「神様は一人に一人いや一柱か、見守ってくれてたよ」
「そんなの、うそ」
「ははっ、嘘みたいだけどな、神様が頑張ってくれてなきゃ、多分、皆すぐ死んじまうじゃねぇかな?」
「えっ?」
「いろいろすげぇ頑張ってたぞ、そうだなー、わかりやすいのはな、心臓動いてるだろ?」
「うん」
「動かし方知ってるか?」
「へ? し、しらない」
「だろ、それ動かしたりな、他にも何かいろいろやってた」
「「「お、おおー」」」
「…………」
「まぁ大事な事は愛すべきユナ、か、神がだな、神同士はみんな兄弟なんだってよ」
「ほんと、なの?」
「ああ、証拠何て無いけどな、そのな、救われた気がしたんだ、愛されてたんだなって」
「そしたらな、羨ましくなったんだ、皆が家族で無償で愛せる神が――なんで俺らは皆、家族の様になれねぇのかってな」
「俺の神とお前等の神は家族なのに……」
「ゆーま」「兄貴」「……おにいちゃん」
「俺はな、カネが恐いんだ、本当に大切な物の価値が壊されるから、欲が膨れあがるから、そう、人を欲深くするんだよ、呪いみたいに――人はもっと優しいはずだろが!」
「――カネを世界から無くすのは無理かもしれねぇけど、カネのねぇ家族、そんな場所があってもいいじゃねぇかよ」
なぁユナ!
「なぁ、みんな、そんな家族になってくれねぇか?」
「「な、なりてぇ〜!」」
「何言ってんだ兄貴とっくにだろぅ?」「うん、なる」
「……嫁」
「ふん、前から皆、孫みたいなもんじゃわ」
「ふふっ」
ははっ、そうか。
「おう、よろしくなお前等!」
うん、嫁って言った奴誰だろ?