3仲間と家族
さて、待ちに待った夜。 そう、夜だ、大人の時間である。
「ちょっと出掛けるわ」
「むぅ」
「リルル、夜は駄目、先に寝てろ」
リルルを振り切って、いざ夜の街に。
やっぱり夜はガキや婆じゃ駄目だ、いい女じゃないとな。
こんなスラムにいい女なんか居ないと、思うだろ?
ところがどっこい‥‥‥‥嘘じゃありません‥‥‥‥! いるんだな‥‥‥! これが‥!
俺も昨日の夜、いい女探してて、見付けた時はまじで顎が外れかけたもん。
こっそりといい女の住まいに到着、横の寝床には旦那さん居るからな、静かにね。
「よぉ、今日も頼むわ」
「ゆーまかい、あんたも物好きだねぇ」
「二日連チャンは駄目かな、迷惑だったか?」
「いいよ、旦那も病気で寝込んでるし、助かるよ」
「あぁ、そりゃ都合がいいな」
約束だった肉と薬草を渡し、酒を注いで貰う、足元見るようで悪いがな。
「かぁ〜美味いっ」
「そうかぃ」
「あぁ、いい女が注いだ酒は安酒でも格別になるんだな」
「ふふっ、はいはい、ありがと」
「早速で悪いが始めてくれるか?」
「えぇ」
彼女の名はエルザ、元薬師の美人さんだ、昨日目を直す方法を聞いてたら彼女に辿り着いた。
彼女の旦那は腕のいい大工だったが足を怪我して、病気がちになりスラム住まいとか、悪循環だな。
彼女は薬草十束でポーション一つが作れると言った、しかしポーションを飲み続けても治るかどうか分からないらしいが。
「はい、出来たよ」
「おぅ、ありがてぇ」
そうだ、忘れてた。
「これ、味とかどうなんだ、駄目元だし、出来るだけ内緒で飲ましたいんだが」
「ふふっ、羨ましいわね、大丈夫よ、ほとんど無味無臭だから、この水筒に入れて水の代わりにあげて頂戴、それより本当に一つでいいの?」
「あぁ、もちろんだ、後、余った分はスラムの皆にでも使ってくれ」
「ふふっ、分かったわ、またね」
よし好感度アップ作戦成功だな、毎日頑張ろう、そのうち、素敵、抱いてってなるにちがいないな。
帰ったらリルルに噛まれた。
《装備:》
《持ち物:ポーション1》
《浮気駄目:リルル》
――2――
今日も元気よく森に行く途中、凶悪な二人組に出会った。
「ユーマさん」
「……うす」
あぁびっくりした、凶悪すぎるわ、強盗かと思って身構えたわ。
「昨日の……」
「あぁ、俺がアドンで、こいつはドゴンだ」
「……ペコリ」
……顔に似合わず面白そうな奴等だな。
「おぉ、俺はユーマ、こっちはリルルだ」
「ははっ、勿論知ってるさ、あんたを知らねぇ奴はもうこのスラムにはいねぇよ」
「……こくこく」
すげえなスラムの情報網。
「そうか、で?」
「俺らも兄貴を手伝いてぇんだ」
「……うんうん」
何故だ、ドゴンは俺を笑わしたいのか、ツッコミ待ちなのか? あの顔でペコリとか口で言ってやがる、あれかギャップで攻めて来てるのか? よし、とりあえずほっとくか。
「そ、そうか、それは有り難いな、頼むよ」
「やったぜ、なぁドゴン俺等は体力には自信有るぜ、特にドゴンのは力自慢だぜ」
「……ポッ」
不動明王そっくりな顔でポッて言いやがった、ムカつくを通り越して怖いな。 いやいや顔で判断しちゃ駄目だ、きっとピュアなんだよな、分かる気がするよ、皆に怖がられて傷付くんだよな、あぁ、しかも動物好きで心優しいのか。
「おう、じゃあ行くか」
「うん」
「ヒャッハー」
「……ん」
まさに地獄絵図、やはりそうなったか、分かってたよ、あぁヤバいな、リルルがちょっと泣いてるじゃねぇか!
いきなり大鹿を殴りつけ首をちぎりやがったからな、俺も茫然としたわ、首ちぎった時にこっち向いて「……ニコッ」てしやがったからな、今日はリルルを抱きしめて寝よう。
成果は俺が熊1、リルルが薬草31、アドンが魚18、不動が鹿1と猪1仕留めました。
スラムに帰ったら屋台が待ってた、ちょっとした祭になってるな、婆さんも張り切って包丁研いでやがる、準備万端じゃねぇか、似合うな、今日の夢は大体予想ついた、眠るのが、怖い。
てゆーかさ、獲物何も無かったらどうすんだよこれプレッシャーハンパない。
「ば、婆さん張り切り過ぎだろが、今日はうまく行ったからいいが」
「馬鹿だねぇ、あんたらがこれ程頑張ってんだよ、例え獲物が無くっても皆で食料くらい出すさね」
「「「おぅよー!」」」
――あぁそうか、俺はこれが欲しかったんだな
「リルルも頑張るから、ゆーま泣かないで」
「あ、あぁ」
これが人だ、これこそが俺の求めた世界だ、守ろう、強くなろう、ユナ様ありがとう。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
全力で吠えろ、今日、今、誓おう
『俺は、カネに負けねぇ、カネに欲に支配されねぇ、お前等全員俺の愛する家族だ!』
「「「「「うおおおおおおおおおー」」」」」
この日、スラム街で世界最大の家族が生まれた。
ストックがありません、全力で構成し作成しますので、待っててくれる人がいます様に。