1異世界と獣人
俺生きてます、ユナありがとう、愛してるぞ。
いや、まぁ、それはいいか、何でこうなっちまったんだ?
くそっ、俺は今薄汚れた小さなガキに懐かれている。
あぁ―分かってる、でもしょうがないだろう?
俺も長い間、腹が減ってずっと苦しんだからな、腹が減って、死にそうで、絶望してる奴の気持ちは分かっちまう。
だから、ちょっと同情してしまったんだ。
そう、あれは朝、起きたら、このスラム街に居た、もう訳が分からん。
しかも、あれだ、このガキもそうだけど、絶対人じゃない、まるで狼少女だ。
そんな奴がこの街にはうろちょろしてやがる。
言葉は日本語で通じるしよぅ! 一番ムカつくのはやっぱり金の概念があった事だ! 単位、円だし! しかも街の名前だ、オーサカは無いだろが!
食うもん欲しけりゃ森にでも行けばいいってスラムの鬼婆に聞いて、行ったはいいが、あほか! 死にかけたわ!
当然、すぐに退却だ、あんな森!
だがしかし、収穫はあったな、馬鹿でかい鹿みたいな奴を必死で倒したら、体が光ったのだ、レベルアップしたと感じた。
レベルアップした瞬間に理解したよ、俺にチートは無いっぽい。
それから、スラムに戻って鹿肉食ってたらガキ共がいっぱい集まってきたんだ。
「ほら、おめぇらも腹ぺこだろが皆で分けろ」
「まじで!」「いいの!」
「わーっ、ありがとう」
しかーし、一匹のガキが、絶望した顔で俺を睨んでやがる。
「おぃガキ、お前も食え! 後、そんな顔するんじゃねぇ、飯がまずくなるわ!」
おぉ、凄い睨んでくるな、なんだこいつは、昔の俺か!
「何がそんなにムカつくんだ?」
まぁ、わからんでもないが。
「全部」
ははっ、そっか。
「あたし達に優しくする人は奴隷にするため」
「はぁ?」
「あたしは誰も信じないから」
このガキ、俺を睨んでるが、そうか……
「お前、目が見えないのか……」
「関係ない」
我慢、我慢だユーマ、クールだクールガイだ。
「いいから食え、がりがりのガキは見てて腹が立つ!」
肉を掴んで無理矢理食わせる。
「うぐっ、あたし、お金無い、奴隷は嫌!」
我慢は……はぁ〜もういいか!
「ふざけた事言ってんじゃねぇぞ! このくそガキが!」
「あぁん? 金で買えば安心? 俺はな、金が世界で、一番嫌いなんだ! 金なんかを信用してんじゃねぇぞ、ごらぁ!」
「金なんか無くてもな、俺はな見捨てねぇし裏切ったりしねぇ!」
くっそう、と、とまらん。
「後な、お前は一人なんかじゃねぇ、お前を全力で愛してる奴を一人知ってるからな!」
「えっ?」
「そいつはな、かなりいい男だ、と思うぞ?」
にやりと笑う。
「それにな、金なんて無くてもいいだろうが、家族なら、ただで飯食わせるもんだ!」
「ぐすっ」
すぐ泣く! だからガキは嫌いなんだ!
「ああっ、もう泣くな!」
「だ、だっで」
俺も泣きそうなんだよ!
という状況だな。
「分かった、逃げんから離せ!」
「ぷいっ」
ふふふ、このガキ!
「俺はユーマ、マッケンジーだ」
「ユーマ……わたし名前無い」
「ちっ、なんだと!」
くそっ、名前が無いとかありえねぇ、面倒な事になっちまったぞ。
「ユーマが好きにつけてほしい」
ちくしょう! 名前付けろだと? 勘弁して下さい。
「断る!」
「う、うぇっ」
「分かった! 泣くな」
「う、うぐ」
「そうだな〜」
狼少女か、ふ〜む……
「フェンコでどうだ?」
「がるるるぅ」
い、威嚇してきやがっただと? くっ、我が儘なやつだな。
「り、リルルなんて…どうだ?」
リルル(仮)が、びくっと反応する。
「くぅ〜ん」
ふぅ〜なんとか勝ったか。
「おぃ、お前の家族は?」
「リルル!」
こんのガキ
「り、リルルの家族は?」
「ん、ゆーま」
――いや、そうか――
「超、ぼろい宿だが来るか?」
「ぎゅっ」
あぁ面倒臭ぇな事になっちまったなぁ。
《装備:》
《足手まとい:リルル》
――2――
「おい、歩きにくい、匂いでわかるんだったら服を離せ!」
「やだ」
むぅ〜早くも反抗期か。
リルルは、目は見えないが鼻がいいから、大体何処に誰がいるか分かるらしい。
「くんくん、ゆーまちょっとくさい」
かちーん!
「くんかくんか、リルルは」
「がぶり」
いたぁー!
「ゆーま、れでぃに失礼!」
「噛むな! 臭いなら離れろ!」
「ゆーまの臭いの嫌いじゃない」
はぁー、早く寝床に行こう。
「着いたぞ」
着いた、今にも壊れそうな、本当にぼろい宿だな。
「おい婆さん、一人追加だ、場所分けてくれ」
「馬鹿言ってんじゃないよ!」
けつを箒でどつくな!
「おや、その子は……」
「リルル」
「……ほぅ」
「ゆーまがつけてくれたの」
「ほほぅ〜」
「ほれ、婆さん約束の肉だぞ、泊めてくれ」
「ゆう坊、余分な空き場所なんて無いよ、あんたらは一緒に寝な!」
「狭すぎねぇか?」
「だがそれがいい」
まぁ、ありがてぇか。
肉や野草を渡し部屋に行く。
あぁ〜疲れた、それにしても目か……。
「ゆう坊、飯とお湯だよ」
なんだ婆さん、奮発したな、パン以外にもスープと俺が渡した野菜、肉まであるじゃねぇか。
「おい、婆さん」
「その子は育ち盛りさ、あんた、しっかり食べんだよ」
「リルル」
「あぁリルル、しっかり食べな」
……この婆さん、鬼婆の様に怖い顔の癖にな。
かたいパンを食べて、立ち上がる。
「ちょっと出掛ける、全部食ったら、ちゃんと体を拭いとけよ」
「リルルも行く」
「夜は駄目だ、おとなしく飯食ってろ」
「でも、残りはゆーまの分」
「俺は外で食う、リルルはそれで我慢しろ、いらんなら、捨てろ」
「……食べる」
婆さんの宿に戻るとリルルが寝ないで起きていた。
「おう、少しは小綺麗になったな」
心なしか毛がふさふさとしてる気がする。
「ん、ゆーまも拭いてあげる、さっきより臭い」
「やかましい、ほっとけ」
「大丈夫、リルル見えないから恥ずかしくない」
俺は恥ずかしい。
「自分でやるからさっさと寝ろ」
「むぅ」
水で体を拭きながら、明日の予定を考え、俺もぼろいベッドに横になる。
「こら、纏わり付くな」
「ゆーま、あったかい」
まぁ、布団と思えば、なかなか悪くない。
「すんすん」
「がぶり」
いたぁー!
「ゆーまのえっち」
「阿保か、はよ寝ろ」
ふむ、少し、いい匂いだったな。
《装備:》
《布団:リルル》




