13バンガインと飲み会
今日も朝早くからバンガイン師匠の仕事場に向かう。
「おはようございます師匠!」
「うむ」
師匠は基本あまり喋らない、でも仕事が終わって酒を飲むとびっくりするくらい喋る。
師匠の仕事場に珍しくお客が来た。
「あれまぁ、本当にあの人嫌いのバンガインが弟子をとるとはねぇー長生きはするもんさね!」
あれ、この婆さんスラムの鬼婆さんじゃねぇ?
「はっ! 誰かと思えばアンナか珍しいな」
アンナって名前だったの!
「珍しいのはそっちさね……で、どうだったねユーマは」
「ガハハハハ、おい、マックス酒持ってこい!」
まだ朝ですよ、師匠!?
「なるほど、アンナの知り合いか」
「孫みたいなもんさね」
「ガッハハハ、孫か! そりゃあいい! そうか、面白い奴だ!」
「だろう、あっという間にスラムを変えちまったよ、あの子は」
「たまらんなぁ、ワシにいきなり喧嘩吹っ掛けやがったよ」
「へぇ〜どんな感じだい?」
「ガハハッ、ワシがな弟子なんぞとらん! 技術を伝えるつもりは無いと言ったらな、あいつめ」
「なんだと糞じじい、人嫌いでも金が大事か! 仕事が奪れるのが恐いのか? 大切な事は、いいもん作る、それだけだろうが! と吠えよったわい」
凄ぇなユーマ兄、バンガイン師匠に……
「くっ、ふふっ、あはははっ」
「たまらんなぁ、まさかワシが教わるとはな、ぐっ、ガハハハハッ」
「アンタは昔、そうだったさね」
「技術を秘匿する無意味、盗みたけりゃ構わん、いい物をつくる、そう、それが一番だ」
「人ぎらいはやめたのかい?」
「はっ! 人ぎらいじゃが家族まで嫌いになったつもりは無いわ!」
「くっ、あはははっ」
「マックス! 貴様のため、あの男、一晩中頭を下げ続けおったぞ」
ユーマ兄が一晩中……
「お、おれ……」
「誇るがいい、マックス! 貴様に家族を守る力をやる!」
師匠、ユーマ兄、みんな、ありがとう、俺親父に負けない鍛治師になるよ!
――2――
「ゆーま、ねすぎ」
「凄い、いびきね」
「ぐがががぁ〜」
「おこす」
「気をつけるのよ!」
「がぶり」
「がぶがぶ」
がしっ!? すりすり! じょりじょり!
「つ、つかまった」
「に、にげられないわ!」
わしゃわしゃ! もふもふ! はむはむ!?
「あぁーーーー」
「た、たーべーらーれーるーわー」
「ほれ、遊んでるんじゃないよ」
「た、たすかった」
「はぁーはぁーはぁーはぁ」
「うん、なんだ、朝っぱらから〜」
「もう夕方さね、お腹減ったなら、ちゃんとご飯食べな!」
あん? 夕方?
「確かに腹へってるな」
「そぅそぅ、バンガインのじじいがね、スラムに引っ越して来たよ」
そう、あのじじいがね……はぁあああああ?
「なにしてんの、あのじじい!?」
いやいや、スラムに引っ越しとかどうなの?
「いちいちマックスが来るのもめんどくさいからってもう簡単な鍛治屋が出来てるよ」
はぁあー? 早すぎんだろ?
「なにがなにやら」
「まぁ、引っ越し祝いって事でバンガインが飯披露してるさね」
「なんだと!」
「なにせ、カネ全部使って素材や魔石、アイテムバッグに買い込んで来たらしいさね」
「ほほぅーなかなかいい趣味してやがんね」
「ほれ、さっさと起きて食っといで!」
「ほーい」
広場はまさにカーニバル、あれ、なんぞこれ?
「アニキーこっちこっち!」
「……ゆーま兄きた!」
「ガハハハハッ、遅い、遅過ぎる! 早う食え!」
テンション高すぎだろう、だが悪くない!
「おい、どんどん飯持ってこーい! なに! 酒があるじゃねぇか!」
「ガハハハハッ! ワシはドワーフぞ? 酒が無いと始まらんわい!」
なんだと! 源さんも流石だ、もうテンションマックスだな。
「ドワーフがなんぼのもんじゃい! 勝負だバンガイン!」
「グホッ、ガッ、ガハハハハハハハッ、よしっ受けて立つわー!」
「源さん、どうした〜もうギブアップか〜」
「てやんでぃ」
「ガハハハハこんな美味い酒は久しぶりだわい!」
「なんだと! あしたっから覚悟しとけ! 簡単に寝れると思うなよ!」
「それは楽しみじゃのう、ガハハハハッ」
「ドゴン、なに寝てやがる」
「……ぴくぴく」
「ドッゴーン! 駄目だドゴンがやられちまった」
「アドーンみーっけ」
「ひぃっ」
「あれ? なんかペース悪いよね? 調子悪い? 酒のんだら、なおんじゃね?」
「おたすけーーー!」
ユーマ対バンガインの決着は持ち越しとなり、この夜はスラム街の悲劇と恐れられた。
《装備:》
《持ち物:白魔石色々》
《お酒って怖い:リルル、エルル、マックス》
《酔いつぶれ:アドン》
《酔いつぶれ:ドゴン》
《酔いつぶれ:源さん》
《ほろ酔い:バンガイン》
《酔っ払いって心底面倒:エルザ》




