10アベルのお守りと飲み会
ふははははっ、聖女を泣かしてやったわ。
このやろう、人の顔見て叫びやがったからな、俺の顔なんかで、びっくりしてたらドゴン見たら卒倒するんじゃねぇ?
ま、まぁ少し睨んじゃったかもしらんが、おっ、護衛の二人が俺を睨む。
「しかし、美味いなこれ」
「ううっ、返して下さいな! あなたにはあげません!」
「ふははっ、うーまーいーぞー」
「きぃっ」
思ったより面白い奴だな。
「おい、きさま! アリステル様になんて失礼なことを!」
おぉ、女の護衛がめっちゃ怒ったな。
「やめろアンナ、まぁーしかしアンタもアリス様をいじめるな、大人げない」
おぉ、男の護衛はデキル男感満載だ、やるな。
「あぁ、悪かったよ、それに美味かった、みんな嬉しそうだし助かるよ、ありがとうな」
「むっ」
「ぬうっ」
「へぇーっ」
確かに、少しいじめ過ぎたか、しかし、裕福でおまけになかなかの美人だと、むかつくにもほどがあるわ!
「ゆーま、聖女きらい?」
「嫌いだな、裕福で美人、何も苦労なさそうで腹立つわ、しかもなかなか性格も面白いときてる」
「ふーん、ならリルルも嫌い」
「あほ、俺はただの八つ当たりだ、好きか嫌いかは自分で決めろ」
「あっ、うん、わかった」
「アタシは嫌いじゃないわ!」
「そっか」
二人には、嫌いな奴なんていない、そんな世界を、そう願う。
――聖女護衛アベル――
帰り道ずっと二人の機嫌が悪い、僕にあたらないで欲しい。
「でもスラムの雰囲気、凄く変わってましたね」
なんでだろう、先月はもっとギスギスしてたはずだ。
「そうですわね、あの子達、持って帰りたかったですわね!」
犯罪ですよ、ダメです。
「しかし、あの無礼な男は許せません!」
「ホントよ、くやしいわ、ナンなのアイツ! それに顔が凄く怖いの、ずるいの!」
ちょっと泣いてたからな、アリス様。
「アベル、今夜、斬りに行きましょう」
「行かないよ! 駄目だよ!」
犯罪すぎるだろ、びっくりした、アンナはアリス様が好きすぎて少し困るよ。
「そんなに嫌なら次回から私だけで行きましょうか?」
実際その方が楽だろう。
「えっ? そんなの駄目よ、子供達がまたきてねって言ってくれたもの、明日も行くわよ」
行きませんよ?
「アリス様、明日は無理ですね、午前中は教会の祈り、午後からは寄付集めですよ」
「えっ? むぅー」
そんな顔してもダメですよ、この聖女様、すぐに拗ねるからな、難しい。
「時間空いたらスラムに行きましょうね」
「ええっ、ふふふっ」
随分と気に入ったんだね、まぁ僕も実は心地良かったんだけどね。
「今度はアイツをぎゃふんと言わせるわよ」
かなり根に持ってるな、まぁしょうがないか、目の前であんな露骨な嫌がらせされたの、初めてじゃないかな?
「まぁ、ほどほどにして下さいね」
「次は泣かすわよ、アンナ何かいい方法ないかな? 切っちゃダメよ」
「むぅ、そうですね〜」
案外楽しそうだね、まぁきっと彼は泣かないと思うけどね。
――2――
「ユーマくん、お酒好きなんだろ? 飲もうよ」
酒か悪くないね。
「なんだよ、源さんも好きだなー、よし、アドン、ドゴンはどうだ、酒は」
「いやぁ〜大好きっす」
「……飲んだこと、ない、ポッ」
「なんだよ、ドゴンは初めてか、ちょっとずつ飲んでみろよ、あっ、エルザも必須な」
「ゆーま、ずるい」
「ずるいわ」
「ふはははっ、お酒は大人になってからだ、我慢して寝てなさい」
「むぅ」
「むぅ!」
「ははっ、婆さん頼んだぜ」
「はいよ、さぁ行くよ」
「はーい」
「んもー」
源さんの家に到着!
「じゃまするぜ」
「いゃっほー」
「……どきどき」
「どうぞどうぞ」
「はい、お酒と簡単なおつまみよ」
さぁ飲むでー!
「くはーっ、美味い、寒い冬は熱燗にかぎるな!」
「まったくだぜアニキ」
「……こくこく、おいし」
「おらおら、源さん、ほれ」
「おっと、あはは、こぼれる〜」
美味い、仲間で飲む酒は格別だな。
「ちょっと魔石食ってみようかな?」
「くははっアニキそりゃあやべぇって」
ガリガリ、くっそまじぃな!
「マズイじゃねぇか!」
「ぶはっ、アニキー当たり前じゃねぇかー」
「……たべちゃった」
「もぅ、ほんとに酔っ払いね」
「ユーマくん、さあっどんどん行きましょう」
「楽しくなってきちゃたな、おいドゴン脱げ」
「もぅ、ダメよ、収集つかなくなってきたわ」
「……ドゴン、はずかしい」
「ぬいだぁああ」
「もう無理ね」
酔っ払い達の楽しい夜は朝方近くまで続いた。
《装備:》
《持ち物:白魔石色々》
《お留守番:リルル、エルル》
《酔っ払い:アドン》
《酔っ払い:ドゴン》
《酔っ払い:源さん》
《酔っ払いって面倒:エルザ》




