9ユーマと聖女
スラムに戻って今日の獲物を料理して貰う、帰り道、牛の様な奴を発見したのだ、なかなかの収穫だったな。
「ゆーま、おかえり、どうだった?」
「ぼちぼちだな、リルルとエルルはどうっだった?」
「ふふん、百発百中よ、リルルはまだまだね」
「むぅー」
なかなか頑張った見たいだな、よし、撫でよう。
「魔石ってどうやって使うんだっけ?」
袋から魔石を取り出す。
「あんまり、光にあて続けると、光を吸収して明かり専用になりますよ」
「そ、そうか」
「大体は水や電気や明かりが多いさね、後は火かねぇ」
婆さんか、なんかこの広場に皆集まってるな。
「電気も有るのか、いろいろ出来そうだがな」
「冒険者の携帯端末機は電気の魔石や色んな技術が使われとるよ」
「携帯って電話かよ」
「連絡を取り合うのに便利らしいの」
思ってたより、進んでるな。
「じゃあとりあえず、その四種類にしてみようぜ」
明かり、火、水は簡単だった、問題は電気だな。
あれ、電気って何に使えばいいのか、よく分からんな、電化製品が無いと駄目か、いやスタンガン的武器にはいいかもな。
「電気は普通どうやって魔石に貯めるんだ?」
「基本的には魔法ね」
エルザと源さんか、いいとこに来た。
「魔法かよ、まぁ電気はそのうちでいいな、それよか源さん風呂作ってくれよ」
「風呂って木で、かい?」
「風呂っていえば木だよ、檜風呂だ」
「ひのきかい? ちょっと分からないなぁ」
入れたら何でもいい、簡単に風呂の構造を伝える。
「やはり火の魔石があればなんとかなりそうだな、皆入れる様なでかいのがいい」
「ははっ豪勢だね!」
「なら、石鹸草も欲しわね」
混浴だろうか、まぁ仕方ないか、恥ずかしいが我慢しよう。
「じゃあ、そろそろアタシ帰るわ」
「うん? ここに居ればいいじゃねぇか、帰らないと駄目なのか?」
「えっ? いいの?」
「うん、一緒」
「あぁ、好きにすればいいじゃねぇか、賑やかな方がいいぞ」
「そぅ、じゃあ居るわ」
四人でぼろやに戻る、あれ? ちょっと綺麗になってる。
「これ源さんが?」
「そうだよ、えらい張り切ってたよ」
「おぉ、本当にいい職人だな」
「おぉ〜」「どきどき」
中も見違えたな、部屋に飛び込む。
「ははっ、こりゃいいな」
狭いが隙間などはない快適だ!
「ほれ、お湯だよ、ちゃんと綺麗にするんだよ」
「はーい」「わかったわ」
二人とも楽しそうでよかった、寝よう。
――2――
「おきて」
「おきなさいよー」
眠い、今何時だよ
「後35分〜」
「だめー」「何で35分よ、中途半端だわ」
30分寝て、5分まったりするからだょ。
「ぐー」
「あーっ」「つかまったわ」
じたばたするな、さぁ寝るのだ。
「ガブリ」「がぶがぶ」
「わかった、起きるから噛むな」
ふぁ〜なんなんだよ、何故噛むんだ、俺美味いのかな。
「腹減ったのか?」
「違う、広場に炊き出しきてる」
「なかなか、美味しそうだったわ」
ほほぅ、なら行ってみるか。
おぅ、中々賑やかだな、ちょっとした祭の様だな。
「あっ、アニキ遅いっすよ、いつまで寝てんっすか」
「これは何の騒ぎだ? そんなに美味いのかよ」
ちょっと楽しみだな、まだ余ってる?
「いや、それもあるっすけど、聖女様が皆見たいんっすよ」
聖女ね、ふーん。
「おぃ、リルル、エルル並ぶぞ〜」
「くんくん、いい、におい」
「中々ね!」
――聖女――
うんうん、みんな美味しそうに食べてるわね、あたしもお腹すいてきたわ。
「さんにんぶん、ください」
あら、かわいい獣人の女の子ね。
「あらあら、可愛い子だわ、はい、どうぞ」
「ありがとう」
くっ、持って帰りたいわ。
「なかなか美味しそうだわ!」
えええっ? この子エルフかしら、なんてかわいいの!
「いっぱい食べてね!」
「ええ、ありがと!」
ほわぁ、なんてかわいいのでしょう、あら? アベルとアンナがあたしの横にきたわね、ふふっ、二人とも心配性ね、大丈夫よ、持って帰らないわ。
「へぇー、ふーん、ほぉー」
あら、彼女達の親やかしら?
「ひゃうっ?」
めちゃくちゃ睨まれてる? ナンなの? 凄く怖いんですけど。
「いや〜流石、聖女様だお恵み頂き、おありがとうございます!」
ふらっ――ハッ、よろめいた、ムカッときたわ!
「な、なんなのアナタは」
「ふははっ、聖女様にお聞きされるとは、なんたる名誉!」
「あ、アベルぅ〜」
ちょっと泣き声になっちゃった、なんなのよコイツ!
聖女アリステルは、こんなにもムカつかされた経験は初めてだったのだ。




