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俺が俺である理由

作者: コーラ

誤字や脱字があったらすいません。

おろしろいかわかりませんが、一度読んでみてください。

○俺は友達が少ない

俺は黒神新(くろがみあらた)。今日から新川高校の2年生だ。自分で言うのもあれだが顔や運動能力など基本高スペックだと思う。

教室では新しいクラスメイトとのメアドの交換や挨拶が飛びあっている。そんな中、 俺は1人で窓の外を眺めていた。俺は親しい人間、つまり友達を作りたくない。だからみんなに素っ気なく返していたら、俺に話しかけてくるやつはいあまりなくなった。

「おはよー!あれ?アッくん元気ないよ?」

例外もいたか…。この陽気な美少女は俺と同じクラスの日本結城(ひのもとゆうき)。小さい頃からの幼馴染みだ。女子の平均ぐらいの身長だが座っている俺よりは随分大きい。

「ああ、いつもうるさいな。」

といつも返す。

あと、ちなみにもう先生くるんだがな。

「ひどいなー、アッくんは。あ、もう先生きちゃう。バイバーイ」

と俺から離れていった。なにがしたかったんだろう。だが、俺が信頼している数少ない1人だ。 少しすると先生がはいってきて、軽く自己紹介をし、 それからホームルームが始まり、終わると違うやつが俺に近づいてくる。

「久しぶりやな!春休み会えなくて寂しかったでー。新はメール送っても返信くれないからな。」

こいつもか…。この関西弁の少年は三吉悠人(みよしゆうと)だ。身長は俺より少しばかり高く、いつも調子の良い男だ。こいつとは小学校の頃からの仲である。

「久しぶりだな。別にいいだろ、めんどくさいんだよ。」

こいつにはこれでいい。

もしかすると、無視できないというのは、こいつが話しかけてくるのがうれしいのかもしれない。

すると、いきなり

「もう!二人とも何してるの?早くグラウンドに行かないと怒られるよ?」

という声がした。声の主は清水椿(しみずつばき)だった。その少女は背は少し低いが、美少女と呼べるほどに美しかった。彼女も小学校からの友達である。母性本能というのか、世話が好きなお人好しだ。

「あぁ、悪い。すぐ行く」

と素っ気なく返す。俺の友達はこの3人だけである。それにはある理由があるが、次の機会を期待しよう。

つまり俺は友達が少ない。


○念能力

俺の通う新川高校に入るにはテストがある。どこの高校にもテストはあるのだが、新川高校は他の高校とは違い、学力はあまり関係ないのだ。審査する内容は「念能力」の才能だ。

「念能力」とは、今から7年前に異世界から攻めてきた「(ゼウス)」と名乗る謎の集団に地球は壊滅的に追い込まれた。多くの人間はそれによって殺された。今の世界の人口はで1億人程度だろう。1億人も残れた理由がその「念能力」だ。「念能力」は「神」の襲撃により、突如、人間が習得した超能力のようなものだ。人間の生存本能によって目覚めたとされている。念能力には「念力」が必要となる。死の危険によって、その「念力」が体から溢れ出し、念能力に目覚めたのだ。しかし、その「念力」は誰にでもあるものではなく、生まれつきによって「ある」か「ない」に分かれ、さらに「多い」「少ない」などと分かれている。人類はその力により、どうにか神を撃退した。しかし、神はそれから人類を殺すために毎日のように怪物を地球に襲わせている。その怪物は街中をうろつき、市民を襲う。そのため、地球では「念能力」使いを鍛えるための施設が作られている。新川高校もその一つだ。

くそっ、嫌なことを思い出しそうだ。


今日の午前中は全て集団実戦訓練か…。

集団実戦訓練とは人工的に作った怪物と市街地全体を使って戦闘する。市民には避難所に一時的に避難してもらう。怪物を作ったといっても、怪我はするし、こちらを殺すつもりでくる。だから、手は抜けない。倒した数とその敵のランクに応じてポイントをもらえる。そのポイントの量によって卒業後の進路がきまる。さらにスクールカーストはそのポイントをもとに作られているため、弱いやつは強いやつに逆らえないのだ。基本的にソロ討伐は難しく、5人程度のパーティを組んで倒す。しかし、俺は誰とも組まない。ソロ討伐だ。例の3人の友達は悠人はクラスの男子、結城と椿は二人だけで組んでいる。クラスは5組まであり、1クラス30人いる。悠人はその中でも15番以内のポイントを持っている。結城と椿は20番程度だが、それでも上位である。悠人は頭を使うのは苦手で結城と椿は逆に頭がいい。俺は学年では2位だ。俺の戦闘技術と念能力はトップクラスである。


俺は絶対に神を許さない。あいつらを殺すためならなんでもやる。1位のやつは紅水月(くれないすいげつ)というやつだ。そいつは俺と同種だった。紅は口が悪いが物静かである。紅はいつも何を考えているかわからないが、何かを求めているのだろう。きっとそのためならなんでもやる。紅はいつもクールでかっこよく、最高の念能力使いだと言われている。

紅も俺と同じソロだ。ソロができるのは俺と紅くらいだろう。新川高校は地域の防衛にも力を貸しているため、本物の怪物との戦闘も少しは経験している。しかし、強い敵は専門のハンターによって討伐されるため、俺たちはあまり強い敵とは滅多に戦闘をしない。

「あと5分後から開始しまーす。時間は12時30分までです。忘れないでくださいね。」

お、もうそろそろ始まるのか。

ちなみに、怪物の命の源はコアと呼ばれるものだ。基本コアの場所は見える場所にあるが、コアが強い状態だと破壊は難しい。コアは怪物にダメージを与えるほど弱くなる。そのために、いろいろな攻撃をしかけるのだ。

「おい黒神、今回もソロでするのか?」

話しかけてきたのは学年7位の晴海鉄平(はるみてっぺい)だ。確かこいつは7.8.9位の3人パーティだったかな。

「ああ、勧誘なら断るぞ。」

こいつはいつも勧誘してくる。悪いやつとは思わないが、俺はあの3人以外は完全には信用していない。

「そうか、残念だ。まぁ気が向いたら教えてくれ。」

すぐに折れてくれるのは有難い。

「悪いな。」

「あぁ、またな。お互い頑張ろうぜ!」

そう言って、晴海はパーティの仲間のところへ戻っていった。すると、

「新!一緒にやらへんか?」

こいつもかよ…。そこには笑顔の悠人がいた。確かこいつの班は悠人が今14位である。残りのメンバーが16.20.23位くらいだったかな。

「いつも言っているだろ。俺はソロだ。お前ならわかるだろ?」

こいつは俺がソロの理由を知っている。結城と椿もだ。だからこそ俺はあいつらと友達でいられる。

「そうだが…。やっぱり一人は危険や!」

こいつはしつこいんだよな。

「おいおい、悠人ぉ。こいつが組むわけないだろ?こいつは一人が好きなんだよ。」

まためんどくさい奴が来たか。

こいつは剛田哲也(ごうだてつや)、学年3位で、パーティは3人だったはずだ。残りの2人は6位と10位だったはずだ。

「お前が新の何を知っているんだよ!?」

珍しく悠人が怒っている。

「おいおい、雑魚が文句言ってんじゃねぇよ?」

スクールカースト上位の剛田に悠人はこれで反論がうまくできなくなった。だが…

「確かに剛田、お前の言う通りに俺は組まない。だが、悠人を雑魚呼ばわりするなら俺が許さないぞ。」

俺は2位だから、これで剛田は反論できない。俺がこんなこと言うなんて自分でも驚きだ。

「クソッ、覚えとけよ!」

よく聞く捨てゼリフを吐いて、剛田は去っていった。

「新、ごめんな。また気が向いたらでいいから一回考えてみてくれ。」

と悠人も去っていく。

「なんで謝る…。」

と小声で囁いた俺だった。


○実戦訓練開始

開始時刻1分前、俺は軽くストレッチをしていた。周りは作戦を立てたりしている。俺の作戦はいたって簡単。怪物の音を捉え、走っていく。コアが破壊できるなら破壊。できなければそのまま斬り殺す。ちなみに念力で体を覆うことによって身体を強化できる。念能力は一人一人異なるので、その能力は十人十色だ。また、怪物へ有効な(ブレード)と拳銃を個別に配布されている。銃の弾は念力を使ってうつため、乱用はできない。長距離からの射撃は可能ではあるがかなりの念力の消費が必要となるので実用性は皆無だ。ちなみに念力の回復は休憩や飲食によって回復される。

「スタート10秒前、9.8.7.6.5.4.3.2.1開始」

先生の掛け声により全生徒が散らばった。実戦訓練のときは他の学年は、学校から徒歩30分の別校舎で授業だ。まぁ授業といっても大半が戦闘についてだが。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

俺と紅だけスタート地点から動かずになんとも言えない空気が流れる。

「俺はまず右に行く。こっちにくるなよ?」

「だまれ、雑魚。俺に指図するな。だが、今回は俺は左に行く気分だから従ってやる。」

俺は宣言通り右へ走り、紅も左へ向かう。これは俺たちが同じ場所に集まることで、お互いの討伐数は減ってしまうためだ。

敵の強さはG.F.E.D.C.B.A.Sランクに分かれている。Gは3ポイント.Fは5ポイント、Eは10ポイント、Dは15ポイント、Cは30ポイント、Bは500ポイント、Aは3000ポイント、Sは10000ポイントである。Cでもかなりの上位の人間でしか勝てない。BやAなんか出たら学年の全員でかかっても勝てないだろう。Sなどもってのほかだ。最初はG〜Fの怪物がおり、倒すにつれてDがでてくる。さらに倒すとCも出現する。さらに倒すとBが出現するが、そこまで出現するのは3年生の終盤でも10年に1度ほどだ。AやSなど幻のようなものだ。パーティで狩る場合は合計のポイント数を訓練終了後に配分する。

さて、さっさと狩ろうかな。この敷地は広い。縦と横はともに5kmで建物も入り乱れているたて、視覚はかなり制限される。

「・・・・・・」

集中しろ、感覚を研ぎ澄ませ。

他のパーティの戦闘音が聞こえてくる。ちなみに怪物と戦闘中に、他のパーティが入ってくることは基本ない。怪物へのとどめをさした人間のパーティにポイントが配分される。だからどれだけ攻撃をしてコアを弱らせてもとどめがさせなければ意味がない。だが、コアのラストアタックを狙うやつも滅多にいない。そんなことしたら恨みを買い、そのパーティとの戦闘になった場合は念力を消費し、デメリットの方が大きいからだ。敵がどうしても倒せない場合は同盟要請をだすことができる。それが承認された場合はその同盟の誰が倒しても各パーティの活躍に応じてポイントが配分される。

…見つけた!直線距離100m、右斜め前だ。俺は躊躇せずに建物の中を通過する。壊れた建物は「掃除屋(クリーナー)」と呼ばれる組織によって、すぐに修復されるため気にしない。

怪物の名はリカル、ランクはFだ。リカルは大きさは大型トラック程度の4足歩行。同じランクでも強さは完璧に同じではない。リカルはFでは強い方だな。他のパーティなら10分程度はかかりそうだな。

俺は剣を構え、念力で足を強化(ブースト)させる。そして、大きく、素早く、跳躍。リカルはまだ俺に気付いていない。俺はリカルの上を超える際に剣を強化し、背中を大きく斬りつける。

「グォォー!!」

煩いリカルのうめき声。俺はそのままリカルの背中に足を置き、強く蹴る。反作用を利用し俺は空中で一回転し綺麗に着地。それに対してリカルは横に倒れた。

「ん、コアはそこにあったか。」

俺は腹の部分にあったコアを見つけ独り言をもらしてしまう。俺はリカルに向かい走り、そのまま剣でコアを貫く。そしてリカルはポリゾンのように跡形もなく消えた。

''ピコッ''と俺の右手首から効果音がした。

右手首には [4ポイント追加] と書いてある時計のようなものであった。それは、点数計(ポイントウォッチ)といい、ポイントが記録されていく。さらな自分の残り念力も分かる便利な道具だ。ポイントは実戦訓練だけでなく本当の実戦でも手に入るが実戦で手に入る量は微量である。ペーパーテストでも微量のポイント数が稼げる。1年からの記録もあり、俺は今8928ポイントたまった。実戦訓練は1週間に1回の頻度である。他の個別の実戦訓練もあるのでポイントは基本個別訓練と集団訓練で稼げる。

「なんで2年の初出席で始業式をせずに実戦訓練するんだろうな」

俺は思わず独り言をつぶやいてしまっていた。昔ならあり得ないだろう。

だが、もう昔には戻れない。俺は雑念を無くし、再び俺は聴覚を集中させた。

「マジかよ。もうDがでてやがる。」

俺はまたもや独り言をつぶやいた。しかし、これはしょうがないだろう。Dレベルならある程度離れていても気配を感じる。

いつもは早くても開始1時間でDは出現する。それが今回は開始10分で出現しているんだ。俺は聴覚を頼りにその怪物を追いかける。誰かと戦闘中のようだ。さらに俺は急ぐ。

「ぐっ、なんでDランクがもう…」

俺が到着するとそんな声が聞こえた。こいつらは確か60位程度の5人のパーティだ。唯一リーダーは30位程度だな。

「お前ら、大丈夫か?」

俺はリーダーらしきやつに話しかける。

「あぁ、お前は2位の黒神だよな?悪いが参戦してくれないか?」

まぁ、どうせ倒すつもりだったしいいか。俺がソロ討伐してこいつらの恨みを買い、争っても俺はほぼ無傷だろう。だがイメージがかなり悪くためそれは避けたい。

「了解だ。」

俺の了承を確認し参戦要請を送り承認する。

「すまない、助かる。俺の念能力は一定時間、自分の体を同盟の透明にする。今はまだ3秒程度しかできないし、そのインターバルは30秒必要だ。」

「わかった。俺がアタッカーをするからお前らは援護を頼む。」

「了解だ。」

怪物の名は攻撃型(バーサーク)リカル。さっき倒したリカルの進化したようなものだ。大きさは約2.5倍。名前同様に攻撃力が高くなっている。さらに防御もリカルよりかは硬い。Dのなかでもかなりの上位である。

「行くぞ。」

俺は開始の合図を小声でする。

俺は自分の念力を派手に出し、攻撃型リカルを威嚇する。相手が一瞬戸惑った隙に俺は一気に走り出し、体の横を走りながら斬りつける。こいつのコアは背中にあるようだ。だが、まだ破壊は無理だろう。俺に続き、他のメンバーも銃での射撃を始める。さらにリーダーは背中をたたく斬りつけた。

「グゥ」

と低いうめき声が聞こえる。思っていたよりもこいつら動けるじゃないか。

ん、相手が攻撃態勢に入った。

目標は正面にいる小柄な男だ。

だが、そいつはまだ気付いてない。

「おい!来るぞ、横にとべ!」

と俺は叫ぶがもう間に合わない。全身での突進を開始した攻撃型リカルはかなりの速さを出している。あれを喰らえば今日はもう動けないだろう。

「クソッ。」

俺は小さく舌打ちし、自分の念能力を発動させる。

黒血(ブラックブレッド)!」

黒血、それが俺の念能力の名前だ。全身の血を強化し、身体能力を強化できる。足に黒いオーラをまとい、すぐに攻撃型リカルに追いつく。そしてそのまま回し蹴りを横に決める。攻撃型リカルは進行方向を変えられ、建物の中を吹っ飛んでいく。

「すまない、油断した。」

狙われた小柄の男が俺に礼を言う。

「絶対に気を抜くなよ。」

と俺は注意し、すぐさま意識を戻す。俺は黒血を解除し、リーダーに声をかける。

「今のでかなりのダメージがたまった。俺がコアを破壊するから気を引いてくれ。」

さらに俺は小声で簡単に作戦を伝えた。

「わかった、任せてくれ。」

と言い、リカルの正面にそいつは走り10m程度の距離で止まる。リカルも臨戦態勢だ。他のメンバーは離れたところで待機だ。俺は20mほど離れ、建物に隠れる。

「喰らいやがれ!」

リーダーのやつは叫び、俺はタイミングを合わせ走り出す。そしてリーダーは透明化により姿を消し、いきなりリカルの目の前にでた。さらにそこから真上に跳躍する。リカルはそれを目で追う。その隙に俺はコアの上まで跳躍し、剣に念力を込めコアを貫いた。リカルはうめき声をあげながら、消えていく。

なんだかあっけなかったな。

俺の点数計には10ポイントが追加されていた。同盟の場合はそのパーティの活躍に応じてポイントが入る。

じゃぁ他のやつらは1ポイントずつだろう。パーティは個人ではなく集団で数えられるため役に立たなくても同じようにポイントがもらえる。

「やっぱお前すごいな!本当にありがとう」

などとお礼を告げられる。別に礼を言われる筋合いはないんだけどな。俺はそいつらと別れ、狩りを続ける。


その頃、他の場所でもDランクの登場があった。苦戦する者もいれば点数が稼げて喜ぶ者もいる。紅は後者だった。紅はDランクの怪物など圧倒し、着実にポイントを稼いでいた。

「なるほど、これはおもしろい。」

紅はニヤリと笑い、怪物を殺していった。


終了1時間前、俺は違和感を覚えていた。Dランクの発生が早いにもかかわらず、Cランクの発生はタイミングが異なったからだ。

「アッくん!元気〜?今回も好調そうだね!」

「新が不調なんてあるの?」

と結城と椿が俺の近くに寄ってきた。

「あるよ!いつも不機嫌そうだけどねー」

さすが幼馴染、よく分かっている。

あと俺は別に不機嫌じゃないからな…。

「それよりもお前らどうしたんだ?」

こいつらが集団訓練で話しかけてくるなんて珍しいな。

「あ、わすれてた。いつもとなんか違う感じがするんだけどどう思う?」

結城が聞いてくる。

「俺もそう思うが、それといって問題はないから大丈夫だろう。」

俺はそう思っている。

「そうだよ、いざとなれば先生や先輩を呼べばいいんだしさ。」

椿が安心したように言った。だが、それは無理だろう。

「ここの先生はそこまで強くはないからな。強い人は討伐に専念している。先輩は強い人もいるが3年生は今日は休みだ。」

嫌な予感がしてくる。悠人が心配だ。俺は電話するためにポケットから携帯を取り出そうとした。その時、俺の携帯から着信音が鳴る。悠人だ。俺は急いで電話に出る。

「なにがあったんだ?」

「新!他のやつを連れて逃げろ!Bランクの怪物がでやがった。」

俺の思考は一時混乱する。Bなんか俺たちじゃ倒せるわけがない。なぜだ、訓練で出るなんて聞いたことすらない。

「逃げろってお前はどうするんだ!?まさか戦うつもりなのか!?」

勝てるわけがない。

「わいが足止めしないと被害が大きくなるからな。」

いきなりだが、ここで俺はある答えを導き出した。

「そうか……。そいつは本物の怪物なんだ。おそらく早く出てきた怪物たちも本物だったんだ!」

だからどうしたって、一人で思ってしまった。今はそんなことどうでもいい。俺は友達を失うのはもう嫌だ。だが、俺が行っても正直勝てるとは思えない。それに悠人が足止めするといっても、被害の大きさはあまり変わらないだろう。だが…

「悠人!お前は逃げろ。そいつは俺が殺す…!」

そして俺は電話を切り、「黒血」を発動させる。結城と椿はただ呆然として動かない。俺は足に力を込めて、できる限りの速度で走る。場所は怪物のオーラですぐにわかった。

「ウソだろ……」

俺は現場に着いたときには思わず呟いた。俺の同級生の死体が何個も転がっていた。血が海のように広がっている。友達ではなくても、信用していなくても、1年間を共に過ごした仲間であることに変わりはなかったのだ。

「クソォォォォォォ!!!」

俺は悔しさのあまり空に向かって叫びだした。怪物の名前は大狼(ビッグウルフ)、Bランクの中でも上である。二足歩行のため、シルエットは人間のようだ。

「あ、あらた…」

そこには悠人がボロボロの体で横になっていた。

「悠人!大丈夫か!?お前以外のやつで生きているやつはいるのか!?」

「どうにか大丈夫やで…。わい以外で生きているやつがいるかはわからんけど……。」

「そうか。お前は休んどけ、俺がこいつを倒す……。」

俺は殺意に満ち溢れた目で大狼を見る。

大きは人間の約3倍くらいだ。

「ダメや、新は逃げてくれ。」

こいつ何言ってんだよ。死にそうなくせして。俺は友達は信用していたが、仲間は信用していなかった。友達と仲間では仲間のほうが大切そうだが、俺にとっては違う。友達は信用しているが仲間は信用していなかったからな。それでも俺は仲間を殺し、悠人を傷つけた怪物を許せなかった。


俺はある光景を思い出していた。


これは俺が小学生のころ、神が最初に攻めてきた頃の話である。

1時間目と2時間目の間の休み時間、俺は悠人を含む友達とどうでもいい雑談をしていた。

「毎日つまらねぇよなぁ。何か刺激が欲しいよな。」

その内の1人がそんなことを言った。

「例えば異世界から宇宙人で攻めてくるとかか?」

俺は冗談半分で笑いながら言った。

その時、「ドン!」と地球が揺れるような音がした。一瞬だが静寂に包まれる。その静寂を破ったのは怪物の鳴き声であった。さらに続いて校舎の壊れる音と他の生徒の悲鳴が聞こえた。俺たちはパニックになりながらも教室から廊下に出た。

「な……!?」

俺たちは恐怖で声が出なくなっていた。足もうまく動かない。俺たちの視線の先には大きな猫の怪物が人間を噛みちぎっていた。俺は恐怖を抑えこみ、大声で叫んだ。

「走れええぇぇぇ!」

その声に反応し他の奴らはふらつきながらも走り出した。そんな俺たちを怪物は容赦なく襲いかかる。少し遅れた者は一瞬で肉塊になっていた。血が吹き荒れる。死ぬ直前に俺はその中の一人と目が合った。そいつの目は恨み、憎しみなどど負の感情がつまっていた。

俺は罪悪感でおかしくなりそうだった。

だが、俺たちは走り続けた。しかし、俺の隣で走っていた友達が転んだ。

「クソッ、助けれくれ!はやく!」

とそこで立ち止まった俺と悠人に助けを求めた。悠人はすぐに手を出し、助けようとした。しかし、怪物はもうすぐ後ろにいたのだ。俺はそれに気付き、悠人の腕を握り走り出していた。

「おい!お前それでも人間かよ!?お前のせいで俺は死ぬ。お前はそれを忘れるんじゃねぇぞ!クソォォォォォォ!」

と言い残し、そいつは殺された。俺は人を殺したんだ。それも友達を。

「くそ、どうする!?前からも来やがった。」

先頭を走っていた奴が大声で叫ぶ。だが、俺にはその言葉がうまく聞こえていなかった。悠人も顔を青ざめている。

「アッくん!しっかりして!私たちはまだ生きているのよ?」

結城が椿と一緒に俺に話しかけていた。俺は友達を殺したんだ。でもこいつらだけでも助けたい…。そのとき、何の前触れもなく俺は念能力に目覚めた。俺と悠人、結城と椿の4人以外はとにかく前進する。俺は体の血が暴れ出すような感覚を覚えた。その血は俺の体に力を(みなぎ)らせた。俺が俺じゃなくなりそうだった。

「うおおおおぉぉ!」

俺は咆哮し、俺たちを追ってきた怪物の顎の下に滑り込み、手を床につけ、足を真上に思いっきりあげる。その足は猫の顎の部分を正確に当て、怪物は高く吹っ飛ぶ。怪物が落ちてきた瞬間に俺は足に全てを込めて蹴り飛ばした。

結城と椿、悠人は驚きを隠せずにいる。自分でも不思議だった。体の血が沸騰するような感覚によって、全ての神経が敏感になった気がした。格闘経験なんかもない俺だが、反射的に怪物を仕留めていた。「グシャッ」と不快な音が背後からした。すぐそこに前方の怪物が目の前にいた。俺たち4人以外は悲鳴も出せずに惨たらしい肉塊になっていた。俺は怒りに任せ、いつの間にかそいつも殺していた。

「大丈夫か!?助けにきたぞ!」

と念能力に目覚めた大人によって俺たちは救助された。その時の、俺たちを助けた人の驚きの顔が忘れられない。

あの時、俺がもっと考えて戦えば他の友達も助けられたんだ。俺があいつらを殺したんだ…。


「おい、新!しっかりせい、早く逃げるんや!」

悠人の声で我にかえる。悠人はそう言い、ボロボロな体で動き始めた。

俺は友達を、仲間をまた失うのか…。

「てめぇ!俺に偉そうなこと言っといてこのザマかよ。」

振り返ると、剛田がそこにいた。

「なんでお前が…」

「うるせぇ!俺はこいつを倒してポイントを集めるだけだ。やんねぇなら早く逃げちまえ。」

剛田は嫌な奴だがバカじゃない。

こいつまで、命をかけて他の奴を守るつもりなのか。

こいつにだって何か理由はあるのかもしれない。

それなのに俺は……。俺がここで逃げて、もしも俺が生き残れても俺は俺じゃいられないだろう。それなら俺は…

「雑魚が偉そうに言うんじゃねぇ。こいつは…俺の獲物だ。」

俺はそう言って、ユラユラ歩いている悠人の腕を掴み反対方向に乱暴に投げた。

「剛田、ポイントが欲しいなら手を貸せ。」

「しょうがねえが今回だけだ。」

そこに遅れて結城と椿がやってきた。

「これ、何なのよ…。」

みんなの死んでいるのを見て、青ざめた。

「お前ら!まだ息がある奴を連れて行ってくれ。」

「で、でも…」

「早くしろ!」

俺は叫んだ。

正直いつ大狼が襲ってきてもおかしくない。

俺は「黒血」を使い、走り出した。


紅は最初の時から本物ということに気づいていた。

紅はBランクならソロで安全に倒せる。Aランクでも倒せはしなくても逃げに徹すれば死にはしない。

紅は怪物に両親を殺された。

だが、紅は復讐心を強く持っていたが、それは強くなりたいという思いに変わっていた。自分が強くなるにはライバルが必要だと紅は判断していたが、圧倒的な強さのあまり、ライバルなどはいなかった。黒神はかなひ強いがライバルにはなれない。だが、黒神の秘められた力を解放できればわからないと判断していた。黒神の怒りを解放できれば、その力も解放される。

つまり、黒神の「黒血」を暴走させたいと思っていた。

そんな時に、この事態だ。

Bランクが出れば、多くの人間が死ぬ。黒神も死ぬかもしれない。

それでも、その少しの可能性にかけたのだ。

「黒神…。楽しみだよ。」


俺は大狼の横へと素早く移動し頭部を蹴り飛ばそうとした。

だが、俺の足は簡単に捕まれ、そのまま投げられた。

正面から突っ込んできた剛田とぶつかり、そのまま飛ばされた。

「クソッ、大丈夫か!?」

俺は剛田へと聞く。

「おう…、だがこのままやっても勝てねぇぞ。」

確かにその通りだが、下位の連中がどれだけいても無意味だろう。

「大丈夫か!?助けに来たぞ!」

そんな時に晴海のパーティが来てくれた。

これでポイント順位2.3.7.8.9が揃ったわけだ。8位のやつは新道、9位のやつは折原というそうだ。

「すまない、助かった。だが、これでもまともにやったら勝てない。念能力を上手く使うしかないぞ。」

俺はそう判断した。

「しょうがねぇ。俺の能力を教えてやろう。俺の能力は"一発多中(ワンマシンガン)"。一発の攻撃に数発の攻撃の衝撃を加えられる。」

「俺は"瞬間移動(ワープ)"。名前の通りに瞬間移動する。インターバルは1分に1回で半径50mが今の限界だ。他の奴を瞬間移動させれるが、その場合は普段の何倍もの念力が必要になる。新道は拘束術(チェイン)。鎖を作り出し、相手を拘束できる。折原は節約(エコ)だ。銃の弾の念力量を大幅に減らせる。」

よし、念能力の効果はこれで把握した。

問題はどう使うかである。身体的な能力では俺がダントツで一番だが、俺の攻撃は防がれた。まともにしても太刀打ちできない。俺は最終的にある作戦を思いついた。

俺は作戦をしっかりと伝える。

「お前の案に乗るのはアレだが、今回だけはしょうがねぇ。」

「行くぞぉ!」

俺の合図で剛田と晴海は走り始めた。

剛田と晴海は互いにスピードを合わせ、大狼から10mほど離れた部分で二人は目を合わせる。

「うおおおぉぉぉ!」

晴海の叫び声と同時に剛田は晴海の瞬間移動により大狼の前に出現する。

「喰らいやがれぇ!」

大狼に叫びながら剛田は拳を何発も入れる。一発多中により、その何倍もの衝撃を与えれる。

「グォォッ!」

大狼はうめき声を上げた。

その隙に新道による拘束術で鎖を作り出し、大狼に放つ。その鎖は大狼の体を複雑に縛った。

「よっしゃぁ!」

新道の喜びの声が聞こえた。

だが、まだまだだ。

そこに折原が常よりも威力の高い銃の弾を連発する。

「グッ、グゥゥ!」

また大狼のうめき声だ。

俺は拳に全ての力を注ぎ込み、俺の拳からは黒い気が溢れている。

「くたばれぇ!!」

俺は、そう叫びながら大狼の顔をその拳で殴った。

大狼はもう何も言わずに吹っ飛んでいく。

勝ったのか…?

俺はそう思い、喜びに満ち溢れた。

だが、そう思った直後、俺の腹に強烈な一撃が入った。

「ぐっ…!」

俺は声を漏らし、後ろに盛大に吹っ飛んだ。

剛田や晴海たちは状況が飲み込めていない。

無論俺もだ。

俺はどうにか痛みをこらえて立ち上がった。

大狼は口の中から気の玉を作り出し、それを俺たちに向かって何回も連続で撃ってきた。

速い!

俺も含め、晴海、新道、折原、剛田わ避けきれずに、それを喰らった。

全員が動けずに倒れていた。

ここで死ぬのか?仲間も守れずに。

「うおぉぉぉぉぉー!!」

俺は叫びながらどうにか体を動かし、最後の力を絞り出し、大狼に走り出す。

だが、大狼はさっきの何倍も大きい気の玉を作り出し、撃ってきた。

避けきれない…。

だが、喰らえば死ぬ。

くそっ、俺はまた誰も救えないのか。

俺は無力だ。誰も救えない。

はっ、正に井の中の蛙だな。

俺は思わず苦笑していた。

そして俺はここで死んだ。いや死ぬはずだった。


俺の目の前に悠人がいた。

ボロボロで動けないはずなのに、俺の前にいる。

悠人は俺をかばっていた。

悠人はそのまま倒れた。

「ゆうとぉぉぉ!!!」

俺は出せる限りの音量で叫んだ。

「なんで…。わかってるだろ!?俺のせいで誰かが死ぬのはもう嫌なんだ!」

頼む…。

「ぐっ…。だ、だからこそかばったんやで?」

「何を言っているんだ…。だからこそだと?こんなときにふざけるなよ!」

俺は無我夢中で叫んだ。

「ふざけてないで?新が今殺されれば、わい達は間違いなく殺されるで?」

苦しそうに悠人が言う。

確かにそうだ。でも…

「お前が俺をかばって、俺が生き残ってもこいつには勝てねぇよ…。」

やはり現実はなんて残酷なんだろう。

「新、お前は優しい。だから言わせてもらうで。昔クラスメイトが死んだのはお前のせいじゃない。わいが今生きてるのだって新のおかげやで?そして今勝てる可能性はわいより新の方が大きい。新をここで見捨てればわいはわいでなくなる。だからかばったんや。お前のためにかばったんじゃないで。これは自分が自分であるためにしたことや。」

かすれた声だが力強く、悠人は言った。

「そうか。もう喋るな。俺がこいつを片付ける。それまで死ぬんじゃねぇぞ…。」

俺は悠人にそう伝えると、悠人は親指を立てて、不自然だが笑顔をした。

「結城、椿。悠人を頼んだ。」

俺は悠人を二人に任せる。

自分自分であるため、か。

俺は俺であるために、俺が俺である理由はなんだろう。こんな思いするくらいなら自分を捨てて自由になった方が良かったのかもしれない。だが、そうしなかった理由があるのだろう。

それはなにか……。

それを悠人が教えてくれた。

俺が俺である理由。

それは……

「俺の前で誰も死なないためだ…!」

俺はもう誰も死なせない。

誰かのためじゃない。悠人のためでもない。

これは俺自身のためだ。

俺が俺であるために…。

俺の中の黒い血が熱くなる。体が沸騰するようだ。脳が命令する前に体が反射的に動く。

「うおぉぉぉ!!!!!!」

俺は咆哮と共に駆け出した。

大狼の頭部に強烈な蹴り。それを片手で防がれる。

反対の手で俺の腹部を殴る。俺はそれを受けるが、片手を地面につけ踏ん張った。

そこから、また近づき剣で斬りつける。それを大狼はかわそうとする。

だが、俺が少し速い。大狼の首を浅くだが斬った。

俺の攻撃は終わらない。

さらに、剣を地面につけ、それを軸にして低く上に跳び全力で頭部を横から蹴り飛ばす。

大狼はそれをまともに喰らい、20mほど右に吹っ飛んだ。

「お前は俺の大切なものを傷つけすぎた。それがお前の罪だ。だから俺はお前を殺す!」

俺は聞こえてるか分からないが、そう言い、大狼に向かって走り始めた。

大狼はさっきまでとは比べ物にならない威力の俺の蹴りでかなりのダメージを負った。

俺は大狼の近くまで来ると、高く跳んだ。俺はうつ伏せになっている大狼の頭部を狙い、剣を構えた。そのまま重力にしたがい、俺は大狼の頭部に全ての力を込めた剣を刺した。

コアの存在など、その時俺は忘れていたが、覚えていたとしても意味はなかっただろう。そして、大狼はポリゾンのように消えていった。


「悠人…、アッくんが勝ったよ。」

結城が悠人に話しかけていた。

「さすがやなぁ。わいが思った通りやで。」

悠人は苦しそうだが、嬉しそうに言った。

「あんたのおかげで勝てたけど、もう無理はしないでね?」

今度は椿が言った。

「安心せい。次はねぇから…。みんな、死ぬんじゃねーぞ……。」

何を言っている!?

次はないだと?

俺は無言で悠人に近づいて、跪いた。

「ゆうとぉぉぉ!!!死ぬなぁぁぁ……!」

俺は叫んでいた。

「ふっ…、絶対にお前は死ぬなよ…。俺の分もみんなを守ってくれよ……。今までありがとな…」

悠人は苦しそうに、それでも嘘のない笑顔をした。

「ゆうと……。約束してやる。俺が神を駆逐する…!」

俺はそれを悠人に誓った。


紅はそれを最初から気配を消して見ていた。紅は歓喜していた。

黒神の急激なパワーアップによってだ。

他の奴らがどれだけ死のうと関係なかった。

「黒神ぃ!俺の期待を裏切るなよっ!」

紅は独り言を漏らしながら笑っていた。


異常に気づいた先生が専門のハンターに連絡をし、残りの怪物はハンターによって討伐された。

俺や結城、椿や晴海と共に生き残ったメンバーは学校に戻っている途中だった。

「紅!大丈夫だったか!?」

俺は紅を見つけ、声をかけた。

こいつほど強ければ死なないと信じていたが、それでも不安だった。

「お前も無事だったか。どうやら雑魚でもそれなりに強くなったようだな。」

「うるせぇな。人が心配してやってそれかよ。」

紅が生きていたことに、俺は少しながら喜んでいた。

「俺はお前を信じていたよ。お前が仲間の(しかばね)を越えて強くなることを。」

いきなりこいつは何を言っているんだ。

「お前、何でそんなこと知ってるんだ。」

こいつはあの場にいなかったはずだ。

「やはり雑魚だな。俺は大狼とお前の戦闘を全て見ていたんだよ。ちなみに俺はすぐに怪物が本物だと気付いていたがな。」

「本当か…?じゃぁ、なぜすぐにハンターを呼ばなかった!?」

俺は信じられない思いだった。

こいつは何がしたいんだ!?

「そんなことも分からないのか。俺はお前が強くなるために何もしなかったんだぞ?Bランクならかなりの人数が死ぬことは分かっていたからな。お前はそのおかげで強くなったじゃないか。感謝して欲しいくらいだ。」

嘘だろ…。こいつのせいだったのかよ。

許さねぇ…!

「紅ぃぃぃ!!」

俺は叫び、飛びかかろうとした。

「許さないわよ…!」

その前に椿と結城が高い声で叫びながら走った。

「ヤメロォォォ!」

俺はそれを焦りながら止めようとする。

こいつらじゃ…勝てない。

結城と椿が紅の5mほど離れた場所で紅が呟いた。

天照(アマテラス)。」

紅はそう言い、右手を上げ左にスライドさせる。

すると、結城と椿の横から炎が現れ、二人を吹っ飛ばした。

「結城!椿!」

俺は叫んだ。落ち着け、俺がするべきことを考えろ。

あいつらは強い。

こんなんじゃ死なないはずだ。

それよりも紅が問題だ。

「紅!俺と勝負しろ!」


俺と紅は二人で向かい合っている。

今の俺は強い。俺の体の中で黒い血が騒いでいる。

紅の念能力は「天照」。天からの炎という意味で、炎を操れる。その力はかなり強いが、今の俺なら勝てるはずだ。

「紅…。俺はお前を許さない。行くぞ!」

俺は全力で走る。何回ものフェイントを入れて、蹴りを入れようとする。

だが、紅はそれをあっさり躱し、手の中で炎の玉を作り出し、それを俺の腹に投げ込む。

俺はそれをまともに喰らい後方に吹っ飛ぶ。

「その程度か。黒神、お前は期待ハズレだな。お前のために死んだ奴にでも謝っとくんだな。」

「うるせぇ。俺はお前を倒す!あいつらは俺のために死んだんじゃねぇ。自分のために、必死にもがいて死んでいったんだ。あいつらをバカにするんじゃねぇ。」

俺はそう言って、剣を出した。

それに俺の念力を注ぎ込み、剣が黒く染まる。

「喰らいやがれ!"闇の一閃"!」

俺はそう叫び、剣から斬撃波を作り出し紅に放つ。

「そんなものが効くか。"炎の(ファイアウォール)"。」

紅の前に炎の壁ができ、俺の攻撃はたやすく防がれた。

やっぱこいつ…強い。

紅は俺に一瞬で近づき、俺の腹に膝蹴りを叩き込む。

「ぐはっ。」

俺の声が漏れる。

さらに紅は蹴りの衝撃で空に軽く浮いた俺の頭部を回し蹴りで吹っ飛ばす。

俺は簡単に吹っ飛ばされた。

「本当にこの程度とはがっかりだよ。もうお前に用はない。消えろ。」

紅はそう言って、去って行こうとした。

「待てよ…。まだ勝負は終わってねぇ。」

俺は紅にどうにか届く声で言った。

「終わったよ。雑魚は結局雑魚だ。俺には勝てない。」

紅は振り返り、そう言いまた顔を元の方向に戻し歩いていく。

俺はそれが悔しくて、情けなかった。

自分が許せなかった。この程度がみんなを守れるわけがない。

結城と椿すら、さっき守れなかった。

俺はそのことを思い出すと、さらに体の血が熱くなってくる。

俺に力がみなぎってくる。

本能が俺に戦えと命令している。

俺は無言で紅の背後まで走った。

紅は俺の速さに驚き、いや歓喜の表情で俺を見た。

俺はその顔を思いっきり殴り飛ばした。

"闇の一閃・連"。

心で呟き、俺は"黒い斬撃"を連続で紅に放つ。これなら、さっきの技では防ぎきれない。

紅はすぐに起き上がり、腰を低く落とした。

そして、手を前に向け炎の衝撃波を放った。

バン!

と爆発音がなり、その二つの攻撃は互いに弾ける。

俺はそれには構わず、自分の右拳に全ての力を注げていた。俺の右拳が黒い念力を纏う。

「これで終わりにしてやる。"黒神(こくじん)の手"。これが俺の全てを賭けた技だ!」

俺は叫びながら紅にその拳を放つ。

「さっきは悪かったな。お前は期待以上だよ!」

紅はそう言い、紅も自分の拳に力を込める。

「"炎神(アグニ)の手"」

紅と俺の拳がぶつかり合う。

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

二つの大きな力により、それは爆発した。

俺と紅は厚労に激しく吹っ飛んだ。

俺はそこで意識がなくなった。


紅は意識をどうにか持っていた。

「やはり俺にはまだ勝てない。」

そう言いの残し、去ったのだった。


俺は保健室のベッドの上で目を覚ました。

目の前には結城や椿たちがいた。

「アッくん!大丈夫?」

結城が声をかけてきた。

「ああ…。」

俺は続ける。

「俺は負けたのか。」

俺は紅に勝てなかったのだ。

「悪い、少し外に出てくる。」

俺はそう言い残して、保健室を出て行った。


俺は弱い。このままじゃ誰も助けれない。

強くなりたい。力が欲しい。

俺の精神を捨てれば、黒血に俺の体を(むしば)まれそうだった。そうすれば強くなれるのかもしれない。だが、それはもう俺ではないだろう。

俺は俺としてみんなを守る。

それが悠人との約束だ。

今の俺が紅に勝つには一人じゃ無理だろう。

でも、俺は一人で勝たなければならない。

俺はみんなを守るために戦う。

それがたった一つの俺が俺として生きる理由だ。

それ以外はいらない。

俺がみんなを守る。もう守られるのは嫌だ。

だから俺は一人で強くなる。


この世界が滅びるとき、全ての生命は死ぬだろう。

それでも、俺が生きる理由は変わらない。

俺が俺として生きるため。

俺の前で誰も死なせないために。

それがどんなに難しかったとしても、可能なことを俺はやり続けるだろう。

俺は俺の命が尽きるまで、俺の前じゃ誰も死なせない。









最終的に「俺たちの戦いはこれからだ!」パターンで終わらせましたが、もしかすると書くかもしれません。

ありがとうございました。

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