初等科編27
「……クラトルくんは僕から見ても可愛い見た目をしてるよ? だと言え、クラトルくんが可愛いからと言って手加減するような、見た目に騙される奴らには少なくても見た目に騙されるなと良い経験になるんじゃないかなって思うし、クラトルくんに対して強いって印象を持つことになるだろうし、絶対に実力自体は負けないと思うよ」
と、呆然とただひたすらに考えごとをしていたはずのアルトくんが考えごとをし始めて十分くらい時間が経った頃、優しげな視線をしながらも何処か真剣さの含まれた視線を向けられて、話の脈略もなく急にそう言われた。
ああ、そう言えば十分くらい前に自分達の実力について話してたなぁー……とぼんやり考えながら、同時におじさんはアルトくんが思っているほどに強い訳でもないのだけど……とそう考えていたけど、それを言えばこの話が続きそうなのでとりあえず、褒められたことに対してお礼を言っておいた。
最早、他人に強く思われているか否か、なんてどうでも良いんだけど……、大切な人だけにおじさんの良さをわかっていてもらえていれば、それだけで構わないとそう考えていたら、アルトくんは急に時計を見てこう言ってきた。
「そろそろクラトルくん、称号者会議の時間じゃない? ノーリくんに声掛けて会議室に行った方が良いよ!」
にこやかに微笑んでそう教えてくれたアルトくんの言葉でやっと、旧体育館にある時計を見ればもう少しで称号者会議の時間になりそうだった。
時間を教えてくれたことに感謝をしつつ、おじさんはノーリのいる場所へと向かえば、相変わらずの仮面のような微笑みを浮かべながら絡んでくる女子の相手を紳士的にした後、もうすぐ称号者会議だからとそう言ってこちらへと向かって来たのだ。
「ナイスタイミングだ、クラ。休憩しようとしていたところを捕まってな、今まで通り冷たい態度をしてもクラが被害にあるだけだし、一線引いたような態度で接していれば、なかなか話が長引いて休憩させてくれないし、参ったよ」
そう言って、疲れたような表情を見せるノーリを労るような言葉を言いながら会議室に向かうのだった。
◇◆◇◆◇◆
「何処のクラスの子達も、雰囲気が恐ろしいことになっている今日この頃。我ら竜騎士称号者の可憐な美少女、クラトルくんは相変わらずの可憐さが凄すぎる件について話し合いましょうではないですか!」
まるで芸術を語るかのように、口説くような甘い声でそう言うジーシェ先輩に対して苦笑いをする。
ジーシェ先輩は男子生徒で美人系、可愛い系、美少女系、可憐系とか男子とは思えない人を見つけるとこう言う状態になるようで、恋愛的な意味合いで見ている訳じゃないのはわかるから最近はそう言われても平気にはなってきたけどぉ、おじさんについて話し合うのは遠慮して欲しいかなって思ったり?
と、そう考えていれば気配を消して、ジーシェ先輩の背後にトーゴ先輩が立った後、何処から取り出したのか未だに不明なハリセンを手に握りしめ、思わずいい音が鳴ったなぁと考えてしまうくらいに勢い良く、頭を叩いていた。
画用紙くらいの厚さで作られたハリセンだけど、トーゴ先輩が使えば凶器となるのか、あまりの痛さに机に額をぶつけたジーシェ先輩は二重の意味でとても痛そうだった。
痛さで悶えているうちにトーゴ先輩は、
「今の発言はこの若干変態な先輩の発言は冗談だから、ご安心を。
今日集まってもらったのは、他の学科では作戦会議と言う名目である。が、俺達は出ることに意義があると考えているからそこまで難しく考える必要はないと判断したからだ。
作戦は各学年の月の称号者が考えているだろうから、君達を信頼していると言う意味でも何も口出しをするつもりがないとも、そう考えてくれても良い。
そして特にクラトル、君は色々な意味で名前が知られてしまっている。
クラトルもそうだが、あまりにいる称号者は気を張って武道祭に挑んでくれればそれで良いとそう考えている。
竜騎士科はどう言う状態でどう対処出来たのか、それを見て判断する!
勝敗に拘るな、勝敗で誰かに優っていると見せつけるのではなく、例え負けても観客に竜騎士も凄かったねと言われるような魅せれる戦いをしろ! 戦場ではなく、祭りなんだからな」
そう言った後、トーゴ先輩はニカッと歯を見せるように笑ったのだった。
おじさんはそんなトーゴ先輩の言葉に思わず感心していると……、たまたま視線の向けた先にはハルク先輩がいて、ぼんやりと双子の兄である先輩を見つめていたのがわかってしまった。そんな様子を見て本当に二人は仲良しだなぁとそう思った。
◇◆◇◆◇◆
それから武道祭までの数週間、鍛練を重ね、万全の体調を調えた。
そして武道祭四日目、アルトくんも二日目で好成績を残し、おじさんも親友の嬉しそうな姿を見れて大満足だし、今日はとても上機嫌なのですよぅ!
さてさて、一回戦目の相手は魔法医師科との対戦なのよぅ。ちなみにシィ達魔法騎士科は騎士科との対戦となってます。魔法科は魔法研究科と科学研究科の合同チームの代表者五人との対戦らしいわぁ。
一回戦勝てば、竜騎士科は二回戦では魔法科と当たるらしいけど、おじさんにとってはとても戦いやすい相手が二回戦に来てくれて良かったと思う〜。
「対戦相手はクラの予想通りだったな、作戦通りの戦い方で頼む」
と、久し振りに着た月のモチーフの動きやすく出来ているワンピースドレスの身嗜みを整えているおじさんの代わりに、場を仕切ってくれているノーリの言葉に、ナナセくんは戦闘モードに入っているのか、ああと一言だけそう言って、リースちゃんとアンリちゃんの二人は無言のまま素直に頷いた。
その様子を見て、身嗜みを整え終わったおじさんは数回頷き、
「油断しないで、冷静に対応していきましょ。ある意味戦い辛い相手だから」
そう声を掛けた後、戦いの場となる会場へと入って行くのだった。




