初等科編25
「おじさんはしばらく恋はしないよ、あの男にされたことには痛い目にあったからねぇ。しばらくあの目を向けられるのは……、こりごりなんだよ」
遠い目をしながらおじさんがそう言えば、ノーリはその子にはそう忠告しておくとそう言ってくれた。
ノーリにしては、その子のことを気にかけるものだとそう考えていれば、普段通りの作ったような微笑みを浮かべられて真意を探ることが出来なかった。
まあ、ノーリがおじさんが嫌がることをする訳がないんだけどね? 過保護過ぎるのがたまに傷なのよねー……とそう考えていると、ルト先生がおじさんに近づいてきてこう言った。
「クラトル、お前は中等科に入ったら戦闘時の指揮の取り方を学ぶべきだ。
クラトルが所持する情報量は俺が想像するよりも膨大な量があるんだろうと思う。……しかも、それを手が腫れるまで書き続け、その方法で覚えたとなればきっとお前はその情報量を忘れることはないんだろうなと思う。それにその情報量を上手く使い、戦っているのもまた事実、軍師には向いていないものの……、戦闘時の指揮の取り方を学んだ方がお前は良いと思う」
そう言葉にしたルト先生はとても真剣で、おじさんは圧倒された。
面倒くさがりなルト先生がここまで思いがこもっていて真剣な声色で、表情をして言ってくれているなら軍師の授業を受けようと思えた。……授業を受けるなら、元情報屋であるからこそ本気でね、その授業を受けるけれどねとそう考えた後、本心からの笑顔で静かにこう言ったの。
「ルト先生の言う通りおじさんは、軍師には向いてないと思うけど、年上のアドバイスは聞いておくもんだと聞いたから、中等科に入ったらちゃんとその授業を受けますよ」
素直に他人の言葉を受け入れたことが驚きだったらしい、ルト先生は普段通りに面倒くさそうの雰囲気を出しながらも驚きからか、目を見開いていた。
そんなにおじさんって我が強いかなぁ……と思った瞬間、満足したのかシィが抱きしめるのをやめた時、ルト先生は歯を見せて笑って見せた後、こう言う。
「……授業受けてくれるなら良いんだ、クラトルにとって軍師の授業はきっといつか役に立つ時がくると思うから、素直に提案を受け入れてくれて嬉しいよ」
このルト先生の言葉を素直に受け入れといて良かったと本当に思う時がくるなんてこの時は思っていなかった。
◇◆◇◆◇◆
あれから数ヶ月が経ち、武道祭までちょうど一ヶ月前になった時のこと。
警備をする範囲の計画をするため、竜騎士や魔法騎士の人達が出入りするようになった今日この頃。
姫様のご厚意か、おじさん達と顔見知りばかりの人達ばかりで安心した。
勿論、竜騎士や魔法騎士の皆さんの本職は王族の警備で、配属された人数自体は少なかったものの、それ以上に警備の人数が少なかった体育祭よりは安全性は高まっているだろうね。
父上は保護者として参加するから警備はしないものの、折り畳み式の武器は持ち歩いとくからとそう言われ、あの出来事で余計に気を張らせることになってしまって申し訳ないともおじさんが感じた瞬間、トールに遠慮がちに背中を蹴られて保護者やその家族が子供を守りたいと思うのは当たり前だとそう言ってくれたので、申し訳ないと思うのではなく、感謝の気持ちを持って接しようと思ったのだった。
「クラトルくん、あまり一人で行動しないようにね? 申し訳ないけど、今回は女装することは避けられない。クラトルくんが可愛らしくて可憐だから、見惚れてしまう生徒もいるだろう、ここの生徒はそんなことをしないと信じたいが、万が一のことを考えて言っておく。そんな生徒が……いや、観客は生徒だけじゃないし、信頼出来る人意外はあの出来事のような行動をしないとは限らない、だからなるべくなら一人で行動をせずに観客に愛想を振り撒かないようにして」
と、考えごとをしながら武道祭の準備を手伝っていれば、背後から肩を叩かれたことには未だに身体を硬直させてしまったけれど、そう言葉をかけてくれたジーシェ先輩の声を聞いた時、自然と身体の硬直がとれたのは数ヶ月前よりかは成長したことの一つだけど、皆が武道祭の準備だけに集中しているから一人で行動出来ているものの、普段はやっぱり信頼している誰かが隣にいないと授業以外の時は耐えられないのが今の現状なのよねー……。
まあ、ノーリやアルトくんが側にいなくても、授業を受けられるようになっただけ成長したと思わないとね?
と、そう考えた後、皆が武道祭の準備だけに集中しているとは言え、一人で行動しているためかいつもなら自然に出来る営業スマイルが、少しだけ不自然になってしまったけど、準備で忙しくてそんなこと今は気にしてられなかった。
ジーシェ先輩のアドバイスに対して、ありがとうございますだけ言っておき、あとでノーリとちゃんとお礼しに行こうと内心で思い、準備に集中するのだった。




