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初等科編15

 時は少し経ち、六月になる少し前のことだった。初等科一年生であるおじさんと契約した竜、アオトとクロトとの絆が少しずつ深まっていっている中、体育祭の準備がだいぶ進み、今日も称号者会議に参加していた最中のことだった。

 相変わらずのブレない変人振りを見せるジーシェ先輩は、華麗にスライディングをした後、おじさんの前で土下座をして叫ぶようにこう言ってきた。


「竜騎士科の応援団をして、ラティーと共に女装をして下さい!」


 父上から紫髪の少女がどう行動するのか様子見をすると聞いてから、大した目立った行動を見せない紫髪の少女に安堵し、今まで平和な生活をしてきたと言うのにその平和をぶち壊すような発言をされ、おじさんは思わず長机を真っ二つに叩き壊した後、ニコッと満面の笑みを浮かべてこう聞いた。


「今……、何を言いやがりましたかぁ? おじさんに女装しろと言ったのは、聞き間違いだったかもしれないので、もう一度言ってみやがれです」

「イエ、ナンデモナイデス、ハイ。じょっ、女装はただのジョークです、ジョーク! クラトルくんには競技に参加しないで、応援団に入って頂きたく思いまして、駄目でしょうか?」


 隣に座るノーリの殺気もあってか、ジーシェ先輩は青ざめた顔をしながらそうそう質問に対して答えていたのを見て、女装をして欲しいのは本心からだろうなぁー……とわかりつつもおじさんは、ジョークと言うことにしておいてあげようと違う話へと反らそうと口を開く。

「あーあ、長机壊れてしまいましたぁ。どうしましょうかねぇ」

 と、別に意味もなくそう言ったつもりがジーシェ先輩は別の意味でとらえてしまったようで……、

「ハイ、喜んで私が弁償させて頂きます」

 と、何故か頼んでいないのにそう言われ、おじさんは営業スマイルを浮かべながら首を傾げていれば、ラティー先輩は何が面白かったのか理解出来ないけど、クスクスと笑っていた。


 そんな様子を見て笑っているラティー先輩を、不思議な人だと思いながら眺めた後、まあ応援団に入るくらいなら妥協してあげても良いかなと思ったおじさんは、はあとわざとらしく大きなため息をついた後、こう言ったの。

「まあ良いでしょう、応援団くらいは入ってあげます。その代わり! おじさんは絶対に、絶対に人前では女装をしたりはしないんですからね!

女装自体には抵抗はありませんが、シィやノーリが好きな女子生徒に嫉妬の視線を向けられてまでもしたいとは思いませんからね! もし、約束を破れば……地面が割れるくらいの覚悟はしておいてくださいね、勿論弁償するのはジーシェ先輩です」

 と、そう言えば血が通ってないんじゃないかと思うくらいにジーシェ先輩は顔を真っ白にさせて、ひたすら必死に首を縦に振っているから思わず、クスリと笑ってしまった。


 嫉妬の視線だけは耐えられないのよねぇ、普通に男子制服を着ていても嫉妬されるのよ? ならどんな服を着ろと言うの、教えて欲しいくらいだわ!

 もういっそのこと、開き直って女装してしまえば良いって言うの?

 と、そう考えているとジーシェ先輩は恐る恐ると言った様子で、おじさんに対してこう言ってきた。


「でも、武道祭では女装しなくてはいけないかもしれませんよ……?

今年からの決まりで称号者の部門では、一人の生徒を護りながら戦うらしいですから、君達五人の中ではその役目が一番向いているのは恐らくクラトルくんだと思いますが……?」


 おじさんはキョロキョロと他の皆の顔を見れば、目があった瞬間、あからさまに目が反らされたから、少しだけショックに思いながらも強気にこう言う。

「その時はその時です! その時になってから考えます、今は体育祭の話でしょう? とりあえず体育祭ではおじさんは女装しませんからね! 百歩譲って応援団には入りますけど、体育祭では女装しないことだけは忘れないでくださいよ!?」

 と、そう言えば、再びひたすら何度も何度も頷いているジーシェ先輩。


 顔色が悪くなるくらいにおじさんはそこまで殺気を出しているつもりはないんだけど……と考えていると、初等科に入学してから二日目の初めての称号者会議のことを思い出し、ジーシェ先輩にもう少し反論することにした。

「そう言えば時間内に相手を気絶させないと、平等に判断出来る生徒が勝敗を決めるって言っていたじゃないですか! ……そんなルール、おじさんは聞いてませんけどぉ!」

 と、そう言えば周りからああ確かに、そう言えばそうだったと言う声が聞こえてきて、どういうことなんですか? と壊れた長机をまたいでジーシェ先輩の顔を覗き込めば、真っ青な顔が戻り、何故か照れたような素振りを見せてきた後、いつもの口説くような口調でこう言ってきた。


「称号者の中で一人の生徒を護りながら、時間内に相手側の称号者達を気絶させる……それが新たな武道祭の称号者部門のルールとなりました! 決まったのはつい先日のこと、知らなくて当然なのです! 理事長と合法的に称号者の中に多々いる可愛らしい生徒を女装させるのか、話し合った結果で出来た新ルールです」

 出来れば、その新ルールが出来た理由は教えて欲しくなったなとそう思った。

 後でノーリに慰めてもらおうとそう考えながら営業スマイルをして、さっき皆から目を反らされたことについて、おじさんは何とかショックを受けていることを表情に出さないように隠していると、ラティー先輩はこう言ってくれた。


「本人が嫌がっているんだし、当日クラトル後輩の衣装が女物だったら、ジーシェを許さないからね?」


 おじさんの味方をしてくれたのは、ラティー先輩だけだった。後で覚えておいてよ、ノーリ? 拗ねて困らせてやるんだから、覚悟しておいてよね!



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