表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/99

おじさんね、自分の加護を知ったの。

 ガタガタ震えながら、自分の母上に抱きつく男の子を眺めつつ、おじさんは母上の元へと駆け寄り、無表情を浮かべていた。

 あの紫色の水晶の中には、涙を頬を伝わせたまま眠る一人の少女がいたのをおじさんは見てしまった。

 なんて、残酷なことをしたんだと思ったよ。……例え、少女が望んだとしても死ぬことさえも許されないだなんて。

 おじさんはね、死ぬことは怖くないの。

 おじさんは、何よりも人生の終わりがないことの方が怖いよ。

 あの水晶の中にいる少女は、きっと生きている。長い時間、一人水晶の中で生き続けていたんだ。誰にも話すことは許されない、孤独な空間で。

 それを、あの男の子は訳もわからないまま感じ取ったのだろう、……長い時間の少女の孤独を……。


 怖いよね、おじさんも怖いよ。……計りきれないだろう、あの水晶の少女の孤独が怖くて怖くてたまらないよ。

 それとね、何故おじさんがあの水晶に目を奪われた理由わかったの……。

 あの少女の涙は絶望の涙じゃなく、誰かの幸せを祈る涙のような気がして。考えることが出来ないくらいの孤独の中で、誰かの幸せを祈ることの出来る少女の心があまりに綺麗で、おじさんはあの水晶に目を奪われていたんだと思う。

 だから、あの神父は早くこの教会から出ろと言ったんだね。……あの少女は水晶から解き放ってしまえば、思いやりのある彼女でなくなってしまうような気がしてならないんだ。

 あの少女に惚れて、側にいることを望んでしまう前に……、この教会から出なければならなかったんだね。……でも手遅れかもね、運命とは残酷だから。

 彼女に惚れてしまって、……側に居たいと望んでしまっている人がもう、いるかもしれないね。……おじさんの考えすぎだと良いのだけど。


◇◆◇◆◇◆


 屋敷へと帰る途中、神父に渡された手紙を読んで見た瞬間、おじさんは思わず苦笑をしてしまったの。

 この世界の住人だったら加護は必ずしも持っている。平均的には五個から六個とされているらしいの。おじさんは平均的で六個だったよぉ!

 加護のランクは五つで低い順に言っていくが護られし者、好かれた者、愛された者、溺愛された者、心酔されし者だ。

 愛された者、溺愛された者、心酔されし者の力の差を言葉にすれば、愛された者の加護だったら努力を忘れなかったらそれなりに強くなるんじゃね? ぐらいの加護。溺愛された者だと、まあ努力をしなくてもそれなりに強いけど、努力をすれば最強とまでは言えないけど、なかなか強くなるんじゃね? くらいの加護だと本には綴られていたと思う。

 心酔されし者は、産まれたと同時にわかるらしい。必ずしも、魔力が器に収まりきらず暴発させてしまうから。この加護は、何十万もの軍を一人で倒してしまうくらいの強力な加護だとそう言われている。


 おじさんの加護は影の精霊に愛された者、情報に溺愛された者、天の歌姫に愛された者、大地の精霊に愛された者、龍神に愛された者、天の気まぐれに溺愛された者の六個。

 ちなみに大地に愛された者とは水、土、植物の三属性を得意とするらしいよ! 読んだ本に、何個かの加護についての説明が載っていたんだけど……それに書いてあったし。

 それから、天の気まぐれは何らかの神の気まぐれで良いことがあったり、予想外の展開が起こることの多い加護なんだって!

 それと、天の歌姫に愛された者は“声”に力がある者に授けられた加護。本によると、なかなか珍しい加護なんだってさぁ! 目立たないようにあまり使わないようにしよっと。あっ、でもこれでおじさんの演技力も上がるねぇ!

 と、そう考えていると、母上が横からおじさんの加護について綴られた手紙を眺めた後、静かにこう言った。


「まあまあ良い加護じゃないの? その加護を活かせるように頑張ってね」

 と、そう言葉にした後、途中で馬車を止め、本屋で大量の本を注文していた姿を見て、おじさんは、

 ――わーい! たくさん本が読めるぅ!

 と、のんきにそう内心で喜んでいたのであった。……心地好い暖かさに包まれる春の出来事だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ