おじさんの穏やかな日々6
おじさんは“なかなか強い”って部類に入る、けして最強ではない。
恐らく、と言うより確実におじさんより実力のある人はナナセくんがそう簡単に魔力が暴走しないと気づいていたはず、……そう父上が気づけたように。
この会場にいる一部の人達は恐れたような視線も、嫉妬心を抱いたような視線も、ナナセくんに全く向けてはいなかった。
あえて、“一部の人は除く”と言わなかったのかと言えば、あくまでも“なかなか強い”くらいのおじさんの実力を過大評価されるのも困るしぃ〜、ジークさんが来るのもわかってたから、そのことについては任せることにした訳よ。
……そんなことより第一印象が大切だと言うのに、おじさんったら失敗しちゃったわぁ。腹黒って思われても仕方がないよね、本当はマイペースでほわほわしている性格なのにね。
まあ。いいわ、とそう思いつつ、長文を話したせいで喉の渇きを感じたため、二杯目の飲み物に手を伸ばしたと同時に、パーティー会場にある壇上にとある男性が現れ、それに続くように三十人くらい代表者専用の制服を来た生徒が姿を現した。
中でも、目に入ったのは同じく竜騎士科で、月の称号を持つ男子生徒の姿だった。思わず呆然と眺めていると、パチッと目が合い、おじさんに向けて微笑まれたような気がした。
おじさんは理事長先生の話を聞き流しつつ、周りを観察していると……、
「それでは呼ばれたごとに、壇上にいる生徒達の案内に従い、個室に移動して自己紹介をして下さい。……まずは魔法医療科の生徒の皆さんから移動を開始します」
と、そう言う理事長先生の声が聞こえて来たため、おじさんは周りを観察することをやめたのだった。
◇◆◇◆◇◆
個室に移動し、再び呆然と立ち尽くしていれば一人の男子生徒がこう言う。
「……ぼんやりとしてても時間の無駄。初めまして、水の称号を与えられているノリト エーラだ。よろしく頼む」
と、はっきりした口調でそう言った。
ノリトくんは凄い男前で、キリッとした目がより男前度をあげ、しかもおじさんよりも身長が頭一個分高いとかずるいです。でも、是非とも仲良くして欲しい感じではあるのね〜。
と、そう考えていると、次にナナセくんが自己紹介をし始める。
「……初めまして、ナナセ シードと言います。称号は夜の称号です。……よろしくお願いします」
ナナセくんがそう言った後、すぐに、
「おじさんはクラトル キリシアって言います。与えられている称号は月の称号です。これからよろしくお願いします。そうそう、さきほどはお騒がせしましたぁ、ごめんね〜?」
と、そう自己紹介をすれば続けて、残りの代表者二人が自己紹介をする。
「私は太陽の称号者のリース ハルト。よろしくお願いします」
と、ロングヘアーの紅の髪をした、若干つり目の美人さんがそう自己紹介をした後、もう一人の代表者である金髪でショートカットのたれ目で、おっとりしたような可愛い系の容姿をした女の子がこう自己紹介をした。
「初めまして、私は風の称号者のアンリ ランと言います。よろしくね」
そんな二人の自己紹介を終わった頃を見計らい、おじさんは四人にバレないように少しずつ移動した後、ノリトくんに勢い良く抱きついた。
急に抱きついてきたおじさんを、「ぅおう!」と謎の言葉を発しながら受け止め、急に抱きついてきたことを若干の戸惑いの表情を浮かべつつも、怒りもせずにノリトくんは優しく、ゆっくりとした動作で頭を撫でてくれる。
――見た目も男前で、中身も男前だと!?
そんなことを考えながらおじさんは、暫くノリトくんに抱きついていれば、当本人は苦笑するように笑っているだけだった。




