愛が欲しい訳じゃないんだ
別に、恋人が欲しい訳じゃなかったんだ。
「何で?」ってみんな言うけど、「恋がしたい訳じゃない」と理由を述べていつも煙に巻いていた。
妙に頭を撫でられている猫や犬が羨ましいと思えた。
別に可愛いものは嫌いじゃなかったけど、自然に動物は嫌いになった。
親に頭を撫でられている子供が羨ましいを思えた。
別に愛されていないと感じているわけじゃなかったけど、自然に子供は嫌いになった。
そう僕もね。
「何で?」って?僕が少し嫉妬深かっただけさ。
赤い液体が別に好きなわけじゃなかったけど、自然にそれが愛おしく思えた。
愛なんて大それたモノは赤い液体よりドロドロとただ重いだけで。
誰かの隣に居て良いという了解が欲しかっただけの僕は、いつも一人で悲しんでいた。
誰も僕を愛さないでください。
ただ、傍に居てください。
そうすれば僕は、誰も嫌いにならないで済むだろうから。
隣に誰も居ない事が普通だった。
「人間は誰しも一人だ」なんて愛を知った大人の言葉のようで、大人が嫌いになった。
大人に成り切れない中途半端な僕は。
自分が一番嫌いで、独りぼっちで居たくなった。
「人間は誰しも一人だ」
なんて
「裏切られたから分かったことでしょう?」
「誰か助けてよ?」
冷めた笑顔でそういいながら微笑んで。
真っ赤に染まった爪先でただ掻き毟った。