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二話 テンプレ転生

俺の背中に草のくすぐったい感じが伝わってきた。

なにかと思って起き上がってみれば、丘の様な所に俺は寝ていたようだ。


「あれ? まさかまた自殺失敗?」


あれだけ心の中で恰好つけといてそれはないだろ!と心の中で叫んだが、異変に気付いた。

ここは俺が自殺した場所じゃない。

あそこは森の中で、周りには高い木が俺を囲っていたはず。丘の上で、さらになにもないところというのは釈然としない。


「これは夢か?」


実は俺は眠っていて、さっきの自殺も夢。今の状況も夢。

そう考えるのは早いかと思う。

流石に俺が夢と現実を見分けられない奴だとは思いたくない。そのまで頭はやられてないはずだ。

そうしたら今の状況はどうなるか。

もしかしたら今までが夢で、たった今目覚めたか。

そうなると、今までの事が夢だと気付かない俺は結局おかしいということになるし、あんなに長い夢をみるのは現実的ではない。

換算するとしめて16年。あり得ない。


「だとしたら、どうなってる? 地球のどこだここは」


必死にここに来る前のことを思い出そうとするが、俺が最後に自殺したということ以外思い出せない。

というより今思えば俺が生きていること事態おかしい。

身体に密着した状態で爆弾が爆発したのだ。死ななかったら俺はなんだというのか。

それこそ、周りから言われていたみたいな化け物じゃないか。

と、ふと視界におかしなものが入ってきた。

それは羽が虹色に輝くカラス?の様な鳥だった。


「なんっじゃありゃ・・・・・!」


そのカラスが虹色をしているというだけでおかしいのに、異様にデカい。

ゆうに5m位あるだろうか。

名付けるなら怪虹カラスといったところか。

あんな鳥居たっけ?

その鳥は超的なスピードで飛び去っていき、すぐに姿が見えなくなった。

飛んだあとには俺に風が吹き抜ける。

常人なら立っているのが困難なくらいの風だった。


「いやいやおかしいだろなんだこれふざけんなよマジで常識的に考えられないから」


思わず言葉を連立してしまった。

俺が取り乱すことは無かったのだが、それだけインパクトがあったということ。

あんな鳥が常時飛んでたら町とかは常にあの風を受けないといけないのか。大変だな。


「ふぅ。ちょっと真面目に考えてみるか」


その場に座り込んだ。


「まずはここはどこだという事についてだが」


俺が自殺に失敗したのは100%あり得ない。1ヶ月考えて、物理的にも実験してあの方法を選んだのだから。

だとしたら、誰かが蘇生でもしてくれないと俺が生きていること事態おかしいが、それは一端置いておこう。

死んだのならまずひとつ、ここは死後の世界。

死んだ後にどうなるかという疑問は誰でも持っている。

それは誰にも確かめられないし、確かめようにも死んだら話せなくなるから実験は無理だ。

実験出来ていたら、今頃そんな疑問の答えは一般常識化していただろう。

以下の結論より、ここが死後の世界である確率は10%。

考えがぶっ飛んでる分、10%でも多い方だ。

そしてふたつ、ここは現実である。

これが一番現実的な考えであり、可能性は高い様に思える。

だが確実に死ぬはずだった自殺で死ねず、さらにさっきのカラスのことを考えるとやはり現実であるとは考えにくい。

自殺はただ俺の計算ミスだと言えば論破されるが、怪虹カラスの方は無理だ。

よって、ここが現実である可能性は40%。

そしてみっつ、ここは異世界である。

この考えは、さっきから浮かんではいたが、俺に植えつけられた常識がその考えを正しいと判定するのを拒んでいた。

だが冷静に前のふたつの可能性を考えてみると、これは今一番説得力がある、ような気がする。

これなら、考えられなくもない。

パラレルワールドと考えれば、今日さっき死んだのはこっちの世界の俺の精神で、爆発が起こる前には俺と入れ替わっていた。

そして俺はこっちの俺の身体に乗り移ったという訳だ。

結局現実的ではないし、精神論になる身も蓋も無い考えだが、これが一番しっくり来る。

怪虹カラスだって、こっちの世界の進化の結果かもしれない。

全てが説明される。

似た考えの死後の世界という考えは、ちょっと考えられるかもと思ったが、無理だとすぐに気づいた。

そもそも人が行動できるのは、脳から命令が送られてくるからだ。

決して魂などの空想論ではない。

だとしたら、絶命した瞬間にその人の人生は終わる。

こうやって考えれば死後の世界など絶対にないと分かってしまう。


「結論。ここは異世界である可能性が高い」


現実主義の俺でもこう考えざるおえない。

それだけ今俺には疑問が山積みだ。


「そして次に、これからどうするかということだが」


俺が自殺したのは、世界のシステムに絶望したからだ。

人の感情にも絶望はしていたが、人が苦しめられるシステムなどあってはならない。

だとしたら、ここでまた自殺をするのは早計だろう。

この世界は俺はパラレルワールドのようなものだと考えているから、地球とは全然違う可能性もある。

だからひとまず、生活してみるのがいいのかもしれないな。


「そうと決まったら、早速人を探すか」


方位磁石も無い状態だが、もしここが異世界なら持っていても無いようなものだ。

どこに向かって進めばいいのかも分からないのだから。

つまり、自分の勘を頼るしかないということだ。


「そういえば、今まで考えてたから意識しなかったが地形はどうなってんだ?」


疑問に思ったからには確かめずにいられない。

丘の頂上まで一気に登って、初めてこの世界を見渡した。


「って、なんじゃこれ!」


目の前に映った光景は、地球じゃ絶対に見られないものだった。

何キロ先にあるか想像も出来ない大きく高い山脈。

そこから流れる何本もの川。枝分かれしていて、蜘蛛の巣みたいな感じになっている。

そして広い平野。一体何百万平方キロメートルあるのかと問いたくなる。

そこを駆けるシカやキリンの様な動物。もちろん色違い。翼の生えた馬がいたりするのは置いといて。

その平野の中央に大きな塀で囲われた大きな街。

現代に塀で囲まれた大きな街があるなんて聞いた事がない。実際にはあるかもしれないが、俺の目の前にあるというのが驚きだ。

ゲームや小説のにわか知識だと、あそこが帝都だったりするかもしれない。

とにかく町があると分かったのだからそこに向かおう。


「歩くと自然が分かるモンだな~」


ゆっくりと歩いていると、この自然の凄さに改めて驚かされる。

高さ100mもありそうな樹木、紅色の水が落ちる音が轟く滝、銀色の粒子をまき散らす花。

どれも現実ではありえないものばかりで、おもわず目で追ってしまう。

時には二足歩行のうさぎが2匹いちゃついていたりしていたのだが、それも微笑ましい光景に思える。

もしかして、異世界なら魔物とか居るのだろうか。魔物がいるなら魔法もあるかもしれないし。今俺が襲われたら勝ち目ってあるのかな。


しばらく歩いた。

だが、全然町は近づいた気にならない。

疲労は感じないが、これは精神的にくる。

空も暗くなってきたし、そろそろどうにかしないといけないと思った。

日本で育った俺にはサバイバルの知識など皆無だ。

洞窟などあれば、なんとか果物を見つけて生きていけそうだがな。

だから俺は洞窟を探すことにする。

森の方に入ると、そこはジャングルだった。

長いつるが垂れた木や群れを成した動物など色々な光景。

今日一日で驚いたのは何回だろうか。


「そろそろ見えてほしいな」


さらに歩いて1時間。

遂に大きな岩に空いたそれなりの穴を見つけた。それは俺ひとりなら簡単に入れそうな穴で、今日の俺の家に決まった。

幸い中に動物は居ない。食べた後らしい骨も見当たらない辺り、ここは動物には案外住みにくいのかもしれない。

ここならなんとか一晩くらいなら泊まれるか。


「あとは食料だが、今日はあんまり動かない方がいいか」


方角も分からない今の状況じゃ、この穴も分からなくなってしまう可能性がある。

だったら、明日町に行く途中で朝食がてら取るのが良いかもしれない。


「ま、ここじゃ落ち着いて眠れないだろうけどな」


地面が岩でゴツゴツしている状況では安眠は無理。一眠り程度に使うことになるだろうけどな。

こういう時はあの世界のベッドが恋しい。

だが、今は仕方ないと眠りにつく。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『・・・を忘れ・・・』


なんだこの声。なにかが聞こえる。


『・・・れを忘れ・・・』


聞こえないよ。もっとはっきり言ってくれ。

疲れてるんだし。


『じゃあな』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


朝になる。

やはり景色は無機質な洞窟から変わっていない。

昨日の俺が狂っていたわけではないと分かる。

時間はいくらでもあるが、空腹は耐え難い。早速出発するとしよう。

歩いていると紫色のパイナップルや黒色のみかんなど色々あったが、なぜか食う気になれなかった。

色が変わるだけでここまで変わるとは、前の世界も余計な固定概念を植えつけてくれたものだ。


「ここまでなにもないと、今日中までに街に辿り着くかしないとな」


そう思った時、風に乗ってなにかが聞こえた気がした。


「なんだ今の。キャーとかギャーとか」


こんな朝っぱらからなにをしているのかと日本人なら思うが、今はありがたい。

人がいるならその人に色々教えてもらうのが良い。

流石に俺みたいな境遇の奴がそこら辺に居る訳ない。ならこれはこの世界の人間の声だ。

俺は目的地を声の主のところに定めて、全力で駆けだした。

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