十七話 脅しには年の功も関係あると思う
お久です! 遂に投稿再開します!
まぁ前のように投稿という訳にいかないかもしれませんが、それなりに頑張っていきます。
さて、大陸を移してのリョーカの旅も遂に街に入りました。
まぁすぐに出ていきそうですが。多分この話の次かその次くらいに。
つーかもう本体の俺はテンション⤴⤴です!
今度ともよろしくです。
色々あったのだが、なにくわぬ顔でギルドに戻ってきた。
ミリーとリューシアが心配そうに寄ってきたが、ミリーは俺が無傷だったので大体のことを推測したようだ。シェリルは本気で心配してくれてるんだけどさ。
「だだだ、大丈夫だったお兄ちゃん!」
「大丈夫だからさ、一旦落ち着こうかうん」
「心配、してたんだけど。その様子だと、あの人たちの方が、これから仕事出来るか分からない」
「確かにな。ま、そこは俺に突っかかってきたのがあいつらの運の尽きって事で」
新人いびりなど餓鬼の様な事をする方が悪い。
事の発端は受付嬢の人達も見ていたはずだから大丈夫だと思うのだが。まさかこれが原因で早速解雇ってことにならないだろうな。
そんな事したら大規模な抗議をしてやろう。
「お父さんが戻ってくるまでに、私たちが受けられそうな依頼を選んでおいた」
そう言ってミリーは一枚の紙を差し出してきた。
そこには下手な絵でなにかが書いてあり、依頼内容は、
「森砂漠でウズマキ草の採取、か」
さっぱり分からん。
そもそもなんだ森砂漠って。想像も出来ん。これがファンタジーの力なのか。
採取依頼というのは俺も賛成だ。リューシアがいるし、慣れるまではあまりモンスターと戦ってほしくないし。
ランクはD。基準は分からないけど、最低がGだったから中間くらいだろう。
「ま、大丈夫か。採取依頼なら失敗なんてないしな」
「そう。新人は大体、最初は採取依頼をして、経験を積む。お父さんならSSSランクにも勝てそう、だけど」
「それは分からないな。俺はランク指定されたモンスターと戦ったことがないからSSSランクのモンスターがどれほどか知らねぇし」
「? お兄ちゃんどこかに出かけるの? 私も行くよ?」
「そうだなー。でも今からじゃないぞ?」
「ん? 今から行かないの?」
「おいおいお前それでも冒険者やってたのか? 今日この街に着いたばかりで、さらに旅支度もしていない。そんなんで『砂漠』なんて不吉な単語が付く場所に行けるかって」
港町で馬車に乗るだけでもあれだけの準備をしたんだぞ。俺の心配性を舐めるな!
あの時買った物の再利用は出来るものもあるんだけど。
「だから、今日はひとまず旅の準備して、そして宿に泊まって。出発は明日だな」
「そう。納得した」
さーてと。じゃあ早速街に繰り出して……
「お待ちくださいリョーカ様」
後ろからいきなり呼ばれた。この声はさっきの受付嬢の人だ。なぜか声のトーンがさっきより極端に低くなっている様な気がするのだが、気のせい?
「なん、でしょうか?」
「マスターがお呼びです。(入った直後に問題起こしやがって。処理するのはこっちなんだぞ)」
なにか怖い独り言が聞こえてきたんだけど、これは気のせいじゃないよね。
つーか明らかにこっちに聞かせるつもりで言いやがったこの人! 受付に居た時とキャラが違いすぎ……。いや、こっちが本性なのか。
問題という事はさっきの事? 本当に初っ端からクビなのか!?
「あの、どこに行けば」
「受付の横に扉があるでしょう? そこを開けて二階に上がり、一番奥の部屋です」
スタスタと歩きながら背を向けられて言われた。扱いがぞんざいになっている。
あれ、視界が霞んできたなぁ。
受付の人に言われたとおりに進み、そしてひとつの大きな扉が見つかった。
ドアノブに手をかけるとギギギッと重たい音が聞こえてきた。相当年期を重ねている様だ。
「失礼しますっと。どうも」
「お、来たね。後ろのふたりは?」
「まあついてきたんです。気にしないで下さい」
広い部屋に居たのは、体格はすらっとしていてローブを纏い煙草?をふかしながらメガネのレンズの部分をキランッと光らせて窓の外を見ている男だった。なんとも会社の幹部クラスといった感じの雰囲気を出している。
いや、俺はもっと別の姿を予想していたよ? 例えばもうちょっと軽いノリで太ってて隣に斧とかごつい武器を置いている様な。こんないかにも仕事人間って感じの人は全く想像できなかったよまったく。不意打ちにも程がある。
「あの、入ったばかりの私に今日は何用で?」
「分かっているだろ? それに君だってこの窓からだと丸見えだったと今気づいたんじゃないかな?」
「あ、はい、すみません」
どうやらこのマスターはさっきの俺の所業を見ていたらしい。やっぱり怒られるのだろうか。
「怒るつもりはないんだよ。ただちょっとした注意と確認をと思ってね」
「注意と確認?」
「まずは注意からだね。君はギルドの状況を分かっているのか?」
「あ、えーと。いいえ、知りません」
「このギルドはね、冒険者の人数不足に悩んでいる。世界の至る所に根をはっているギルドは、それぞれのギルドでそれほど人数が取れないという状況にある。つまりはギルドの数が多すぎて、貴重な人間を割り振りすぎているということだよ。だからね、流石にさっきの君のしたことを見過ごすわけにはいかない。なんにん使い物にならなくなったか。〇〇〇が切り離された程度ならなんとかなるだろう。だが、耳や目をやられたのでは仕事をさせる訳にもいかない。はぁ、君は本当に困ったことをしてくれたね」
長い説教が一旦途切れたのだが、なんだこのここに居づらい雰囲気は。
それになんだリューシアとミリー! 「え、そこまで?」「そこまでやってるとは思わなかったよ」なんてことをヒソヒソ話してんじゃねえ! こっちに聞こえてない前提で話してるから指摘しづらいだろうが!
もういっそのこと綺麗に怒鳴ってくれた方が良い。というより怒鳴ってくださいマスターお願いします!
「ああやれやれこれからどうしよう。本当にどうしようもない。彼らは腐ってもCランクだったから使い道はあったんだけどねぇ。身体だけでなく精神までやられたら、ねぇ」
こっちになにかを企んでいる様な笑みを向けてきたやったよこの人!
「で私になにをしろと?」
「いや、ちょっとこの依頼を受けてほしいだけさ!」
元気に一片の曇りも無い笑顔だ。絶対今日これだけを狙って俺を部屋に呼びやがったなこいつ。俺の要注意人物のひとりに入れておこう。
依頼の内容は、バルケイトの周辺の街を襲っている魔物の掃討。それも一匹残らず。街の360度全ての場所に出向けと書いてあった。
つまりはあれだな。
「最近騒ぎになっていることですね。これを俺が解決しろと」
「そうだ。魔族も動いているとの噂だからね。生憎SSSランクの冒険者は今ソブラストライト大陸に言っている。アルダイトの横暴な収集命令のせいでね」
「(アルダイト?)
でもなんで私なのでしょうか。もっと適任の者も居ると思うのですが」
「君はギルドのマスターがエックスライも身に着けていないと思っているのかい?」
? エックスライってなんだ?
マスターがなんか知ってて当たり前みたいに言ってきたから世界の常識なんだろうか。俺の脳に情報をインプットしておこうと思う。
「あの、エックスライてなんですか?」
「君は―――――はぁ、まあいい。エックスライというのは端的に言うと魔力を見る力だよ」
「へぇ。それを持ってるってことは凄いことなんですか?」
「凄い、かな。エックスライを持っていたら単純計算でその人はSSSランク並みの力を持っているということになる」
俺って普通に使ってたんだが、そこまで凄い物だったとは思わなかった。
さらにSSSランクって。こりゃ色々な事情で黙っといた方がいいかな。
「黙っておいた方がいい、なんて思っただろ? 残念。君が使えるのはもう魔力を見たから知っている」
「それは本当に残念ですね」
「だから君にはこの依頼を受けてもらう。あ、これはあくまで罰だからランクアップとか無いよ?」
「分かってますよそのくらい。その依頼はこのふたりを連れていっても大丈夫でしょうか?」
後ろに控えているリューシアとミリーを指した。
マスターは顔をしかめてふたりを見る。恐らくだが、エックスライである程度の実力を見極めているのだろう。
「君はミリーだったね。Cランクの中でも上位に位置し、もうすぐランクアップの依頼を受けようか迷っていたところだ。君は良い。だが君は誰かな。魔力量は一般人と比べるまでも無いくらいにあるようだけど」
「私の妹です。今日一緒に登録したんですけど」
「なるほど。君がリューシアか」
マスターはまじまじとリューシアを見つめている。リューシアは戸惑っていたがそれでも目を離さない。
うん、マスターそろそろ見るのはやめよっか。そんなに俺の妹を見られているとKOROSHIたくなっちゃうじゃないですか。
「この子は貴重な人材だ。君がなんとしても護ると言うのなら連れていくことに私はなにも言わない」
「言われるまでもねぇよ」
「あ、やっと素の君を出したね」
「あ」
って、まあいいか。マスターだから儀礼的に敬語を使ってたけど、なんとしても敬語で話せって感じのマスターじゃないみたいだし、俺も敬語はストレスが溜まっていくところだったよ。
「今日はこれだけだ。じゃあ頼んだよ。依頼達成の報告はいつでもいいから。この街が襲われたら依頼失敗。罰金が発生するよ。その時は急いで駆け付けるんだ」
「押し付けた上に罰金とは。俺はゆっくりと冒険者ライフを送ろうと思ってたのに」
「君には時々個人的な依頼を受けてもらうから。これからもよろしくね」
笑顔でこっちに手を振ってくる。マジでムカついてくるから本当にやめてほしい。今すぐ斬りたい。アルテミスで貫きたい。
これから世話になるから一々文句言ってられないのが難点だな。
「はぁ。俺はただ自分の好きなように依頼を受けて金を稼ごうと思ってたのに。くそ、あいつマスターだからって職権乱用だろ」
「まぁ、マスターだから、偉い」
「お、お兄ちゃんが悪いんだよ。あの人たちの、その、アレを切り取ったなんて!」
「リューシア……」
ああ、可愛い妹に軽蔑の視線を向けられることになるとは。
俺はなんてトンデモないことをしてしまったんだ!
「で、これからどうする?」
「これからね。ひとまず一番近い村に行ってみるしかないだろ。幸い、ここから2時間も歩いたところにひとつあるし。そこで旅の支度をしよう。短期間でもハードな旅になりそうだしな」
確か聞いた話では魔物はバルケイトを中心に360度取り囲み、どんどん進軍してきているらしい。
予想ではあと5日も経たない内に、という噂もある。
5日というのは現代日本人からしたら相当な長旅だが、この世界からしたらまだ短いと思う。
5日という期間でこの大事を解決しろという依頼が悪い様な気がするが、処罰なだけに文句を言ったら首にされかねない。
マスターは他人を利用するような人だから首まではいかないまでも厳しいお仕置きというものが待っている可能性だってある。
マスターは魔物より恐ろしいと俺は思う。
「ただ、保険はかけておきたい。ミリー、悪いが先に雀の巣の宿とって休んでてくれるか?」
「なに、するつもり? 危ないこと?」
「え、お兄ちゃん危ないことするの!?」
「いやしねぇよ。言ったろ、保険をかけておくんだ」
そう、保険。
もし俺が依頼を失敗しそうになった時の保険をかけておく必要がある。
「すぐに終わると思う。じゃぁ後でな」
「雀の巣の場所知ってるの?」
「お前の魔力をエックスライ?で感知しとけば分かるだろ」
それだけ言い残して俺はふたりから離れて、街の外へ向かった。
街の大きさは直径10キロだそうだ。
これがなにを意味するのか、俺には少しだけ分かる。
俺も魔力が枯渇する可能性があるってことだ。
「10キロか。街の外壁から500メートルは離しておくとして、円周は単純計算で32キロほどか。じゃ、人がいない場所を探さないとな」
広くて外壁から500メートルは離れていて、人の通りが少ない場所。
ついでに街を見渡せる高い場所があったらいいな。
「お、あそこで良いか」
丁度良さそうな崖を見つけた。
普通の人間なら登れそうにないが、リューシアの言ってたアレを使えば。
「『蒼天を飛翔せよ 白雲を貫け ブラックウィング』」
詠唱を終えると、俺の背中には伝説上の悪魔の様な真っ黒の翼が生えていた。
リューシアと初めて会った時にリューシアは翼が千切られたから魔法で翼を作ってうんたらかんたらと言っていた。
同じ闇属性なら出来ると思ってはいたが、こうも簡単に出来るとは。
空を飛ぶと言う昔からの人類の夢を本格的に叶える時が来た。
「よっしゃ! 飛んでやるぜー!」
バサッと大きな音を立てて翼を開いた。
黒いながらも羽ばたくそれを見ていると、自分が鳥になった様だ。
まぁ、カラスが一番近い表現だというのが悔しいが。
「って、飛べてねぇ!」
これじゃぁただ翼を動かしているだけじゃねぇか!
「そうか、リューシアは元々空を飛ぶ種族だったから出来た訳で、飛び方を知らない俺が翼を生やしたところで飛べるわけないのか」
くそ、いつかリューシアに飛び方を教えてもらおうかな。
そうすりゃ移動も楽になるし。冬なんかは寒いだろうが。
「しょうがない。今日のところは諦めるか」
俺は手から魔力を放出し、塊をつくった。
そして俺はそれに飛び乗った。
「はぁ。孫悟空かよ」
文句を言いながらも高度を上げていく。
これも飛んでいることに変わりはないが、やはり何かが違う。
「よっと。さて、始めるか」
俺は籠手を外した。
それによって俺の周りには粒子が飛び交い、天に向かって黒い線が伸びていく。
これが人が居ない場所を探した理由だ。
人が居ないならエックスライを持っている、それこそマスターとかじゃないと感知できないだろう。
SSSランクの連中は今アルダイトに言っているというし。
感知できるのは一部の少数だけだ。
「『我の告げを聞け 聖地に踏み入る魔の者よ 幾千にも切り刻み どれだけ血に塗れても我は許しはしない エクスクルージョントラップ』」
俺は力いっぱい魔力を放出した。
俺の魔力は瞬く間にバルケイトを取り囲む。一部でもその大きさはエックスライを使える者なら即ぶっ倒れるだろう。
マスター大丈夫かな。
一般人がエックスライを使えなくて逆に良かった。
「はっ!」
バルケイトを取り囲んだ魔力は俺の指示に従って地面に浸透していく。
この魔法は対魔物と魔族専用排除トラップだ。
ただ魔物が大量に押し寄せると魔力は無くなりやがて魔法は消える。
いわば時間稼ぎの魔法だ。
「はぁ、はぁ。終わった。しかし、思ってたより疲れなかったな」
肩を回したり軽く飛んでみたりしているのだが別に苦ではない。
つくづく自分の魔力量に驚かされる。
「っとと、早く籠手を着けないと流石にばれるか」
地面に置いていた籠手を拾おうとする。
そう、拾おうとしたのだが、
『助けて』
(なんだ、これ……)
頭に響く声。
直接響くだけに相当痛い。
俺は頭を抱えてその場に蹲った。
(なんなんだよ。こっちに来てからロクな目にあった記憶が無いぞ!)
『我が同胞。我はここに居る』
自分に意識を集中させると、魔力に違和感を覚えた。
(他人の干渉を受けてる。そうか、俺の魔力に同調して話をしているのか)
だったらさっさと籠手を着けるまでだ。
俺はガンガンする頭を無視して籠手をはめた。
「俺の魔力に同調、か」
(まさか相手は魔族か? 俺の事を同胞って呼んでたし)
本来この世界では闇属性を持っているのは魔物と魔族だけ。
話しかけてきた奴が俺の闇属性を感じて仲間だと思い込んだ、とも考えられる。
(だったら相当近くに魔族が居るって事だな)
確か自分と同じ属性の魔力なら、近くなら感知できなくとも感じる事なら出来ると、カナンから貰った本に書いてあった様な記憶がある。
(俺の魔力が相当大きかった事を考えると、1キロまでなら感じられそうだな)
だったら、半径1キロのどこかに魔族が居るって事だ。
今起こっている魔物の大群の偵察隊か?
しかし
「『助けて』か……」