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旋律の闇色勇者(トラペゾへドロン)  作者: 傘ㇻ戯 エンリ
ヴェイング大陸バルケイト篇
16/28

十六話 バカ撃退マシーン リョーカ

やっぱりやりたくなるよねうん。異世界転生の定番。


想像力豊かな人は最後は《閲覧注意》 大丈夫だと思いますがね。

ババアからフリーパスを貰い、歩くこと五時間。ようやく帝都バルケイトに着いた。

そこは大きな城壁に囲まれている巨大な城の様だった。門もそれなりにデカい。恐らくは商人などが荷物を通す時に不便にならない様にするため。

そして俺の目を疑ったのは、その帝都を囲む檻。その中に入っている巨大な龍だ。いや、胴体もあるからドラゴンと言った方が良いのか。

とにかく帝都に着いた俺達は、早速街に入ることにする。


「パスを出せ」

「すみません。俺パス持ってないんです。代わりの物は持ってきました。これでパスを発行できるって聞いたんですけど」


そう言って俺はババアに貰ったフリーパスを出す。

そうするとなぜか騎士っぽい人の態度は心なしか柔らかくなった。


「そうか、ならちょっと待ってろ。発行してくる」


そう言って奥の建物に消えていった。

後ろに並んでいる人たちから怖い視線を感じる。「なんでパス持ってないんだよ」といった感じだろうか。俺はそんな視線気にしないけどな!

そうこうして視線にさらされている間に、騎士が戻ってきた。


「これがパスだ。もう失くすなよ」


どうやら騎士は俺がパスを失くしたか破損させたのだと思っているようだった。余計な詮索をされないから都合がいい。


「ありがとうございます」

「? 珍しい奴だな」

「なにが?」

「騎士に向かって礼を言うなんてしないぞ。俺達もこれが仕事だからやってるだけだし」

(いつの間にか口調が普通に柔らかくなってやがる)


そうして俺は門をくぐった。

帝都に入ると、そこの光景は最初に異世界に来た時の光景とはまた違う驚きを俺に与えた。

帝都の中には人間が大多数いるのだが、獣族っぽく頭に耳を生やした奴も居る。というより獣族ってほとんど人間じゃねえか。これなら人間が獣族の王を務めたこともあるという話もあながち嘘じゃないかもしれない。

もしそうなら人間と獣族のハーフとかも居るだろう。

そして一番驚いたのは飛び交う言葉の多さと、大きさだった。明らかに港町の活気とは比べ物にならないほどの雰囲気。


「すげえな」

「ここは、帝都で一番、端っこの方。中央に行けば、もっと凄い」

「私はここ始めて来たなぁ。お兄ちゃんあのお店なんだろう!」


リューシアが興味津々で街を見回す。そのままじゃ気づかない内にどこかに行ってしまいそうだ。ちゃんと手を繋いでおかないといけない。

手を握られたリューシアは最初驚いていたが、すぐに笑って嬉しがった。流石にはしゃぎはしなかったが、幸せそうな顔をしている。

ミリーの行ったことには内心相当驚いていた。今でも東京の街くらいの活気があるという印象を受ける。それがまだまだ凄いところがあると聞くと、行ってみたくなる。


「ひとまずはギルドに登録しに行くか。早速依頼も受けてみたいし。ミリー、案内してくれ」

「分かった」


そう言って街を歩く。中央に近付くにつれてどんどん人の通りが多くなっていく。それに比例するように店の数やレパートリーも増えてきている。

街を眺めるだけでも暇つぶしになりそうだ。

ひとつ目に留まった店があった。そこは武器屋。こっちの世界に来てからずっと行ってみたいと思っていたのだ。

だがミリーにギルドに急ごうと言われて、渋々了承した。

そうやって街を眺めている間にギルドに着いた。ミリーがここで立ち止まったから間違いない。

そこは周りの建物に比べて一回りも二回りも大きく、良い意味で異様な雰囲気を放っていた。


「ここか?」

「ここってなにするところなの?」

「ここはな、入ってみれば分かるよ」

「さっさと、行こう」


ミリーの先導でギルドに入る。

中に入るとそこはおっさんの飲み会の様な雰囲気を出していた。

見渡してみると昼間から酒を飲んでいる奴、ポーカーみたいなゲームで金を賭けている奴、ボードの様なものの前でウロウロしている奴。もしかしたらアレが依頼書が貼ってあるボードかもしれない。


「こっち」


ミリーが手を引く。

向かう先にはカウンターの様なところ。なにやら制服っぽいものを着ている女の人が立っていることから、受付嬢だと推測できる。


「こんにちは」

「なんの用ですか―――――ってミリーじゃない!」


挨拶をした俺をほったらかして、後ろに控えていたミリーの存在に驚く受付の人。俺の存在は見えていないかの様に綺麗に無視される。

つーか受付の人の大きな言葉でめっちゃこっち見られてるんだけど。自信過剰とかじゃなくて本当に。殺気さえ感じるような気がする。


「どこ行ってたの?」

「ちょっと聖地に。この人の様で」


ミリーが俺を指差す。

受付の人はしばらく考えて、なにか思い当たった様な顔をした。


「まさかグレイ様が言っていた・・・・・」

「あー、多分それだ」


やっぱり俺の事はグレイから聞いていたようだ。大体予測していたし、特段驚くことも無い。

ただ俺に向けられている殺気の数が増えた様な気がしただけだ。


「大丈夫ミリー! この人になにかされなかった!? いじられたりされてない?!」

「大丈夫。そんな事は、多分されなかった」

(多分てなんだ、多分て!)


断じて俺はミリーに手は出しちゃいない。異世界人、さらには日本人だ。そんな周りを敵に回すようなことする訳がないし、そこまで頭は馬鹿じゃない。

あ、でも―――――


「この人が、私のお父さんに、なっただけ」


その言葉が発せられた瞬間、ギルドの全域から殺気を感じた。逃げ場はない。蟻すらも通れないほどの包囲網だ。


「お父さんって、なにそれぇ! こらテメェ私のミリーになにしてくれとんだああ!?」

「そんな奴のところじゃなくて私たちの方に来なさい! 危険よ、色々な意味で!」

「失礼。お父さんは悪い人じゃない。少なくとも、貴方達よりは大人しいし、頼りになる」


ミリーの放った言葉は、このギルド内にある殺気全てを根絶やしにした。一瞬の逆転劇。俺はなにもしてないけど。






「で、冗談はこれくらいにして」

「冗談ですか!」


一瞬にして意識を失ったフリから起き上がる受付の人。周りも「あー面白かった」「久々にやったなー」なんて声も出てくる。

まあそれも少数だ。本当に気絶している人の方が多い。それも男が多い事からミリーのファンかなにかだろうと思う。


「今日は登録しに来たんですよね。グレイ様から聞いています」

「あの仕方分からないんですけど」

「大丈夫です。少し書類に記入するだけですから」


受付の人は髪をカウンターの下から取り出した。

それには、名前の記入、戦闘スタイル、出身地という項目があった。


「あの、これって絶対書かないといけないんでしょうか」

「いえ。絶対書く物は名前だけです。それ以外は正直どうでも良いです。書類をまとめるのがめんどくさいですから」


なんて人だ! めんどくさいから書類には名前だけって。

まあ本当に名前だけで良いんだろうけど。


「出来ました」

「はい確かに。ではギルドカードを発行するので十分ほどお待ちください―――――そういえば、その後ろの方も登録されるのですか?」


受付の人が指したのはリューシア。急に話を振られて驚いてオロオロしている。


「どうするんだリューシア」

「わ、私はどっちでも、良いよ?」

「どっちでもじゃだめだ。もし登録しないのなら俺が依頼に言ってる時はミリーとふたりか、最悪ひとりになる」

「じゃあ登録する!」


即答だった。俺は慌てて、リューシアに言っていないことを付け足す。


「こ、ここに登録したら俺と一緒に魔物を討伐しにいかないといけないし、危険な場所にも行くんだぞ。最悪の場合死ぬかもしれないし」

「お兄ちゃん! 最悪の場合ばっかり考えててもなににもならないよ。それにお兄ちゃんが護ってくれるでしょ?」


ああ確かに。俺はリューシアを命を懸けて護る覚悟がある。

それでもやっぱり、出来るだけリューシアには危険な場所に行ってほしくない。

それでも話を振ったのは、このままじゃリューシアはひとりになる時が出てくるからだ。前のナンパ達の例もあるし、出来るだけひとりにはしたくないというもの本心。


「私はお兄ちゃんが護ってくれるから大丈夫」

「ノリで言ってる訳じゃ、ないな。じゃあリューシアも登録お願いします」

「はい、リューシア様ですね」


書類をもう一枚出して書き出していく。これで俺とリューシアの登録が終わった。

あとはギルドカードを貰うだけで完全に登録は終わる。

ひとまず依頼でも見てみようかとボードの前に行く。そこには結構な数の依頼があった。


「フーン。魔物討伐に採取以来、家の建築の手伝い、一日家事の手伝い。結構な数の依頼があるんだな」


そこには俺が日本に居た時に読んだようなギルドの雰囲気を反転させる様な依頼もあった。赤ちゃんの子守とか。それが予想外でついつい見入ってしまう。


それからちょっと時間が経ったとき、後ろに気配を感じた。

その後ろの気配の方を見ると、数人の大男が立っていた、それも気持ち悪くニヤニヤと笑いながら。


「新人くん。ちょっと俺達に付き合ってくれないかなぁ」

「あ、勿論痛い事はしないよ。話したいだけだから」


あーあー、古典的な誘い文句。絶対面倒なことに巻き込まれたよ。

離れたところに居るリューシアとミリーを見ると、ミリーは既に銃を手に持ってこっちに向けている。リューシアはそれを必死に止めようとしている。

まずミリー。いきなり銃を向けるな。怒ってくれてるのは嬉しいけどさ。

そしてリューシア。流血沙汰を未然に防いでくれてありがとう。

俺はふたりに向かって、「大丈夫」と口で伝えた。ミリーは理解した様でひとまずは銃を下げる。不満そうな顔をしていたが。

さて、あとはこいつらをなんとかしないといけないな。どうせグレイの言ってた。こういう事でしかプライドを保てない連中だ。


「お誘いありがとうございます先輩。勿論断りはしません」


俺がそう言ってきたのが予想外だったのか、一瞬だけ顔を見合わせたが、すぐに行動に移ってくる。


「それじゃあ行こうか」


そう言って連れていかれたのはギルドの裏人通りが無く、人の目につきにくい。こいつらにとっては絶好の場所って訳だ。


「調子に乗るなよ。ミリーに気に入られたからって」


開口一番そう言われた。やっぱりと言うか、残念だな。


「可愛い女の子も連れてたし。おい、そいつ俺達に渡せよ。今日ギルドに登録しただろ。俺達が面倒見てやるよ」

「冒険者になったばかりの、貧乏野郎には自分とあの子とミリーさんにんを養うのは無理だろう? 俺達がひとりだけでも面倒見てやるって言ってんだよ」


その全ての言葉に反応した。

なんだってこいつら。リューシアの面倒を見るって、そんな下種みたいな顔をして何を言っている? どうせ馬鹿な事しか考えてないと分かっているが、どうしても怒りが先に来る。

いや、もう怒りを通り越して笑ってしまう。


「なにがおかしいテメェ!」

「なに笑ってやがる!」


うっせぇぞ。そんな事言うより、今の内に逃げた方が利口だと全然分かってない。

ああそうか。俺って今魔力抑えてるんだっけ。


(ババアすまねえな。早速外しちまう)


なに、殺しはしない。俺の魔力をダイレクトで当てて、ちょっとアレをああしたり、アレを―――したりするだけだ。

本当なら殺したいのは山々だが、そんなに殺しが好きな訳じゃないし、実際ここが一応街中であることもダメだ。昼間だし。

ったく、運が良い奴らだ。俺が前に殺しをしてなかったら、夜だったら死んでたのに。

目の前の奴らを憐れみながら俺は籠手を外した。


「だからテメェはなに―――――」


その男の言葉は途中で止まった。俺に一番近い場所に居たからだ。そして俺の本気の魔力をまじかに受けたからだ。

前の様に俺からは魔力が天に向かって伸びている。上が天井じゃないだけ良いとしよう。


「さて、どうしようかな」


男たちをひとりずつ見る。俺に見られるたびにビクッとなるのを見るのはこれほど愉快だったのか。今まで闇属性魔法使ったら俺って人格が微妙に変わっていたそうだから気づかなかった。


「ちょ、なんだよこれぇ!」

「聞いてねえぞ!」


いや誰にも言ってねえし。


「まずはお前だな。取り敢えず俺が目を潰したら逃げても良いぞ」


魔力を男の目に集中させる。魔力を抑えることは出来ないが操ることは出来る。よってこんな事簡単だ。

俺の魔力に触れた瞬間、両目の目玉は耐えられなくなったかの様に破裂した。


「ってえええええ!」

「うるさいよ。さっさとどっかに行っちまえキモいから」


両目玉が無い人間って結構見ていてキモイ。直視するのをためらわせる。

その男はさっさと逃げていった。


「次は、どうしよっかなぁ。両耳取っちまうか」


俺は魔力を刃にするような感覚で耳に向けた。標的となったのは一番後ろで怯えている男。

迫ってくる俺の魔力からダッシュで逃げようとする。


「ち、大人しくしてろよ。『幻想なる闇の世界 全ての光を閉ざせ ブラックボックス』」


俺の拷問用魔法。こうなったら脱出不可能だ。俺自体の魔力が上がったからか、魔法の硬さも上がっている様に思える。あくまで感覚だが間違いない。前とは比べ物にならないほどに強化されていた。

この状態で他の攻撃魔法とかつかったらどうなるか分からないな。


「なんで出れねぇんだあああ!」


絶望したように泣き声を上げる。だが関係ない。俺に目をつけられた時点でこいつらの運命は決まっていた。

ズシャッという音と共に両耳が切り落とされる。地面に落ちた耳をしばらく見つめて、再び嘆きだした。

俺は魔法に出口をつくった。


「ほらさっさと出ていけよ」


冷たく突き放すように言う。その言葉が天使からの言葉に聞こえたのか、はたまた悪魔からの言葉に聞こえたのか、それは分からないが、確実にスクラップになっていることだろう。


「あとは、もうめんどくせぇ。陰茎切り取って終わりな」


普段言っている様に言ったら下品なので一応医学用語で言いました。

男たちは陰茎という言葉を知らない様だった。多分地球特有の言い方だからだろう。久しぶりにこっちとあっちのずれが見えた。


「テメェらの股に付いてる汚ねぇやつの事だよ。全て切り取っていくぞ」


また魔力を刃型にして近づける。ゆっくりと絶望を与えながら。


「ひいぃぃぃ!」

「逃げんなよ出れねえから。つーか動くな。『逃れ得ぬ悪魔の手 自由を奪い希望を絶望へ シャドウバインド』」


俺の影から職種の様な細長く黒い紐が伸びていく。その全てが男たちを捉え、身動きを封じた。

俺は縛られた屈強な男をずっと見る趣味は無いので、さっさと決めることにする。


「お前らは社会的に死ね! 男として、死ねええええええ!」


俺の叫びと共に、いくつものアレが落ちた音がする。見たくないがどうなったか見なければいけない。やばかったら後処理しないといけないし。

幸い男たちは気絶はしていなかったから、ほおておいても大丈夫だろうと結論付ける。

そこまでをを一瞬で考えてすぐに目を逸らした。拘束魔法を解いて地面に転がる男たちを見て、その場から離れた。

俺すらも苦しめる拷問。これからは気をつけねば。

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