十二話 別行動/お父さん認定
あの魔物の襲撃の後、何度か魔物の小隊には襲われたりしたが、全員の魔法や武器に一瞬で塵になっていた。あの時ほどの大軍じゃないが、その頻度が二時間置きだったりするので、おちおち寝てもいられない状況だ。
これもあの方とやらを助けるための行動なのだろうか。あれ以来魔族が混じった大軍が来ることは無いから判断に苦しむが、今のところはキメラの言葉で全てを推測するしかない。
そういえば、四日目の朝にミリーが早起きをして朝食を用意していたのは驚きだった。いつものミリーなら家事が出来るくらい「ああやっぱりか。得意そうだもんね」で済まされるが、豹変した時のミリーなら「ええ、これお前がつくってないだろう」と言われても不思議じゃないくらいはしゃいでいた。本人曰く、どちらの状態でも料理は出来るだろうとのこと。試したことは無いらしい。
俺はその話よりも、ミリー自身が自分の疑似二重人格を分かっていたのに驚いた。分かってるなら直してくれという心境だ。
五日目の昼にはグレイから決闘を申し込まれた。
最初はなにを馬鹿なと思ったが、真剣な目に当てられて渋々了承した。
その結果は、俺が勝ったのだが、以外にもグレイは善戦していた。俺が魔法でつくった刀を出したところで目を点にしていたが、すぐに気を取り直して斬りかかってきた。
まずはちゃんと避けたが、ムキになってくるグレイを見ているとなんとなくからかいたくなり、おちょくっていると魔法まで使い出した。もちろん飛んできた斬撃や上から降ってくる雷なんてものは魔法の刀で斬っておいたが、なにぶん魔法が絡んでくると神経の疲労が激しくなってくる。それにつけこんで不用意に突っ込んできたグレイをひとまず蹴って試合終了。
俺相手に中々もった方である。グレイならあのキメラにも勝てたのかもしれない。
で、その話をすると、「馬鹿か! そんな魔物に勝てる訳ないだろうが! まずリーチが違いすぎるわ!」と怒鳴られてしまった。ミリーは神様を見るような目でこちらを見ていたが、またあのモードになりそうだったから無視した。リューシアは素直に「お兄ちゃん凄い!」と言ってくれた。
ああ、ここでの俺の癒しはリューシアしか居ないのか。
で、まあ色々ありながらも過ぎた馬車での生活は、たった今終わった。
正確には、俺は街に入れないから聖地で近いところで降ろしてもらい、グレイは引き続き馬車で帝都バルケイトに向かうとのこと。
その時にはやっぱりミリーがついてきて、冒険者ってホント自由なんだなと思った。
「じゃあ、ひとまずはここまでだな。ミリーをよろしく頼む」
「なんだその親みたいなセリフは。大丈夫だ、怪我は多分させない」
「怪我させたら多分ギルドの受付嬢に殺されるから、気をつけろ」
なんだその物騒なギルドは!
そんな事になったら俺トラウマで一生冒険者にならないし、ギルドにも近づきたくなくなるぞ!
「そう怖がった顔するな冗談だから。でもまあなにか言われるのは確実だな」
「そこまで人気なのか」
「ある意味ギルドのアイドルだからな」
苦笑するグレイ。そこには、俺が予感したような、トラウマみたいなのが混じっていたのだが、そこは突っ込まないでおこう。聞いた瞬間グレイが泣きついてきそうだ。
「おーい、そろそろ出発するぞー!」
「あいよー!―――――まあギルドに着たらそれなりに歓迎する」
「ありがとよ、せ・ん・ぱ・い」
「おじさんありがとう!」
「リューシアか。ギルドに来たらまず俺を―――――」
「なにを、言おうとした? ミリー、今なら殺しを許す」
「それは、遠回しに、殺せと言ってる? なら・・・・・」
「ちょっと、ちょっと待ってくれ! そういうんじゃないから! でも悪かったよ。この歳でアレな大人の気持ちも考えてくれよ」
「へえ、お前って童て―――――」
「あー、聞こえない聞こえない!」
耳を小刻みに叩き聞こえないようにするグレイ。見てて気持ち悪い。
「まあ冗談はここまでにして、じゃあまたな」
「フッ。ああ、ギルドでな」
そう言い残してグレイは去っていった。また会いたいものだ。ギルドに行けば会えるんだろうけどさ。
そして草原に残った俺とリューシアとミリー。
「さて、目的地に向かうか」
「どこになるの? その聖地?ってところ」
「地図ではここから北東に言ったところだな。森の中にあるらしい。でも、ここはミリーに案内を任せて大丈夫か?」
「うん。道は、完全に、覚えている」
なら道に迷う心配はないな。完全異世界人の俺と天使族のリューシアだけだったパーティに頼もしい奴が混じったものだ。そこだけは、こいつを連れて来て良かったと思う。
「じゃあ行くか」
「うん、出来るだけ野宿は嫌だしね!」
「野宿の準備は、しているはず。もし食材がなくなったら、現地調達、で」
(こいつずいぶん慣れてやがるな)
日本で暮らしていた俺としては、現地調達なんてものは早々に成功するものではないと思うのだ。探しても探しても普通は都合よく食材があったりはしないだろうが、こいつの自信満々な顔を見たらなんとなく慣れていると思った。
歩くこと三時間。俺達は大きな森の中に居る。道は整備されていて、ここが人の手によって管理されていると分かる。俺は勿論疲れることは無く、リューシアは俺の背中で眠っている。ミリーが疲れを見せない事には正直驚いたが、冒険者だからかと理解した。
「頑張ったんだなお前」
「急に、なに? ちょっと、気持ち悪い」
「いや、ふとそう思っただけだ」
落ち着いた雰囲気が続く。時に会話をしてもすぐ終わる。じつに俺好みの状況だ。
「師匠。私はもう、師匠に着いて行って良いの?」
「いいつっただろうが」
「じゃあ話しておく。私の事と、家の事」
「グレイが言ってたアレか」
そういえば忘れていた。あの時はグレイがミリーを連れていって自分で聞けと言ってきたから最後まで聞かなかったが、実際は一番気になっていたことだ。まだ俺に言わない方が良いと言おうとした。まだミリーは俺が信用に足る人間が判断できていないだろうから。でも、俺の顔を真っ直ぐ見るふたつの黒い目に圧倒され、聞くことにした。
「私は、貴族の生まれ。そこまでは良い?」
「グレイに聞いたからな」
「なら、貴族は嫌い?」
「嫌いだな。いや、実際に会ったら嫌いになりそうだな。総じて貴族の印象ってやつはそんなもんだろう」
「上出来」
ふぅと息を吐く音が聞こえてくる。
「端的に言うと、私は親から、見捨てられていた。生まれた時から」
「生まれた時から?」
最初の一声を聞いた時点でもう叫びたい衝動にとらわれるがなんとか我慢して話を聞くことに徹する。
「私には、姉が居る。それはもう、私よりもよっぽど優秀な姉が。私が生まれた時にはもう姉は四歳になっていて、姉は政治学を学んでいた―――――大体分かった?」
「そうだな。出来れば聞きたくない話だ」
「でも話す。私がちゃんとした考えが出来る様になった時には、もう姉は周りの大人から褒められて、完全に跡取りみたいで。それで、私は忘れられていた。部屋は用意してくれていたけど、食事に呼ばれる事も無いし、いつの間にか家族全員が旅行に行ってた時もあった。そこまでは大丈夫なの」
(大丈夫、なのか?)
「でも、ある時私は勝手に街に出て遊んでいたの。それは私が悪かったのかもしれない」
「悪くねぇだろ。そんくらいなら、一般人なら普通だ」
「でもね、私はちょっとした事件に巻き込まれた。知らないおじさんたちが近寄って来てね、私を連れて行った。私はその頃れっきとした子供で、力が無かったから、抵抗も出来なかったし、まず何が起こってるか分からないかったから抵抗という考えすらなかった。
私は簡単に袋詰めみたいにされて、その男たちのアジトに連れていかれた。その男たちは盗賊で、私を奴隷にしてお金を稼ごうとしてたみたい。なにが起こってるか分からない、無事に帰れないかも分からない。そんな状況でも、やっぱり私は親を頼っていた。絶対助けに来てくれるって。でもそれは甘い考えだった。5,6時間経っても誰も来ない。その時は単にアジトを見つけられて無かったんだけどね。
で、私を売りに出そうと盗賊たちが出掛けようとした時にやっと助けが来た。その人は私の親でも無く、家に仕えていた人ですらない騎士の人だった。私が連れていかれたのを見ていた人が、急いで騎士の人を呼んで、そこからずっと探してくれていたみたい。それはありがたかった、ありがたかったけど、家に帰ったらちょっときつかった。
その日は、ずっと前から決めてた旅行に行く日だったみたいで、騎士の人から私が連れ去られたという話を聞いても無視して、お母さんと姉と一緒に出掛けたみたい。
一緒に家までついてきてくれた騎士の人は、本当にお父さんたちが旅行に行ったと知ると、私に持ち掛けてきた。『こんな家は捨てないか? 私の知り合いがギルドに居るから紹介してあげるよ?』って。最初は私も不安だったけど、今までの事と今日の事を思い出したら、そこまで考えた瞬間決めた。
それで、騎士の人が紹介してくれた人が、ギルドマスター。ギルドマスターが紹介してくれた人がグレイだった」
「そこから、今に至るって訳か」
長い話が終わった。というより終わっていた。
やっぱり貴族の屑物語じゃないか。確かにミリーは苦労していた。俺なんて霞むほど。俺のいじめが可愛く思えてくるほどに。
話している間、ミリーは無表情を貫いていた。聞いていて、見ていて辛くなってくる。本人はそんなの私は気にしていないという様にしているが、本人は気づいているだろうか。
自分の頬に流れる涙に。
「ミリー。お前泣いてるぞ」
「え?―――――あ、ホントだ。すみません」
「なんで謝る」
「それは、師匠が目の前に居るのに・・・・・」
「気にしないで泣いていいぞ。つーか泣け。これは命令」
「いや、それは・・・・・」
自分に泣くことを許さないミリー。馬鹿馬鹿しいじゃないか。リューシアに引き続き、また俺の目の前で子供が泣いている。さらに本人は泣いていることにすら気づかない。自分の感情にすら気づいていない。ばかげた話だ。
俺が気づかない内に世界はここまで腐っていたのか。
「断るなら、なんで話が終わって泣いている? そもそもなんで俺に話をしたんだ?」
「それは、分かりません」
「分からない、か。そんなもんかね」
確かに、こんな話は最初から考えて話すことは無いだろうと俺は思う。だが、やっぱり話すのはそれなりの目的があるとも思う。話す本人が無意識の内に。
「じゃあしょうがない。俺が一肌脱ぐか」
「師匠が?」
「そうだ。よしミリー、俺を殴れ!」
「・・・・・はい? 師匠はそういう趣味がおありで?」
「ちが・・・・・、てもうそれで良いわ! さっさと殴るんだ」
「えっと、じゃあ、いきます」
リューシアを木にもたれさせておく。衝撃与えたらやっぱり起きるだろうし。
準備が整ってミリーがボコッと殴ってくる。狙った箇所は胸のあたり。殴る方が殴れば痛いのだが、正直まったく痛くない。
「まだだ。これの10倍は力入れて良いぞ」
「あの、話が見えてこないんですが」
「良いから」
また殴ってくるが、やっぱりこいつ手加減している。俺が師匠だと認識しているからか。口調もいつの間にか敬語になってるし。ミリーは今、いつもの落ち着いた奴とあのテンションが高い奴の間ぐらいに居る。そもそもそれがダメだ。
「ダメだ。いつもの調子で淡々と、落ち着いて。なにも考えずに殴ってこい」
「ああもう。そろそろウザくなってきました。じゃあ今度こそ本気で」
腕を引き絞る。後方にセットした拳は一気に俺の腹部に接近。今度はちゃんと痛い。狙いも完璧だ。ここに至るまではちょっと計算違いだけど。
「そうだ。そのパンチを気の済むまで俺にぶつけてこい」
「もう訳が分かりません。一体師匠はなにがしたいんですか?」
「なにがしたいのか、か。お前、実際分かってるだろう」
「なにを・・・・・」
「俺がなにかを考えてこういう事をさせているって分かってる時点で、お前は俺の考えが分かってるだろ?」
その言葉を聞いて、ミリーが見るからに焦る。
「さて、なんの事でしょう。気づいていたらなにがしたいのかなんて聞きませんよ」
(ったく)
「まだ敬語を使うのかお前は!」
俺は衝動的に叫んでいた。それは今のミリーが考えたら理不尽だったのかもしれないが、俺にしてみれば重要なことだ。
「これも気づいていないのか。お前が、表情と様子だけ見たらいつものお前だが、口調は敬語になっていることに」
「それが何ですか?」
「お前は今、人を頼りたいと思っている」
「はい? そんな事はありませんよ」
「お前は自分より強い俺を見つけてあの変な状態になった。見るからに強引だったなあれは。なぜ必死に弟子になることを望んだのか、それは人を頼りたかったからだ」
「なにを根拠にそんな事を」
「お前はちゃんとした親というものを知らない。だから、偽物でも親というものを求めていた。その結果があの状態だ」
「あれは単に強くなりたかったからで」
「強くなるだけなら、今までの冒険者の生活の中でいの一番にSSSランクを探して弟子入りを頼みそうなものだが?」
「SSSランクはなかなかギルドに顔を出さないだけです。居ればお願いしてたでしょうけど」
「そうだとしても、周りにはグレイも居ただろうし、Aランクの奴らも居ただろう。なんでそいつらの弟子にならなかった?」
「それは・・・・・」
ミリーの言葉が途切れた。
それはな、あくまで俺の考えなんだが、みんなが仲間だったからだろ。
自分の境遇を聞いても、そこには触れずに優しく接してくれるギルドの連中。そいつらと一緒に仕事したりギルドで笑いあったりしている内に、ミリーは周りの奴らを仲間だと認識した。だから上下関係なんて今更言っても仕方ないみたいに思ったんじゃないだろうか。
「周りの連中には今更師匠に、いやこのさいだから親と言っておこう。親になってくれる奴が居ない。グレイでさえもはっきりと「仲間」だと言う。その状況でお前は探していたんだよ。親になってくれて、そういう意味で頼りになる存在をさ」
「・・・・・」
ミリーを見たが、黙りこくってこっちを見ようとしない。でも、こっちに耳を傾けているようだった。
「だからさ。出会ったばかりでそれなりにも話している、そして自分より強い俺と言う存在は親にピッタリだった。だからさ、お前は俺に弟子という名目で一緒に行動したかった」
全て俺の想像だ。実際は間違ってるかもしれない。ただ本当に強くなりたくて俺の弟子入りしたのかもしれない。
だけど、あの話が終わった後に流した涙は? そもそもただの師匠ならあの話をする必要はあったのか? 俺はあの話をちょっとだけグレイに聞いた後に忘れていたのだから、そのままほったらかしていて良かったんじゃないか。それをわざわざ自分から持ち出してきたのは、話を聞いて、そして甘えさせてくれる存在が欲しかったから。親という存在が欲しかったから。
「馬鹿馬鹿しい、想像。でも―――――」
そう言ってミリーは俺に近づいてきた。なにかと思ってみていたのだが、俺はミリーに吹っ飛ばされた。
要するに顔面を思いっきり殴られた。その拳はさっきまでの強さとは比較にならず、流石に痛かった。一瞬なにが起こったか分からなかったが、すぐにミリーを見る。
「何すんだ!」
「殴って良いって、言った。自分の言葉には、責任を、持つべき」
「いや、そうなんだが。話の流れ的に殴るのはおかしくね? 普通あの流れだったら俺の許可があって殴るみたいな流れだよね」
ミリーを見ながら言うと、俺の言葉の最初ら辺からなにか嫌な笑みを浮かべていた。絶対に何かを企んでいる表情だ。
「言葉には、責任を持つ?」
「当たり前だ」
(え、ちょっと待て。今思ったが、話の流れ的に―――――)
「じゃあ、これからよろしく。お父さん」
―――――そうですよねー! うん、完璧に流れがそうだったよね! 俺言ってる時は気づかなかったよ! 俺失敗。
って、お茶目に反省なんてしてる場合じゃない。なんだ俺はさ。リューシアに引き続き娘までつくる気か? 一体どこの変態だゴラァ! って、自分に怒っちゃったよ。
「ねえ起きてお母さん。お父さんが、呼んでる?」
「明らかにお前とリューシアじゃ歳が反対だろうが。兄弟よりも娘が年上ってありか?」
「あり。面白い、から」
えっと状況を整理すると、俺とリューシアが兄弟でミリーが俺たちの子ども?
なんじゃこりゃぁ! 完全に兄弟の禁断の恋の結果子どもが出来てんじゃねえか! 気づかぬ間になにしとんだ俺は! グレイとかが知ったら俺変態方向にキャラが確定するじゃねえか!
と叫びたい。が、俺は誰かに聞かれることを望んでいない。
「落ち着いて。お父さん」
「止めてくれ。俺はお前の親じゃないんだ」
「え・・・・・」
え、なんでそんな悲しい顔をするんですかミリーさん。つーか俺とお前ってほとんど歳同じだよな。なんで親なんだよ。って考えてる場合じゃないだろ!
「違う、くない。言葉の綾だ! 俺が親だったらお前に求愛出来ないという事を言葉に―――――」
なにを言っとんのじゃ俺はぁ! 完全にごまかせてないだろうが! 俺が第三者の視点で俺を見たら「え、なにこいつ」みたいになる自信があるぞぉ!
「嬉しい、な。お父さんが私をそんなに」
(違うんだ! 察してくれ!)
もうこの雰囲気を敏感に察知したリューシアが起きてんだよ! この世の終わりを見た様な顔してんだよ! 起きた瞬間瞳孔が開いてたんだよ!
さらに今は俺を責める様な視線を俺に・・・・・。ダメだ、視線を浴びているだけでなんでこんなにも苦しい。
そんな中、ニヤリとミリーが口を歪めたのを見逃すはずが無かった。
「テメェ図ったなぁ!」
「なんの、事?」
「可愛く首をかしげても俺には通じないぞ! リューシアのそれを普段から見ているのだからなぁ! 女子への耐性は付いてきた―――――」
「お父さん、酷い・・・・・。私をほったらかして、いっつもお母さんとハッスルしてたんだね? いつも怪しいと思ってた」
「なーにを言うとるかおどれはぁ! 断じてそんな事はないからさぁ! お願いだから泣き止んで下さい!」」
くそ、ウソ泣きだと分かっていても俺の良心が反応して動いてしまう。
もうリューシアなんか
「え、え? なにがどうなってるの? 私がお母さんでお兄ちゃんがお父さん? (あ、それも良いんだけど)私が眠ってる間になにがあったの?」
とこんな感じである。俺に視線を向ける余裕も無いらしい。途中はなにか聞こえなかったが、なにを言ったのだろうか。耳は良いはずなんだけど、耳かきしてないからか?
「じゃあ、そういう事で。お父さん行こう?」
「はいもう諦めますよ。諦めれば良いんでしょう?」
まあこんな形でも良いような気がしていた。
本当なら思いっきり言葉で不満を吐き出してほしかったのだが、俺もそういう風にしようと思って説得していたのだが、親と言うのは師匠よりも大切な存在足り得る。これを機に、思いっきりミリー自身の重荷を俺に預けてくれればいいと思っている。
これでミリーの元両親に、胸を張って言ってやれるんだから。
「じゃ、行くかリューシア、ミリー」
「「うん」」
もう少しで聖地である。そこに着けばやっとギルドに登録することが出来、ちょっとはまともな生活を送ることが出来るだろう。
こいつらの為に、俺はしっかりとした男で有り続けないといけないんだから。