2.
次の日の朝。
「夕薙ー起きてるかー」
「はっ!?
今何時!?
もうこんな時間!!」
夕薙は朝に弱い。
だが不思議なことに夕薙のお母さんが何度起こしても起きないのに俺の声だと一発で目覚めるのだ。
ドタドタと慌ただしい音がどんどん降りてきて目の前の扉が開く。
「お、おまたせ」
俺は行くぞと促して学校へ行くのだった。
俺の学校は私立四葉学院という。
校則も自由で危険物以外ならなんでも持ってきていい。
しかし、校則は比較的ゆるめだが、偏差値がやや高い。
さらには就職や進学に関しても色々サポートしてくれて、非常に将来に関してのサービスがいい。
それを売りにしている学校なのだ。
違うクラスの夕薙と別れ、教室に入ると雑誌を持った男子生徒がやってきた。
どうやらその雑誌は今日発売のSS情報誌のようだ。
「チーッス。健司、聞いたか?
クローバが新しいパーツを発表したらしいぜ」
こいつは大馬真也。
いわゆる腐れ縁というやつだ。
ちなみに真也は知らないがクローバとは俺のことである。
「へぇ、どうなんだ?」
「いいじゃねぇか、これ
複合ブレードなんて面白いぜ
名前もチェーンブレードとかイカスしよ」
俺が今回発表したのはIKK-0245 チェーンブレードだ。
コンセプトは中~近距離対応の変形刀だ。
つまり間合いによって剣を変形させることが可能なのだ。
上級者向けの武器なのでおそらく使える奴と使えない奴がわかれる作品である。
運営の人の話ではそれなりに扱いづらさもあって高ステータスらしい。
「別に平凡な名前だろ
中で鎖をつないだだけらしいし」
「そんなことねぇよ
変形するんだぜ、変形」
「多分使いこなす奴ほとんどいないと思うぞ」
「はぁ?
なにいってんだよ」
「変形させ方書いてあるだろ
手首のスナップで変形させるなんて細かい操作、できるやつは少ないはずだ」
考える仕草をしている真也だが、こいつは途方も無いくらい馬鹿なのでほとんど意味は無いはずだ。
「…………確かに言われてみればそうだな
でもよ、お前なんでSSやんねーんだよ
装備とか一発で性能見極めんのによ」
自分のだからというのもあるが、どこに目をつければいいかということを職人としての勘が教えてくれているといえばなんとなくわかるだろう。
感覚的な話で、それでSSをやるかは関係ない。
「いったろ、金がないし戦うことには興味ないって」
そう、俺はMBSを持っていない。
理由は先にも言った通り金が無いのと向いてないのが理由だ。
よくあるロボットアニメで例えると整備士で主人公たちを支えるほうが俺には合っている。
「ちぇ、勿体ねー奴」
「なんとでも言え、俺は考えを改めるつもりはないからな」
「わかったっての」
そうして駄弁っているうちにホームルーム開始の予鈴がなるのだった。
授業中----
「え~と、この問題を…雨宮、解いてみなさい」
長いツインテールでまとめている女子生徒。
雨宮リリという名前だ。
「1番は√5、2番は√3Xです」
淡々と顔色一つ変えずに答えていく。
「え~と、正解です」
「先生、その下の数式が間違ってます」
口調は礼儀正しいが思ったことを口に出してしまうタイプらしく、容赦のないツッコミで相手を轟沈せせることが多い。
故にドSキャラとして通っている。
「え?
あ、ホントですね
すみません、すぐに訂正します」
しかし、本当は相手を轟沈させる度に自身もダメージを負っているほどの優しい性格だ。
その後の授業も当てられる度に正解を言っていき、成績優秀者であることを再認識する俺であった。