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3.感謝のことば
本書には、発表当時に世界最短の推理小説と評価された表題作を含め、12本の作品を掲載した。
本来前書きにおいて、推理小説のまえがきを行うのはどうかと考えるが、多くの読者は内容を承知しているので、表題作の作成経過のみにふれることにする。
この作品の発表前は、どこまでがミステリとして成立するのかという、いわゆる「ミステリ領域論」が盛んに展開されていた。
私自身は、ミステリ小説を執筆していなかったので、議論を遠くから眺めていた。
しかしながら、1996年に赤柳編集長から、簡単なミステリを書いてくれと意味不明な要請があった。
赤貧状態だった私は断ることができず、表題作を発表したのだが、まさか「ミステリ領域論」の議題の一つとして取り上げられるとは夢にも思わなかった。
とはいえ、「ミステリ領域論」がこの作品によって方向性の一つが決まった事は紛れもない事実である。
しかしながら、私の本職はミステリではないため、この作品以降、ミステリを書くことはなかった。
~「感謝のことば」(2001年 斑鳩茂市)~
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