34.この夢落ちがすごい!!(2014年版)
ある意味、斑鳩茂市先生の原点のような作品だと思います。
私は夢落ちが嫌いだった。
これまで、積み上げてきたものを「夢だから」ということで全てを打ち壊すからである。
それでも、2009年に丸丸社から「この夢落ちがすごい!!」を企画するので、選考委員会の委員になってほしいと要請を受け、セグウェイの購入資金を稼ぐために嫌々引き受けたことがきっかけで、夢落ちの可能性に目覚めた。
最初の頃は、「該当作なし」が続き、「夢落ち冬の時代」と言われていた。
その状況が変わったのが、2012年に発表された、「夢のひみつ」であった。
この作品の斬新さは、これまでにあった夢落ちの新しい時代を産み出したと言っても過言ではない。
実際、夢落ち小説業界では、夢のひみつ「以前」、「以後」で区別されるほどである。
「夢のひみつ」の発表後、「夢のひみつの夢落ち論争」と言うべき夢落ちについての賛否両論が盛んに行われた。
それは、これまでの夢落ちに納得できるかどうかについての論争ではなく、夢落ちであるとあらかじめ知ってしまうと、推理小説の犯人をあらかじめ知ってしまった時と同様に小説のおもしろさが激減してしまうことについての論争である。
このような状況により、「夢落ち」を用いた小説が商業的に増えていった。
2014年度は、特に豊作となり、これまで雑誌の一企画扱いだったものが、このたび刊行物として出版されることになった。
5人の委員のもちまわりとはいえ、今年度、私が審査委員長となったことから、この前書きを執筆することになった。
あたらしい眼鏡を、へそくりで購入しようと考えていた私にとって、大変ありがたい収入源となった。
今回は、5部門からそれぞれ1作品づつを選考することができた。
推理小説部門からは「秘められた凶器」、
SF小説部門からは「ムーンジェネレーぴょん」、
歴史小説部門からは「6枚の板わかめ」、
恋愛小説部門からは「届かぬ距離」、
唐辛子料理食べまくりアクション小説部門からは「ハバネロマシマシジョロキアスクナメカラメマシで」
詳細については、本文で解説するが、いずれも、「夢のひみつ」以降の夢落ちの新しい可能性を秘めた作品である。
最後に、1点お断りしておく。
今回あげた5つの作品はすべて、あらかじめ夢落ちであることを知ってしまったら、それぞれの作品の楽しみが大きく損なわれてしまういことである。
端的に述べれば、「夢落ちだと知りながら読むと、すべてがぶちこわしになる」ということである。
そのことに留意して、楽しんでいただければ幸いである。
~「この夢落ちがすごい!!(2014年版)」(2015年斑鳩茂市)~
以下は、小説とは関係ない話ですが「落ち」つながりということで。
2013年1月9日の某新聞紙上に掲載された、長期連載中の4コマ漫画の落ちについて、解説します。
(以下ネタばれ注意)
この漫画の落ちは、4コマ目の説明が落ちではなく、「『うまく言語化できない会話』がこの漫画の世界に存在している」という落ちだと思っています(主人公の妹が、主人公に対して祖父と祖母とのやりとりの意味について質問し、妹に説明しているため)。
もっとも、私は作者ではないので、「祖父と祖母のやり取りが実は日本語以外の言語だった(主人公が知っていて、妹が知らない言語)」「この世界が4コマ漫画であることをボクだけが知っている」という落ち(主人公の解説は読者を意識して行っている)や、ほかの落ちの可能性も否定できませんが。