32.依園(よりぞの)家の秘密
斑鳩茂市「君たちの世界軸と、私が住む世界軸とが、同じだとは言っていない」
本書は、依園家を舞台にした国民的アニメ「スペース・ヒストリア」について、視聴者が気になっている内容を明らかにするのが目的である。
この本を手にしている読者であれば、「スペース・ヒストリア」の内容はご承知だと思われるが、念のため各エピソードの概略を記載する。
○エピソード1 (不安の兆し) 2012年放送開始
ハマーノ王国で過ごす依園波兵衛が、共和国の星騎士アナーゴに力を見いだされ、故郷を後にする。
そこで、波兵衛が星騎士となるために、アナーゴとの修行を開始する。
修行の途中、イシーダ王国フナ王女が反乱軍にさらわれる事件に巻き込まれ、波兵衛はアナーゴと共に救助に向かう。
イシーダ王国出身の共和国議員である波農利助は、イシーダ王国を支援していたが、フナ王女のそばにいた波兵衛の才能にいち早く気づいていた。
○エピソード2(ハナサワの侵攻) 2013年放送開始
波兵衛は星騎士見習いとして一人で修行を積んでいた。
ある時、彼は、知り合いのイシーダ王国フナ王女から救助を求められる。
波兵衛は、フナ王女を救うが、南部図侯爵に捕らわれてしまう。
とらわれの身になった波兵衛とフナ王女は、処刑の直前になってお互いの気持ちを知ることになる。
彼らの生命の危機が迫ったとき、星騎士団長那加島がクローン兵ハナサワの大軍を率いて登場する。
だが、クローン兵が共和国議員波農利助が、自分の野心のために密かに用意したということを誰も知らなかった。
○エピソード3(ジスの復讐) 2014年放送開始
後に射砂坂戦争と呼ばれる戦いから3年がすぎ、共和国が平和を取り戻したかにみえた。
しかし、戦争により共和国は疲弊し、国民は、新たなる強力な指導者の登場を待っていた。
しかし、それは共和国総議長波農利助の計画通りだった。
利助は、黒騎士と呼ばれる闇の力を取りまとめるジスと呼ばれる人間だった。
利助は、自ら持つ闇の力を人に特に敵対勢力である星騎士団に知られないようにつとめながら、イシーダ王国の地方官吏から共和国の総議長にまで登り詰める。
戦争の中では、星騎士団の能力を削るために、敵である南部図侯爵と連絡を取って情報を提供していた。
一方で利助は、星騎士団にいながら独断行動の多さによって孤立を深める、波兵衛に対して、便宜を図ることで忠実な手駒を確保する。
すべての準備が整った利助は、星騎士団を共和国支配を企てたという理由で粛正し、帝政の始まりを宣言する。
皇帝を名乗った利助のそばには、黒騎士ナーミ・ベーダとなった波兵衛が立っていた。
波兵衛は、射砂坂戦争での最大の功労者という実績を背景にして、周囲の反対を押し切りフナ王女と結婚する。
ある日波兵衛は、夢の中で、フナ王女がまもなく産まれてくる子供たちに殺されるという宣告を受ける。
波兵衛は妻であるフナ王女の身を案じたが、フナ王女は無事に二人の子供を出産する。
波兵衛はそのことに安心して、協力者である利助に与えられた任務に従う。
しかしながら、フナ王女に悲劇がおそわれる。
利助の星騎士団討伐から逃れた騎士団の一部が、波兵衛を星騎士団側に引き込むために、星騎士の素質のある子供達を連れ去ろうとする。
それを知った波兵衛が、フナ王女を助けようとしたときには、子供達を守るために命を失ったフナ王女の遺体と再会した。
波兵衛は絶望し、星騎士団をすぐさま壊滅させる。
そして、波兵衛として最後に戦いを挑むのが当時星騎士団最強と呼ばれた、服田松雄であった。
波兵衛と服田王国の王子でもある松雄との戦いは熾烈を極め、波兵衛が松雄を倒したときは、波兵衛も瀕死の状態であった。
それを知った利助は、闇の力と機械の躰を波兵衛に与えることで、ナーミ・ベーダとして甦らせた。
波兵衛は、フナ王女の死と利助の洗脳により闇の力に捕らわれ、新たな黒騎士になったのだ。
フナ王女が死ぬ前に産んだ双子の兄妹は、粛正から逃れた那加島とアナーゴの手により別々に育てられる。
○エピソード5(新たなる願望) 2009年放送開始
共和国が帝国に姿をかえてから、18年がすぎた。
依園勝王はハマーノ王国で、優秀な空軍パイロットになっていた。
彼は偶然、反帝国同盟に加盟している水森王国の若菜姫が帝国にさらわれていることを知り、このことを野球仲間である那加島に相談する。
那加島は、勝王にたいして自分が星騎士の生き残りだと初めて明かし、星騎士の素質がある勝王に共に、若菜姫を助けることを提案する。
自分が伝説の星騎士になれることを知った勝王は、那加島とともに若菜姫を助けることにする。
しかし、それは星騎士をあぶり出すためにナーミ・ベーダが仕掛けた罠だった。
戦略要塞ナミーノの出現により、全滅の危機にさらされる反帝国同盟。
勝王達は、若菜姫が入手した情報を元に戦略要塞ナミーノに潜入し、これを破壊する。
しかし、破壊作戦による反帝国同盟の損害が甚大であり、帝国艦隊を率いていたナーミ・ベーダにより反帝国同盟は壊滅的なダメージを受ける。
○エピソード6(帝国の反撃) 2010年放送開始
要塞ナミーノの破壊から3年。
帝国からの執拗な攻撃から逃れるために、服田王国さなえ女王の庇護の下、身を隠す勝王たち。
しかし、ナーミ・ベーダが派遣した探索型クローン兵ハナサワ3に発見され、逃走の日々を送る勝王。
仲間達とはぐれた勝王は、奇妙な老人を発見する。
それは、星騎士アナーゴであった。
アナーゴは、勝王に星騎士の力を見いだし、勝王に対して正式な星騎士としての修行をつけさせる。
それは、那加島がかつて野球の練習と偽って、星騎士のトレーニング法を教えていた内容を、基に戻したものであり、才能に恵まれた勝王は、その力を開花させた。
しかし、その力により若菜の危機を知った勝王は、アナーゴの制止をふりほどいて救助に向かう。
勝王が向かった先には、陰謀によりとらえられた若菜達を、餌にして勝王をおびき出した
ナーミ・ベーダが待ちかまえていた。
別行動をしていたため、3年ぶりに再会した那加島と、一緒に戦う勝王。
しかし、星騎士の力に慢心した勝王は、ナーミ・ベーダに右腕を切り落とされ、勝王を助けようとした那加島もナーミ・ベーダに殺されてしまう。
絶望の淵にいた勝王の前で、ナーミ・ベーダは衝撃の事実を述べる。
○エピソード7(星騎士の帰還) 2011年放送開始
勝王とナーミ・ベータとの戦いから1年。
九死に一生を得た勝王は、アナーゴの元で修行していた。
勝王は修行をしながら、父親であるナーミ・ベーダを元に戻す方法を、勝王は密かに考えていた。
一方帝国を支配する皇帝は、ナーミ・ベーダのような忠実で有能な部下を捜していた。
皇帝はナーミ・ベーダと戦った勝王青年の力を見抜き、ナーミ・ベーダと同様に黒騎士にさせるべく陰謀を進めていた。
ナーミ・ベーダは実の息子である勝王に、かつての自分の姿を重ねていた。
勝王を自分の後継者とし、皇帝に反旗を翻すため、勝王を捕縛することを計画する、ナーミ・ベーダ。
勝王も、ナーミ・ベーダを悪の心から解放するため、自らとらわれの身となることを選ぶ。
皇帝は二人の考えを見抜き、二人を本当の黒騎士にさせるため、親子の対面の場に登場する。
惑星スペースの未来は、この3人の手にゆだねられた。
この本は、依園家にまつわる様々な情報をもとにして、驚くべき仮説を立てて実際に検証してゆく内容である。
本書の執筆にさいして、「スペース・ヒストリア」から様々な情報提供をいただいていることに感謝している。
読者の中には、来年、「エピソード4 復讐の淑女」の放映が始まるのに、大丈夫なのか?という意見もあるだろう。
だが、「エピソード4 復讐の淑女」はエピソード3と5との間を埋め、復讐の淑女と呼ばれた服田タラコの戦いの物語であり、直接依園家の物語とはつながらないので、安心して読んで欲しい。
最後に、次回の刊行予定について説明しよう。
再来年3月に「エピソード4 復讐の淑女」が終了することにあわせて、全編から再構成した「依園家の謎 ゴールデン ~タラコちゃんは波兵衛の娘ではない~」の刊行を予定している。
都市伝説として流布している、「「タラコの本当の父親が波兵衛である」という事実を知らないのは、松雄だけ」という噂についても検証できると思う。
~「依園家の秘密」(2015年斑鳩茂市)~
「依園波兵衛のポジションは、どう考えてもアナーゴではないのか?声優的に考えて」ですか?
そういう難しいことは、よくわかりません。