30.まえがきが必要かどうかは、君が決めればすむことだ
第3章始まります。
まあ、いつもの斑鳩茂市先生ですが。
まえがきについての書物を執筆することを提案してきたのは、金広出版社の当時の編集長だった、花槇優花氏であった。
花槇氏は、知的な表情でありながら、優しい口元で冷たい印象をぬぐい去るという希有な才能を持ち合わせていた。
彼女の確信めいた力強さは、前書きの歴史を変えるのにふさわしく、彼女がいなければ前書きの歴史は1世紀近く遅れていただろう。
それほど革新的なテーマであるために、執筆に際して、私たちの前に様々な難問が巨大な壁として立ちふさがることは容易に想像することができた。
私たちは、この文学史にとって広大なテーマに立ち向かうために、これまでにない巨大プロジェクトを構築することになった。
そのため、かつてないほど多くの人々のお世話になった。
様々な分野の人々から、全く知らない宇宙人、幼なじみにいたるまで、批判や苦情を含めて本当に貴重な助言を受けた。
本書のように壮大なプロジェクトについては、助言が多ければ多いほど本の質を高めてくれる。
皆さんにはこの場を借りて改めて感謝を申し上げる。
金広出版社の、津湖島真紀氏は、雪のように白い肌が特徴で、しかも今にも儚く消えそうな表情は薄幸の未亡人を想起させる。
彼女は、今回のプロジェクトに非常に重要な役割を果たした。
彼女が提案するアイデアや、内容に関する建設的な批判は、本書のありとあらゆるところに及び、本書のような魅力的な構成を生み出すことができたのは、彼女のおかげである。
さらに、彼女はプロジェクトリーダーとして全体の進行を管理し、私がスキー場で雪だるまを作ったときに骨折したにもかかわらず、遅延することなく出版にこぎ着けることができたのも、彼女の力があったからだ。
彼女が見舞いで、私がこよなく愛飲するルートビアを、5ケース持参してきたときは、妻が目の前にいるにもかかわらず、思わずプロポーズをしてしまった。
思い出すたび、恥ずかしくなるような思い出だ。
同じく、金広出版社の小柴茜氏は、幼い容姿と、笑うときに見せる、きれいに整った小さな歯並びが特徴の編集者である。
彼女は、幼い笑顔の陰で卓越した編集能力と熟練の事務処理によって、MMORPG「グローリークロニクル」の隔月大規模対戦のギルドリーダーとして調整の毎日を過ごしていたにもかかわらず、スケジュールも混乱することが無かった。
彼女が、「孤高のエランダ」として単身「グローリークロニクル」に乗り込み、私に異常なまでの敵意を見せた理由がようやく理解できた。
その後、私が、「孤高のエランダ」とオンライン上で結婚式を挙げた日は、このプロジェクトに参加してくれた人々だけでなく、妻や娘たちも駆けつけて来てくれた。
そのおかげで、本当に賑やかな結婚式となったことに感謝している。
また、この結婚式のおかげで、拙著「心が動く結婚スピーチ15例」が誕生するきっかけにもなった。
小柴氏の部下たち、特に倉竹瑞穂氏は、黒い太い縁の眼鏡が特徴の艶やかな丸い顔の持ち主である。
彼女は、原稿に含まれた数多くの誤りを指摘することで、読者を誤った方向に導くことを防いでくれた。
5月病に苦しんで、校正作業につきあうことができなかった私を、ユーモラスな会話と笑顔で助けてくれた。
本書の作成にあたり、多くの文献を紐解く必要に迫られたが、ここでも多くの人たちに助けてもらった。
西都大学教授の吉名祐子氏は、大和撫子という言葉がよく似合う清楚な女性である。
彼女は、専攻である古代ギリシャ文学のみならず、ラテン文学、シュメール文学に関する豊富な提言は、肝臓の治療のため入院していたことにより身動きがとれなかった私にとって、大きな励みになった。
吉名氏の研究室に助手として働く芳沢カレン(よしざわ かれん)氏は、くりっとしたおおきな青い瞳が魅力的な女性である。
彼女の効率的な資料の収集能力がなければ、離婚調停で足繁く裁判所に行くことができなかっただろう。
たとえ、自分の主張が全く認められなかったとしても、彼女の豊満な胸に顔を埋めればすべてを忘れさせてくれた。
たとえば、それ以上の事をお願いして、うれしそうに応えてくれた事なども含めて。
本文の執筆にあたって、全面的に協力を得た人がいる。菊地風香氏である。
彼女は、ハスキーな声と、たどたどしい口調のギャップが印象的な女性で、私が巨大隕石落下阻止プロジェクトに巻き込まれて、執筆が進まなかった時に、代わりに執筆してくれた。
私が宇宙船に乗り込むときも、「が、が、んばってください。」と抱きしめて見送ってくれた。
そのことで、不法侵入がバレてしまったが。
完成した原稿について、専門的な見地から独特の批判や、意見をしてくれた人たちがいた。その人たちの貴重な意見により、完成度がいっそう高めることができた。
代表して、畑川結衣氏を紹介する。
陸上短距離で鍛えた、引き締まった体と小麦色の健康的な肌が魅力的な女性であり、娘の夏休みの宿題に追われていた私を助けるだけでなく、娘の宿題をも一緒に片づけてくれた。
娘も、「次の、新しいお母さんなの?」と彼女に感謝の言葉を贈ってくれた。
ちなみに、たとえ本書に不備があったとしても、畑川氏をはじめとする助言者には一切責任は無いことをこの場で明言する。
今回、文庫版の監修に当たっては、真田あや(さなだ あや)氏に担当をお願いした。
彼女は丁寧な物腰と、細かなことに気がつく性格であり、確定申告で数字とにらめっこしていた私に、「それ、控除できませんから」と、優しく指導してもらった。
彼女がいなければ、3年前の裁判闘争を再び繰り返すことになるところだった。
最後に、このすばらしい前書きを執筆してくれた人を紹介したいと思う。
木桧真魚氏は、私にとって親のような存在である。
本来であれば私が執筆しなければならないのだが、水族館の清掃作業をする必要に迫られたので、彼女に代筆をお願いした。
「清掃作業は良いけど、水の中に落ちないでね。
君の全身に防水加工は施しているけど、完全では無いのだから。
それに、海水だから錆びないように気をつけなさい」
と、私を気遣ってくれた。
「ば、馬鹿を、い、言わないでよ!
き、君が壊れたら、君を作った私が直さないといけないのだから。
それだけよ、それだけ。
ほんと、大変なのだからね、まったく」
そう言って、私を家から追い出したのだが、鮫に襲われて、全身のパーツが破損した私を見ても、
「……。
本当に、君は、直しがいがあるわね」
そう言って、彼女の自宅兼研究室で、全身が機械となった私を直してくれたことに感謝している。
~「まえがきが必要かどうかは、君が決めればすむことだ」(2015年斑鳩茂市)~
なかなか、ネタが思い浮かばなくなりました。
いつまで続くのかわかりませんが、気の済むまでがんばります。
新しいシリーズ物(斑鳩茂市が登場しないもの)を考えていますが、まだ執筆はかどってはいません。
発表するさいは、活動報告でお知らせします。