29.美味しい洗剤の作り方! 斑鳩先生の事件簿(2)
本来であれば、文庫版の刊行にあたって、改訂部分を説明したいところではあったが、前作のような「殺人事件の犯人と、窃盗事件の犯人を勘違いさせるような」紛らわしいことはやめてくれと言われたので、楠師えいたろう氏(仮名)の事については触れないことにする。
そうなれば、必然的に書くことがなくなるので本書のタイトルの基になった「おいしい洗剤の作り方」について、若干説明をしておこう。
大手洗剤メーカーに勤務する、三宮くんは、すてきな奥方様がいる。
一言でいえば、私の妻と交換してほしいと考えていたほど魅力にあふれていたのだが、たった一つ欠点がある。
「料理が作れない」のだ。
「フライパンで作る料理は全て黒こげ」
「砂糖と塩を間違える」
「いつも、酢が入りすぎている」
「リンゴの芯が混ざっている」
というような、優しいものだけではなく、
「ジャガイモの芽がなぜか混ざる」
「お米を研ぐときに、洗剤を使用する」
「いつも隠し味として、食材にホンオフェが混ざっている(臭いですぐにわかる)」
「スイカの皮が残っている(そもそも、スイカの皮を剥く必要性があるのか?)」
という、いつお迎えがきてもおかしくない要素が満載である。
そのような、愛妻から身を守るために友人が考案したのが、「お米を研ぐときに使用しても問題ない。むしろ美味しい洗剤」であった。
私も一度試食したのだが、問題はなく美味しくいただくことができた。
そのような理由から、作られた経過に対して敬意を表してタイトルに使用させてもらった。
山菜に混じっていた毒草によって命を落とした友人に、追悼ともに本書を捧げる。
どうか私が、新しく迎えた妻による手料理によって死ぬことがないように、天国から見守ってほしい。
~「美味しい洗剤の作り方! 斑鳩先生の事件簿(2)」(2019年斑鳩茂市)~
第2章が完結しました。
感想や評価をしていただけると幸いです。
「毎回、話が違いすぎて評価できるか!」とお考えかも知れません。
私もそう思います。