19.わかりやすい「新特別市法」解説
いつのまにか20話掲載となりました。
ただ、この作品が一切評価されていないので、そろそろ別の展開を考える必要が有るかも知れません。
新沖市(注1)の建設をきっかけに、新しい形の都市(注2)が定義付けされたのであるが、都市の建設の経緯が、紆余曲折したことから(注3)、改正法案の中心となる「沖ノ鳥島に新しい特別市を建設するにあたり、必要な法律を改正するための法律」(注4)通称「新特別市法」が制定された後も、どのように法律が改正されたのか、新沖市の権限は他の地方公共団体と比べて権限がどのように異なるのか、国の業務が移管されているのか、あるいは、市の職員の身分が地方公務員法で定められたものと同等であるのか等、非常にわかりにくいと言われている。
本書では、「新特別市法」の改正内容を中心にわかりやすい解説を行った。
本書の特徴として、第1章にこの法律が成立するまでの経過について記載し、第2章ではこの法律が目指す考え方を中心に記載し、第3章以降では「内閣法」「国家公務員法」「地方自治法」「地方公務員法」等改正された法律ごとに具体的に改正された部分について、詳細の解説を行った。
最後に資料として、法律改正までの経過と「新特別市法」に関係する法律との関係性を理解するための図表を添付した。
ご理解の一助になれば幸いである。
(注1)新沖市
地球温暖化による、海水面上昇に伴い、沖ノ鳥島が消失する危機が訪れた。
島の消滅に伴う海洋資源の権益消失をおそれた政府は、メタンハイドレート採掘プラント計画で利用した、メガフロート技術を応用し、沖の鳥島周辺を正六角形状のメガフロートで取り囲み周辺の海水を汲み上げることで、恒久的な領土の確保を行うことになった。
メガフロートによる都市の建設については、太平洋への権益拡大をもくろむ中国などが否定的な態度を示したが、海面上昇による国土消失の危機にあった、東南アジアの国々に同様の技術提供、経済支援を行ったことで、沖ノ鳥島の領土問題を直接反対する国際勢力はなくなった。
当初は東京都内の新しい特別区として、東京都特別区の24番目の区として計画されていたが、最終的には国、都道府県、市の権限を統括する特別地方自治体「新特別市」として2026年に誕生した。
(注2)新しい形の都市
もともと、沖ノ鳥島は東京都に属していたが、全く新しい形の都市を建設することにともない、新規に建設される都市の行政区分について、効率的な行政運営を行うという観点から、これまでの国、都道府県、市町村の事務のあり方を見直す議論になった。
議論の中心は国、東京都との権限を中心としたもので、国と東京都は対決姿勢をとったが、とある官僚が独自に計画した試案が外部にリークされるとマスコミ、経済界を中心とした勢力が試案を支持した。
試案では、都市の行政組織は国(外交、防衛を除く)、都道府県、市の機能を統合したものとなり、一元的で簡潔な組織を持つことになった。
行政組織の長は、新沖市長が担う。
新沖市長は、国の業務を担うため、内閣府新沖市開発局長を兼務している。
詳細については第3章で解説するが、内閣府新沖市開発局長の設置経緯から、「新特別市法」により改正された内閣法により総理大臣が特別職の国家公務員として、新沖市長を内閣府新沖市開発局長として任命することになるが、総理大臣が直接解任できない役職となっている。
(総理大臣が新沖市議会に解任提案を提出し、新沖市議会が過半数の承認を得ることができれば解任される。当然、総理大臣の解任提案理由は、内閣府新沖市開発局長上の職務に関する事務に限定され、議会が否決すれば、同じ理由では次の議会まで解任提案はできない。当然地方自治法で定めている首長の不信任決議は新沖市長に対して有効であり、新沖市長が失職すれば、当然内閣府新沖市開発局長の地位も失う。)
(注3)紆余曲折したことから
領土問題に端を発した沖の鳥島開発計画は、当初、第二次護岸工事のみで完結するはずであった。
しかしながら、海洋法に関する国際連合条約第121条3項で定められている「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」に抵触し排他的経済水域を有しないという指摘が、中国を中心に行われた。
このため、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が当時開発していた、メタンハイドレード採掘用のメガフロートプラント設置技術を利用して、周辺の海域にメガフロートを設置し、沖ノ鳥島周辺の海水を生活用水や海洋温度差発電用水としてくみ上げることで、海水面を低下させ、設置したメガフロートを海上自衛隊基地施設とその住居に当てる計画を政府が発表した。
海上自衛隊統合計画により基地規模が縮小されたため計画が見なおされることになり、国土交通省が新都市開発計画を提案し、総務省と通商産業省が合同で新都市開発プロジェクトとして別に提案すると、代替首都機能移転プロジェクトと一体的なプロジェクトとして肥大化する。
最終的には、代替首都機能移転プロジェクトは、新都市の東京都からの独立と引き替えに頓挫したが、国土交通省と総務省が都市を開発し、総務省と通商産業省とで移住計画を推進していった。
(注4)沖ノ鳥島に新しい特別市を建設するにあたり、必要な法律を改正するための法律
通称「新特別市法」。
新沖市の設置にあたり、最大の問題点は法律の改正方法であった。
新沖市が、当初想定されていた、東京都特別区の追加ではあまり必要なかった法律の改正が、大量に改正する必要が生じた為、内閣官房内に各省庁から、法制担当の官僚を引き抜いて編成したプロジェクトチームを設置し、内閣官房長官直属の組織としてわずか1年で改正法案の策定にまでこぎ着けた。
~「わかりやすい「新特別市法」解説」(2005年斑鳩茂市)~
現在、実現していない科学技術を用いたフィクションをSFと定義すれば、一応この話もSFになるのでしょうか。
まあ、本書がSFに分類されるのかどうかは、私にはわかりませんが。
あのカオスコールド事件を解決したローズ・レクチャーの伝記「箱庭で異彩を放つ花」ですが、「まえがき」ではなく、別小説として掲載することになりました。