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序章
僕は昔から本が大好きだった。
小さな頃から絵本や童話、小説と、わりとジャンルを問わず読み続けてきた。
だから今の職業に不満はなかったし、寧ろ嬉しいくらいだった。
…ただし、もう少し普通の古本屋だったら、ね…。
某県某所に存在する古本屋「安心堂」。
何やら安直で逆に安心出来ない感じのする名前だが、これはまぁ創業時以来からなので今更どうしようもないし、諦めている。
其処で僕、安藤良基は、店員として働いている。
この店は僕の祖父の祖父だかが始めたそうで、一応その界隈では老舗にあたるらしい。
「古本屋」というわりには本以外にもCDやDVD、ゲームなんかも取り扱っていて、専門的な本を扱う所謂「古書店」ではない。
店長は僕の祖父、安藤幹久で、今年でもう70は超えるというのに全く衰えを感じない。
とにかく本が大好きで毎日楽しそうに仕事をしていて、僕が本好きになったのはきっとこの人も関係しているだろう。
「良基、ここにおったか。店開けるから、掃除頼む」
「あ、じいちゃん。わかった、今行くよ」
今日も一日が始まる。
とても普通とは言えない、僕の日常が―…。