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山城島

今回も無茶があるかも。

実はこの各島 編はほとんど思いつきなんで、加筆修正をするつもりです。いつになるかわかりませんが・・・・

「結局は山城家の継続となるか。表面上は廃絶となるが、残るのも仕方がない状況だな。彼が山城家当主であれば、今後の日本国の対応も変わっていただろうに・・・・」嶋沢和成外務省特別審議官は事務所として接収したホテルのスウィートで書類を見ながら呟いた。


 嶋沢は占領軍最高責任者として山城島に乗り込み、この二ヶ月、さまざまなことに関与してきた。山城家廃絶もそうであるし、軍の解体と再編もそうであった。外務官僚の嶋沢が最高責任者であるというのは、日本国から見たらおかしくはないと思われたが、山城島の住民たちにとっては異常だと思われたかもしれない。つまり、占領軍ということであるから当然として軍政が敷かれると考えていたからである。しかし、日本国にとっては、軍政など敷くつもりは最初からなかった。


 山城家廃絶は当初は考えられていなかったが、議会が形だけのものであり、封建的な独裁的な直接統治制度を取っていたこと、戦争責任を議会に押し付けるなどの暴挙が表面化するにつれて、嶋沢の態度が変わり、日本国の態度も変わることとなった結果、それが実行されることとなったのである。むろん、廃絶とはいえ、それは死刑を意味するわけではない。要するに、山城国に対するすべての権限が剥奪され、山城を名乗ることが許されない、そういう意味であった。


 そして、嶋沢が目をつけたのは、幾度か対談し、かつ、嶋沢の指示に的確な対応をしてみせた水城泰博上院議長であった。当初、彼の身元は嶋沢の知るところではなかったが、新議会の議長に承認しようとした際、日本国の人員の知るところとなった。彼は山城家当主の兄であったのだ。ただし、正室の子ではなく、側室の子であった。一時、後継者争いが起きたとき、家の安泰のためとして、自ら進んで家を捨て、水城の家に養子として入ったという。結果、彼が山城家を去ることで後継者争いは沈静化することとなった。


 その後、彼は政界に進出し、経験を積んでいき、その能力が高く評価されていった。そうして、次期宰相にという声が出始めていたころ、移転事件が発生し、さらに、現当主が形の上だけととはいえ、議会を無視して戦争を始めたため、議員議長という地位にいたにもかかわらず、戦争に関与することはなかった。そして、戦後、途中から日本国との対応に彼が関わっていた。それが、彼の運命を変えることとなった。


 嶋沢は日本国の意を受けてほぼ日本国の地方行政に準じた中央行政システムを導入、そのトップに彼を据えて復興を図った。つまり、日本国の介入をすべて彼を通して行ったのである。嶋沢としては、自分が直接介入するよりも、同じ地域の代表が関与した方が良かれと思ってのことであったかもしれない。しかし、一般住民はともかくとして、山城家の人間にとっては青天の霹靂といえたかもしれない。


 とはいうものの、彼はその後の内政的な混乱を見事に乗り切ってゆくこととなった。戦後の山城州の礎を気づいたといえるだろう。それが、最高責任者して嶋沢が残した最大の功績といえたかもしれない。つまり、彼水城を指定しなければ、山城州は混乱状態が続き、あの発展がなかった、そういわれることになった。それほど、水城の手腕は鮮やかであったという。


 山城家は廃絶され、多くの財産を没収されたものの、現当主を含めた血筋のものは新しく今城を名乗り、その後は行政に関わることはなかったとされる。善悪はともかくとして、彼らの人権は守られることとなったのはやはり、水城の関与するところが大きいといえた。嶋沢もあえて追及はせず、それを見守っていた。元当主は後に山城重工の役員として名を連ねるが、経営に参与することもなく、静かに見守るだけであったという。しかし、その孫からは本格的に経営に参与している。


 嶋沢がもっとも危惧したのは軍の解体であったとされるが、それは多少の混乱はあったが、反発もなく進められた。それは彼らが敗戦国の地位というものを理解していたことにあったといえる。そうして、皇国連邦が実施されるころには、各州に一般兵養成学校、航空学校、下士官養成学校などが設置されると、優先的に編入することでより、解決をみている。少なくとも表面上はそうであった。彼らが内心からその意識を改めたのは、日本国の最新技術、軍備に限らず、家電や通信、乗用車など、を知ってからであったといえるだろう。


 ただし、民間ではそれほど混乱なく改革が進められたといえる。唯一の混乱といえば、日本工業規格の導入によるものであり、工業機械がすべて刷新されたことによるものであったといえる。しかし、その導入後の混乱は秋津島に続く短期間で解決されてもいた。それも、部分的には秋津島を追い越してもいる。結局、それまでの封建的な政策から一転、資本主義的な環境が整うことで、多くの住民がそれまで抑ええつけられていた能力を開花させることとなったといえた。


 山城島は面積が四○八九三平方kmというから九州ほどの大きさであったが、移転前はもっと北にあり、結果的に温暖化したといえる。とはいえ、南部以外はそれほど作付けできる農作物は少なかった。だからこそ、南部に集中していた工業地帯を北部に移転、改めて土地改造から実施され、農業地帯へと改変されたが、その結果として、それなりの農作物が作付けできるようになったといわれる。日本国自体が食料自給率が低かったことから、多くの州で食料自給率を上げる方向で復興が行われたからであろう。


 これは資源の多くが北中部に集中していたことにもよる。統一戦争において日本国が南部の工業地帯を破壊していたこともあり、大胆に推し進められたのである。さらに、工業力が進んでいたこと、住民の多くが島を作り変えることに熱心であったことがこれら事業の完成を早めることとなった。農地改造も計画的に行われた結果、予想以上の収穫高を得ることに成功していたといえるだろう。


 ちなみに、フランスの影響を受けていたとはいえ、域内に城、もちろん日本のである、などの古代建築物が多数存在していたことから、多くの時代劇映画や大河ドラマの撮影に使用され、一大映画村ともいえる状況が出来上がってもいた。気候的にはともかくとして、日本国では、皇国のハリウッド、と呼ばれるほど、多くの映画がこの地で撮影され、製作されてもいる。また、各州とも、影響国人との混血が多かったこともあり、日本人主体の映画とはまた異なる映画が多数製作されている。結果、映画人たちが各州から集まることとなり、そのレベルはかなり高いものとなっていたといえるだろう。


 移転暦一五年には秋津島に劣るものの、それなりの発展を見せており、旧日本国となんら変わらないようになっていたといえる。住民の生活環境がもっとも激変した地域のひとつといえるが、多くの住民がそれを感じていない地域であったようだ。つまり、急激な発展にも関わらず、歪みの少ない地域といえたのである。


 また、対フランス語圏との貿易には積極的であり、ほぼ皇国随一ともいえ、これは各州にいえることでもあった。つまり、教科書的ではなく、いずこにおいてもネイティブあるいはそれに準じた教育を受けていたからであろうと思われた。少なくとも、旧日本国の画一的な教育とは異なっていたといえるだろう。


 いずれにしても、山城島の住民たちにとっては、真の意味での改革だったはずである。フランスの影響を受けたものの、のらりくらりと民主化を避けていたため、フランス側の内政干渉が強まっていたが、結局のところ、それを何とかやり過ごしていた。しかし、今度こそ、改革が進むこととなった。彼らは戦争に負け、進駐軍を迎え入れていた、しかも、同じ大和民族による進駐軍であった。当主を失った住民たちは新たな政治システムを受け入れ、それの指し示す改革に没頭していったのである。


 とは言うものの、この世界に現れたフランス共和国は彼らの知るフランスではなかったことは事実であった。後にフランス側と接触した元外交官の知らせにより、それは確実に住民に伝わっていた。それも新たに進出してきた日本国の改革を受け入れた理由のひとつであったかもしれなかった。


 ともあれ、嶋沢を含めた駐留軍の多くは移転暦一一年にこの地を去っている。とはいえ、幾人か残った監視要員の存在もあり、水城は手を抜くことは許されず、改革を推進していかなければならなかったようである。それが移転暦二〇年の発展振りを示していたといえる。


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