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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から這い上がる復讐譚  作者: あきお


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第8話 音は死を呼ぶ

※本作にはTS要素があります。

カツ……カツ……カツ……


恐る恐る周囲を見回しながら、ゆっくりと忍足で歩く。

脅威は何も、魔物だけじゃない。

侵入者を、容赦なく叩き潰すような罠だってあるんだ。


特に、ここはダンジョンの最奥、あの黒い宝石があるような場所だ。

厳重に罠が敷いてあっても、何もおかしくない。

油断は禁物。


あれ?

あの……黒い、宝石?

ふと、気付いた。


「……宝石、回収し忘れた……!!!」


あまりの情報量に、黒い宝石の回収をすっかり忘れていた。

というか台座の上からなくなってたけど、まだあの部屋にあるはずだ!


どデカい死のリスクを背負ってるんだ、お宝のひとつでも手に入れないとやってられない。

俺が急いで戻ろうと、踵を返した瞬間――


『あれ、妾じゃ』


「え?」


『貴様が見た、黒い宝石は、妾じゃ』

「……って事は?」


『既に同化済みじゃ。体内で右腕の“つなぎ”になっておる。売れなくて残念じゃったな?』


冗談だと思いたかった。

しかし、右腕の奥、付け根あたりが、ぞわりと熱を帯びた気がする。

集中して感覚を研ぎ澄ませると、そこからほのかな鼓動を感じる。


「え?じゃあ、なんのご褒美もなしで、危険な場所に跳ばされただけ……?」


『何を言う。妾とこうしてひとつになれたのじゃぞ。光栄に思え』


「女になったことを喜べって?」


『阿呆。人の身で魔人の力を身に受ける。それ以上の喜びなど、貴様らには有り得んじゃろう』


「破裂しないならな!?」


畜生。

こりゃ本格的に、ダンジョン奴隷の腕輪から逃れたことしか、いいことなかったな……。


「奴隷、か」


つい、口に出てしまう。

他の奴らは、どうしてるだろう。

無事ならいいんだが、そうもいかないのが、ダンジョン奴隷だ。


『なんじゃ、貴様。よもや奴隷だったのか?……ふむ、通りでみすぼらしい格好をしておるものよ』


バルフェリアの言う通り、俺の格好はみすぼらしい。

奴隷の腕輪が見えるよう、ダンジョンに似つかわしくない半袖のボロ布の服。

靴は服よりも立派だが、それも囮として不足のないように、というだけだ。


「仕方ないだろ。無能力者は、奴隷にされても文句を言えないのが、常識だろ?俺だってこうなるとは思ってなかったよ」


『……ほう』


バルフェリアの目がギラリと鋭さを増した……ような気がした。

うーむ、やっぱ目がひとつだけだと、イマイチ分かりづらい。


「なあ、お前のその見た目、変えられないの?」


『今は無理じゃな。貴様が強くなり、流せる魔力が増やせねば、どうにもな』


「そっか……――!?」


ドクンと心臓が跳ねる。

床に足を下ろす直前、石畳に触れることなく、何とか止められた。

……よく見ると、ここだけ石畳の色が違う。

これは、罠の可能性が高いんじゃないだろうか。


『おお、よく止まれたのう。てっきり踏むものかと思ったぞ』


あ、マジで罠だったのか……あっぶねえ。


「って、なんでお前はそんな余裕なんだよ。俺が死んだらお前も死ぬだろ」


『いや?貴様が死ねば、身体は妾の支配下に置かれるだけよ』


「……つまり、俺が死んだら身体がお前のものになるだけ?」


『そうじゃな』


だからこいつ、ずっと余裕しゃくしゃくだったのか。

俺が死んでも、コイツは死なない。


「じゃあ、なんで俺に協力してくれるんだよ?」


『うむ。このような形とはいえ、封印から解いてくれた恩もある。しかし何よりも……面白そうだからじゃ!』


「……俺はお前の見世物ってわけか?」


『そんな顔するでない。概ねその通りだが、必要と思えば助言もするし、手助けもしてやる』


「わー、うれしいなー」


なんだよ、俺はサーカスの猿か何かかよ。

いや、違う違う、話が逸れた。

今はこの罠だ。

幸い助言もくれるっていうし、遠慮なく教えてもらおう。


「ちなみにこれ、どんな罠だったんだ?」

『……よく見るがよい』


なんだよ、助言をくれるんじゃないのかよ。

仕方なく石畳の周囲を注意深く観察する。

……すると、石畳の周りの床に、いくつもの穴がびっしりと、規則的に並んでいる。


「……もしかしてこれ、細い槍かなんかが飛び出すやつ?」


『正解じゃ。古典的じゃが、引っかかった者を簡単に殺しうる罠じゃな』


「ひえぇ、危なかった」


俺は罠の石畳を踏まないように、迂回しようと大きく避ける。


『それと――』


カチッ


『罠の近くには、大抵別の罠があるものじゃ』


「言うのが遅え!」


俺の足は、別の石畳の罠を踏み抜いてしまった。

そして間髪入れず、思わず耳を塞ぎたくなるほどの、激しく甲高い耳障りな音が、通路に鳴り響いた。



キュインキュインキュイン!



――ただ幸いにも、大きな音が鳴り響くだけの罠のようだ。


矢も槍も、何もない。

肉体を害することなく、音は徐々に小さくなり、聞こえなくなった。


「うるっせー……なんだよ今の」


『……少々、気を引き締め直した方がいいかもしれんぞ』


「は?何でだよ。デカい音でビビらせるだけの罠だろ?」


『たわけ。貴様は、なぜここまで極力音を立てないようにして進んでおったのじゃ』


「そりゃ、魔物に見つからないように……あ」


『気付いたか。やり過ごすか逃げるか、はたまた戦うか。何か方法を考えるんじゃな』


マズい。


緊張で体が強張る中、急いで周囲を見回す。

しかしやり過ごすにしても、隠れられるような場所はどこにもない。

真っ直ぐに伸びる通路が続くだけで、脇道なども何処にもない。


微かな振動を、足の裏に感じる。

何かが近づいてくる。


まだ姿は見えない。

だが確実に、こちらへ向かってくる。


ひりつく肌が、そう物語っていた。


読んでいただきありがとうございます。

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