おまけの余談 シャノン、怖い従者ができる。
前話で完結予定でしたが、少し嬉しいご感想をいただいたのであと一つだけ。
これで本当に完結です。ここまでお付き合いいただき、有難うございました。
トーマス様を連れて第六師団に帰還すると、彼を見た団の騎士達がざわめいた。
「……あれが噂の、気狂いトーマス」
「……社交界の気狂いトーマスが私達の団に」
その通りだけどひどい言われようだわ……。それにしてもすごく悪名が広まっている。
しかし、当のトーマス様は全く気にする様子がない。私が新たな仲間として紹介すると前に進み出た。
「皆さん、これからどうぞよろしく。いえ、別によろしくしてくれなくても構いませんが、一つ覚えておいてください。シャノン様に言い寄る輩は私がナイフで刺します(今回はきちんと魔力を込めて)。愛する人のために死んでください」
笑顔でこう挨拶したトーマス様だったが、その目は全然笑っていなかった。
第一声で悪名通りの人間であることを証明した彼を横目に私はため息をつく。
「こういう感じの人なので、皆さん気をつけてください。戦闘ではそこそこ役に立つはずです、たぶん」
注意喚起をした後に、側近の女性騎士に私が空けていた間のことを尋ねた。
「こちらの戦場は問題ありませんが、その……、第四の師団長からまた孤立した隊の救援要請が来ています」
「ヴァネッサ先生、まったく……。今はそっちの後詰めじゃないってのに」
私の第六師団は現在、第二師団のサポートにやって来ていた。
愚痴ったものの、先生もそこまで節操がないわけじゃないのは知っていた。おそらく他に手がなくて助けを求めてきたのであり、私が行かなければその隊は全滅するのだろう。
幸いにもこちらの戦場は勝利間近で状況も落ち着いている。
地図を取り出した私は第四師団の所在地を確認。
「仕方ありません、また私一人でさっと行ってさっと救出してきます。未来の夫が待っているかもしれませんし」
私の言葉にトーマス様がピクッと反応した。
「でしたら私も共に参ります」
「いやいや、本当に危険なので駄目ですって。死ぬかもしれませんよ?」
「むしろ望むところです。シャノン様の未来の夫がいるなら刺し違える覚悟です」
「どこに命を懸けているんですか。どうなっても知りませんからね」
時間もないのでこれ以上の説得は諦め、二人で第六師団の駐屯地を出た。
――案の定と言うべきか、高難度の救出作戦でトーマス様は何度か魔獣に齧られて本当に死にそうな目に遭う。けれど、彼はなぜか常時嬉しそうにしていて私をぞっとさせた。




