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シャノン、婚約者を制圧する。


 そうこうしている間にもトーマス様の感情は高まり、危ない方向に走り出していた。


「……もう、こんな日々は耐えられない。……シャノン、僕を愛しているなら共に死んでくれ……!」


 愛していないこともありませんでしたがもう完全に冷めました!

 こ、殺されるっ!


 慌てる私を見てヴァネッサ先生は今度は大きめのため息。


「仕方ありませんね……。はい、対人制圧術4!」


 先生がパンと手を打ち鳴らした瞬間、私の心は切り換わった。

 まるで屋敷でのいつもの訓練のように静かなものに。それによって、混乱していた頭も回りはじめる。


 なんだ、対人制圧術4なら大したことないわ。7や8以降ならともかく。(7は相手が銃を所持している場合で、8以降は相手が複数人の場合)4なんてただ短い刃物を持った単体が相手なだけだもの。


 頭が冷静さを取り戻したことで、ナイフを構えて突進してくるトーマス様の動きも、私は落ち着いて見られていた。


 ……すごくゆっくりだわ。いえ、油断してはいけない。トーマス様からは明確に殺意を感じる。きっとここから本気を出して急激に速度を上げるはずよ。


 …………、速度が上がらない。

 もしかして、これで本気なの? そんなわけ……、とにかく対処しないと。


 一直線に突っこんでくるトーマス様に対して、私は足のステップでさっと横に回避する。彼は私の動きを全く目で追えていなかった。


「き、消えた……?」


 やっぱりだわ、全然見えてない。トーマス様は鍛錬が足りないのかしら?

 うーん……、何かがおかしい気がする。

 そう思いつつも私は、ナイフを握る彼の手を掴んだ。そのままひねり上げると同時に足払いをかける。

 彼の体は空中で百八十度ひっくり返った。


 ズダンッ!


 トーマス様は綺麗に背中から床に落ちていた。

 静まり返る部屋の空気。私はゆっくりと周りの貴族達に視線をやった。誰も彼も驚きの眼差しで私を見てくる。


 ……何かがおかしい。

 違う、おかしいのは私なんだわ。

 傍らに立つヴァネッサ先生の方に振り向いた。


「……貴族は皆、実力を隠していて、誰でも私くらいはできると言いましたよね?」


 先生は気まずそうに目を伏せる。


「……あれは嘘です。シャノンお嬢様の覚えが早くて、楽しくてつい……。お嬢様は現在、騎士団も含めて王国で十本の指に入る戦闘力を持っています」


 そういうことね。道理で全然やられる気がしなかったはずだわ。先生の指導のおかげで、赤子の手をひねるようにトーマス様を制圧できた。


 ……と、感謝するとでも?


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