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ひし形の机

作者: 平榎えい

海の近くのめちゃくちゃ汚い家に、ひし形の机がありました。


偏屈なその机の持ち主はひし形の右側に嫌いなパンの耳を


毎朝放っていました。




偏屈な持ち主はヒゲがぼうぼうの大男で


毎朝食パンの耳だけをとって白いふわふわの


部分に苺ジャムを大量に乗せて食べるのが好きでした。




毎日ひし形の半分にパンの耳を放っておくのでだんだん


溜まっていきました。




偏屈な持ち主は、ひし形のテーブルのすぐ脇にある窓を


数ヶ月前に少し開けてそのままでした。




雨や風が吹いても気にしないのです。




近くの海に住む魚を取るのがめんどくさくなったカモメは


憂鬱な気分で空を飛び、ああ、空を飛ぶのって


なんでこんなにだるいんだろう


と思いながら仕方がなく魚を探していました。




カモメは前を向いて飛ぶのさえ面倒くさくなって


横を向いて楽に飛ぶことにしました。


そうするとどうでしょう、ひし形のテーブルの横で


大男が面倒くさそうに耳のパンをちぎっては


テーブルに放っているではありませんか。




大男がのそのそと部屋を出たのを見計らい、


素早くカモメは窓の隙間からパンの耳を食べました。


うまい!


しかし積まれたパンの下の方は腐っていたので海に投げ捨てました。




それからカモメは毎日パンの耳を食べに行きました。




パンの耳が毎日なくなっていることに


気が付いた偏屈なひし形のテーブルの持ち主は


ひし形の半分に、嫌いな食べ物だとか食べ残しをなんでも載せるようになりました。




時には隣のおばさんがお節介に持ってきた


煮物パイをほおりました。




そうしているうちに大男は部屋がめちゃくちゃ


汚いことが嫌になってきました。




毎日テーブルの掃除をしにくる何者かより


自分がだらしのない生活をしているように思えたのです。




ひし形の半分に置いても仕方がないものを


少しずつ袋に入れて捨てました。




するとどうでしょう、めちゃくちゃ汚かった部屋が


綺麗になったので、その大男は少し爽やかになりました。




カモメは魚を取らなくても良くなったので


最高の気分でした。




ある日いつものようにカモメがパンの耳を取りに行くと


ずっと開いていた窓が閉まってしました。


おかしいな!カモメは部屋の中を覗きます。




すると中には可愛らしい長い髪の女の人が


いて、花瓶に花を生けたりしているではありませんか。




ひし形の机もピカピカです。




カモメはまた魚を取らなくてはいけない日々に


戻ったのだと愕然としました。




その日から、ひし形の横にある窓が開くことはありませんでした。




カモメは魚を取るのが相変わらずめんどうくさいので


だんだんやせ細って行きました。




3年くらいがたって、カモメはガリガリの体で


憂鬱に飛行していました。




前を向いて飛ぶのがめんどうなので


また横を向いて風にまかせてグライダーのように飛んでいたその時です!


あのひし形の横にあった窓を何かが開けようとしているではありませんか。




まだほとんど赤ちゃんのような小さな子供です。




危ない!


カモメはガリガリの体で窓に向かって飛んで行きました




クワワクワワ!


カモメは窓際に飛びつき子供の体を中に押し込んで大声で叫びました。




すると中からドタドタと偏屈な大男が走ってきて


子供を抱きかかえました。




大男とカモメはひし形のテーブルの前で初めて目を合わせました。




大男は大急ぎでキッチンの方に子供を抱えたまま走っていき


何かを持ってきました。


そして、ひし形の半分にそれをほおりました。




カモメは久しぶりの食パンの耳に大喜びしました。




それから毎朝、赤ちゃんのような小さな子供は


皿に乗せたパンの耳をひし形の半分に置いてカモメを待ちました。




土日になると大男と2人で待ちました。




「あ!今日も来たよ!」




子供の高くてよく響く声が今日も窓際に響きます。






-おしまい-



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