第17話『月契の書と、封じられた記憶』
「この書庫の最奥に…『月契の書』があるはずです。」
ラオはどこか怖さを添えながら言った。
「歴代の月姫にのみ伝わる、空文の隠し書…」
旧王宮の書庫。歩んだ光も少なく、少女の呪文のような空気が漂っている。
「これ…だ…』
旧い本を手にした日和は、ひらいた頁の向こう側で、一度息をのんだ。
その光景がバッと闇を切り張って、日和の頭に多くの光の破片が流れ込むように馴染んだ。
——月光の記憶。そこには、一人の少女の面形が浮かんでいた。
「ねえ、いつか二人で、この城をまもるろうね。笑顔をたくさん繋いで。」
それは、日和とネレイアの、かつての約束。
月の魂が二人を繋い、ひとつの燈を汚した。
「ネレイアお姉ちゃん。…やっぱり、会いたいよ。」
日和の手の中で『月契の書』が淡く光を放った。
その514頁には、月の姫達の伝説、『月光の後継』が、漏れなく記されていた…。
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次回『月光の後継と、忘れられた扣結』 そこに絵されていた月姫の姿は、すべて日和と同じ顔。 そして、その側に立つ美しき女の形…それは、まさしくネレイアの過去。
追い続く文章には、月姫の力を分け合った後、夢と記憶を起点に継い、この世に戻ることなく、広い永遠を守り続ける姫たちの約束が記されていた。
しかし、最後には一文。
『その契約が日和によって破られしとき、月は再び行き光り、姫たちは封じられた時間から解き放たれん。』