表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/22

第14話『王宮の陰と、微笑みの姫』



 


即位式は、華やかに幕を開けた。


空には光の魔法で編まれた銀の月が浮かび、広場には王国中の民たちが集い、姫の登場を待っていた。


 


だが――その裏で、静かに忍び寄る影があった。


 


 


王宮地下、封印の間。


そこに佇むのは、黒衣の女。


 


「……目覚めの時は近い。偽りの姫に、真の月は微笑まぬ」


 


その瞳は真紅に染まり、唇には古き契約の呪句が刻まれていた。


 


「第3王女、日和……その“命火”、奪わせてもらう」


 


 


その頃――


 


日和は、玉座の間の奥、即位の舞台に立っていた。


堂々と胸を張り、緊張した面持ちで、壇上に座る。


 


「さあ、日和様。お言葉を」


ラオがそっと促す。


 


「う、うん……えーっと……」


 


ごくり、と唾を飲み込む音が響いたあと――


 


 


「……えっとね! 私、バンパイアで、王女で、たぶん一番のポンコツだけど!」


 


「でも! 生きててよかったって思ってる! だから、みんなの笑顔、守りたいのっ!」


 


 


沈黙。


その後、どこからともなく拍手が起き、やがて場内に大きな笑いと歓声が広がった。


 


 


「まったく、予想通りというか……」


ラオが小さく笑い、スカートの裾を揺らす。


 


 


その瞬間だった。


天井の紋章が淡く赤く染まり、魔力の波動が王宮全体に走る。


 


「なっ……この波長、封印の間から……!?」


 


警鐘が鳴り響く。


日和ははっと顔を上げた。


 


「……誰かが来る」


 


(分かる……胸の奥が、冷たくなる……)


 


 


ラオが剣を抜き、日和の前へ出る。


 


「姫様、下がってください」


 


「ううん。わたし、逃げないよ」


日和はゆっくりと立ち上がる。


 


 


「来るなら、来ればいい。……笑顔で迎えてあげるから」


 


 


その瞳に宿る光は、確かに“姫”のものだった。


 



---




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ