第八話
「…何故、そう思った。」
恐る恐る問うてみる。
エリスは、コテンと首を傾げ、さも当たり前の様に言った。
「だって…私には、色んなものの、中身が見えるんだもん…。」
「…?それは、どういう事だ?」
「貴方のフードの中身の、黒銀の髪の背が私より小さい女の子が私には見えるってこと。」
思わず、硬直した。エリスが言っている女の子の特徴。それは、わたくしにドンピシャであてはまる。
冷や汗が頬を伝った。
透視能力。
その言葉が頭をよぎった。
それは。魔力視よりもさらに強力かつ特殊な能力。
希少すぎるが故その力は幻とされてきた。
その能力を、エリスは持っている。
信じられないが、確かにこうしてわたくしの事を見破っているから、本当なのかも知れない。
「じゃあ、私が持っている袋の中身は?」
「金貨でしょう?凄い沢山入ってるよね。」
「…じゃあ、これは?」
「それはね、…」
などと試しに他の物でも視えるかどうか試してみたが、百発百中だった。
…この子、このまま放りっぱなしにするには危険すぎる。
透視なんてできるとバレたら、奴隷にされ、売買されたり、何処かの貴族に監禁され、酷い目に遭う確率が高い。
そうでなくとも、誰かに利用される事はほぼ決定事項だろう。
…わたくしが先に貰っちゃっても、良いよね?
、口を開く。
「透視能力は、どうやら本当みたいだ。
…エリス。どうだ、皇城うちに来ないか?私の住むところだったら、今いるスラムよりかは幾分かマシだと思う。
それに、ご飯もあるぞ。」
エリスは、ぼうっとした顔だったが、ご飯という単語を聞いた途端エリスの目がかがやき、バッとこちらに振り向いた。
「…ご飯、食べれる?」
「あぁ。約束しよう。」
ご飯は、今日稼いだ金で一ヶ月分はもつ。これから冒険者業で稼ぐ事を考えれば、一人養う分には何の問題もない。
皇城に住んでいるというのにご飯は市井のものとは、ちょっと変な気もするが、市井のご飯の方がわたくしは美味しくて好きだ。
…と、それはどうでもよくって。
エリスがどうやら何かを決意した様な顔でわたくしを見ている。
「私、一緒に行きたい。皇女様、ついて行っても良い…ですか?」
その声に、何だか健気さを感じ、わたくしはハハっと笑う。
「…勿論。帰りましょ、わたくしと一緒に。」
そう言いながら、エリスに手を差し伸べた。
そうして、皇城の隅にある、元々は母様の離宮だったところに帰って来たのだが。
「…何ですか、これは。」
「私…わたくしの部屋だけれど、何か?」
エリスは何やら、この部屋を見て様子が変になった。
…片付け、した筈なんだけどなぁ。
その証拠に、物の山の中に一本の道ができている。
流石にわたくしも足の踏み場が無いところにエリスを連れて行くのは申し訳ないと思って、急いで整理したのだけれど。
だがそれでも、エリスは許せないようで。
「この部屋、ゴミ屋敷じゃないですか!貴女、どれだけ生活力が無いんですか、一体?!」
と、叱られた。
「だって…別に散らかってても、仕事には支障は出ないし…」
「だとしても、限度ってものが有るでしょう!私、この部屋を綺麗にしないと気が済みません!
アイティア様が手を付けたら散らかりそうな予感がするので、暫く其処で待っていてください!!」
エリスはメイド服の袖をたくし上げ、高速で片付け始めた。
先程、クローゼットから余っていた昔のメイド服をあげたのだが、すっかり様になっている。
この子、メイドの才能有りそうじゃない?と、わたくしは確信した。
…数分後。
「エリス、凄い…!」
ゴミだらけの部屋は、以前の様な高貴さを感じさせる、チリひとつ落ちていない清潔な部屋へと進化を遂げていた。
素直に凄いと褒めたけど、エリスはジト目でわたくしを見てくる。
「アイティア様が出来なさすぎるだけです。」
その声は余りも無常で、何の躊躇いもなくわたくしのメンタルを削りにきている。
わたくしは思った。
…なんか、最初とキャラ変わりすぎじゃない、この子?!
すっごく怖いんですけど!!
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