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第五話

“帝都に土竜がいる”


その知らせは、ギルド内を混沌とさせた。


いち早く事態を把握した受付嬢が、「聞いてください!」と叫び、視線が彼女に集中する。


「緊急クエストを発表します!帝都にて、土竜が二体発生しました。聖級以上のランクの方は至急現地に向かってください!!」


「二体、だと…?!」


土竜。それは、災害級の被害が予想される程の危険な魔物だ。


二体いるとしたら、下手すれば帝都が壊滅するかもしれない。


「だけどよぉ…ここにそんな高ランクの奴なんていねぇって!!」



そう。高ランクの冒険者は数が少ないし、その中でも毎日ギルドに来る人なんてもっと一握りだ。


向かってくださいと言われたが、席を立つ者は一人としていない。



ここにいる人達は、どれだけ自分が頑張っても、何人かで協力したとしても土竜を倒せない事を悟っている。


冒険者はお調子者がいるイメージだが、実力を弁え、できない事はやらない主義の者の方が実は多いのだ。




誰もたたないのを見て、先程ギルドにやってきて叫んだ男が絶望の一歩手前の表情をしながら、土下座した。


「誰か、誰でもいいから助けてくれ!!あの辺りには、家族がいるんだ!どうか頼むからっ…!!!」


ほぼ、祈りのようだった。


ひたすら愛する者のため、助けを乞う。



その様子を見て、心が揺さぶられる。




「わかった。私が行く。」



気づけば、そう言っていた。


「な、何を言っているんですか!貴方、駆け出しの新人じゃ無い!死ぬわよ?!」


意外にも、最初に反応したのはあの茶髪のギルド嬢だった。


「知っている。だが、このままだったら帝都は壊滅するかもしれない。民を助けるためなら、私は命を犠牲にしたって構わない。」


それに、民を守り、導くのはわたくし達皇族の役割でもあるのだから、その覚悟はあってとうぜんのようなものだ。と、心の内で呟く。


「助けてくれるのか?!ありがとう、ありがとう…」


一方、男は既に涙を流している。


「まだ助かると決まった訳じゃ無い。だが、やれるだけの事はやる。」


そう言い返して、すぐさま転移魔法を展開する。



「なっ、これは?!」


他の冒険者達の驚く声がするが、無視だ。



転移魔法は珍しいから後で根掘り葉掘り聞かれそうだが、緊急事態なので使わざるを得なかった。


転移魔法が発動し、目の前の景色が変わった。




そこには、建物を次々と破壊していく巨大な土竜と、土竜から必死に逃れようとしている人々がいた。


すかさず、魔法を展開していく。


「『我が名はアイティア。皇女の名により命じる。黒銀よ、民の脅威を滅し給え。』」


と小声で唱えると、黒銀の霧が土竜達を襲う。


この魔法は名を名乗る必要があるので、人に聞かれない場所でないと使えないが、運が良かった。


この辺りに住んでいる人間は既に避難し終えたらしいので、遠慮なく使えた。




土竜はしばらくもがいた後、動かなくなり地面へ落下した。


「…ふぅ、これで一件落着か。」


取り敢えず、土竜は倒した。


この死体どうしようと考えていると、冒険者らしきガタイの良い男達が駆けてきた。




「大丈夫か?!土竜は…まさか、もう倒したのか?」


「ああ、そうだが…いけなかっただろうか。」


「いや、民への被害を考えるとむしろ良くやってくれた。感謝する。ところで、お前の名はなんだ?それだけ強ければ名前を知ってるはずなんだが、分からん…」


「分からないのも無理はない。私はアーズ。今日冒険者登録をしたばかりの駆け出しだ。」


「か、駆け出しだと?!」


「そうだ。ところで、お前も誰なんだ?かなり強いようだが…」


わたくしの目は特別性で、魔力や闘志が見える。


この男は、一見人の良さそうな顔ををしているが、闘志が常人のそれではない。


男は一瞬目を見開いた後、人懐っこい笑顔になった。




「俺はルカルド、冒険者帝国ギルドの、ギルマスをしている。これからよろしくな、アーズ。」


人畜無害な見た目の男は、まさかのギルドのお偉いさんだった。

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