第三話
そう決意したわたくしだったが、強くなるって具体的になんぞや?とふと疑問に思った。
強さといっても、色々ある。
物理的な強さは勿論、精神的なものとか…考え出すとキリがない。
…深く考えるのは後にして取り敢えず今は、物理を鍛えよう。うん。
一応母様に剣や体術の心得は仕込まれているので、そこからどれだけ実践や成長を経て強くなるかがポイントだ。
実践といえば、やはり冒険者だろうか。
冒険者は魔物の討伐がメインの仕事だし、いつ出勤しないといけないかも決まっていない。
さらに、偽名を名乗る事も許されている。
わたくしからすれば、実践経験は積めるし、正体を隠せるしでこれ以上ない最良の策だ。
というわけで早速、冒険者ギルドにやってきた。
こういうのは、やると決めたらすぐにやる性格なのだ、わたくしは。
考え無しと言われようとも猪突猛進、有言実行が前世でのモットーだったのもあり、以前とは比べ物にならないくらい今のアイティアは行動力が半端ない。
正体がアイティアだとバレないように、軽く認識阻害のかかった仮面と大きなフードを被っているが、逆に怪しくて他の冒険者にジロジロ見られてしまっている。
まぁ、アイティアだと見抜かれることさえ無かったら別にいいや、と思いそのまま受付へ行く。
受付は、見るからに優秀そうな眼鏡を掛けた茶髪の女の人の所が空いていたので、そこに行く。
受付嬢って意外と人気の職業らしいので、事実その競争を勝ち抜いたと考えたら優秀に決まっているだろうが。
「初めて冒険者登録をされる方ですか?」
「あぁ。」
声は仮面の機能のお陰で機械音声のような声に変換されているので、敢えて口調を変えて話すことにした。もちろん、深い意味はない。
こうしたらバレにくいかもしれないとなんとなく思ったからだ。
「では、こちらの用紙お書きください。名前さえ書いていれば構いませんので。」
「了解した。」
ギルドの受付嬢に無難な相槌を打ちつつ、ササっとわたくしは登録を終えた。
名前は“アーズ”にした。
ミドルネームで、しかも濁音がついてるからわたくしからしたら覚えやすいし、呼ばれたら直ぐに反応できそうという理由からだ。
「アーズ様ですね。冒険者ギルドでは、依頼を達成する程ランクが上がっていく仕組みになっているので、これから頑張ってください。
初めての方は、腕に覚えがあったとしてもまずは低ランクの依頼から取り組んでいく事を強くおすすめします。」
確かに。最初から無茶をすると、実力が思ったよりも足りず下手すると魔物の餌食になってしまう輩が居るからこその、この説明なんだろう。
わたくしも同じ轍を踏まないように、低ランクの依頼をやってみることにした。
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