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第二十一話

更新ボタンを押し忘れていました、大変申し訳ございません。


「エリス、ただいま!」


 わたくしは大きな声を出して、帰りを知らせる。



 そしてすぐに、エリスがわたくしを出迎えにきた。




「お帰りなさいませ。随分と早かったですね。」



「うん。ラド兄様がやらかしてくださったからね。

 …あと、ちょっとやりたい事を思いついちゃったの。」






 それを言った瞬間、エリスの顔はハッキリと歪む。



「‥また何かをやらかすつもりですか?」





 …わぁお、なんてこった。エリスのわたくしへの信頼が地に落ちているじゃないか。



 一体、どんな事をすると思われているのやら。




 わたくしは、あの見栄っ張りの為の料理を何とか有効活用する方法が無いか考えようとしていただけなのに。



 ラド兄様やラーゼ姉様と別れた後ぼちぼち考えていたのだが、あの料理は節約して量を減らすなり、余った分を孤児院とかスラムの人達の炊き出しに使ったりと、再利用が出来ると思ったのだ。



 保存方法という課題はあるが、結構良い案なのではないかという自信がある。




「今回はまともなものだから安心して。あ、でもエリスにちょっと聞きたい事があるんだよね。」



「…何でしょう?」



「食材を保存できる魔法とかって知らない?」



「…?聞いた事がありませんね。」






 …そうだよねぇ、わたくしも聞いたことないし。



 詳しく調べたらあるかもしれないけど、少なくとも平民の間でも生活で使う様な機会は無いみたいだ。




 皇城で出た料理を市井で出回らせるには、結構時間が必要だと思う。



 こういう時こそそんな便利な魔法があればいいな、と思ったんだけど…やはりそう上手くはいかないようだ。




 ここは父様に相談してみる事にしよう。





 わたくしはこれから起こる事を予感しながらも、にっこり笑ってエリスにこれからする事を白状した。




「そっか。ありがとう。じゃあわたくし、今夜父様に直談判してくるから、離宮のこと頼んだよ!」



「…は、はぁぁ?!」




 エリスは今度こそ大きく目を見開いて、わたくしを引き留めようとする。



「え、ちょっと、待ってくださ…」



 わたくしはそんなエリスの手から逃れる為に、一目散に入ってきたばかりの離宮から飛び出す。




「じゃあね!わたくし、もう行くから!」



「アイティア様ぁ…帰ったら覚悟してくださいよ〜?!」




 うわぁ。エリスの地鳴りを起こしそうな低い声が聞こえる。


 帰ったら確実に説教コースだよなぁ。





 まぁ取り敢えず、わたくしがやる事は先ほども言った通り料理の使い道について考える事。



 怒られはするが、これで一人でも多くの民が美味しい料理を食べれるならわたくしからすると安いものだ。










 そしてわたくしは、暫く冒険者ギルドで時間を潰し、先程のパーティーが終わるのを待った後に父様の部屋へ突撃しに行った。




 …勿論、扉から堂々と入ってきたら護衛に止められるだろうから、父様が座っている席の真後ろにある窓からひょっこりと。




「こんばんは、父様。」



「う、わぁぁっ?!アイティア?!何故窓から入ってくるのだ?!」




 父様はわたくしが声をかけた瞬間飛び上がり、此方へ振り向いた。



 わたくしは、そんな父様に構わず淡々と説明する。




「今の時間だったら、衛兵に止められると思いましたので。

 それに、窓からだったらバレませんし…」




 父様は、未だ胸に手を当てて驚いた表情をしたままだ。



 よっぽどびっくりしたのだろう。




「アイティア、頼むから余をあまり驚かさないでくれ。心臓がいくらあっても足りぬ…。」




 疲れた様な父様の声にちょっぴり罪悪感を感じるが、善は急げと言うし、早めに聞いておきたかったので仕方ない。



「それはすみません。少し、話したい事がございまして。」



「何だ?ラドイーデの文句か?」




 父様は、わたくしが今日ラド兄様と話した事を知っているらしい。


 が、残念ながら見当違いだ。



 本題はそれでは無い。



「パーティーなどで出る、大量の廃棄するしかない料理についてです。」



「…ラドイーデが倒した食べ物のことか?あれが、どうかしたというのだ?」




 当然だが、皇族や貴族に節約という二文字はない。



 だから、廃棄する料理がある事は当たり前すぎて、今みたいにただ悪戯と思われているが、平民達からすればどれだけ罪深い事か。



 あれで平民は何日分満足に暮らせることだろう。


わたくしも、エリスと出会う前だったらそう言ってカンカンに怒ったに違いない。






 本当の平民や、孤児達の暮らしには目も向けられていないのだなとわたくしは父様の言葉で改めて実感する。



 …これは、やはりめちゃくちゃ頑張って改善しないと。





 わたくしには、冒険者や転生者としての知識、そして無気力時代の積み重ねがあったから気づけた。



 でも、他の皇族達のように蝶よ花よと育てられ、食べ物に困るという経験がない者は中々容易に気づく事が出来るものではない。



 だから、せめてその人達が理解できる日が来るまではわたくしが取り敢えず何とかしておこう。






 …後で皇帝になる皇族の誰かに丸投げすれば良いし。






 という訳で、民が満足な食事を食べれる様に少しでも良いから改善していかないと、ともう一度そう決意して、口を開く。





「パーティーで余ってしまう料理、平民達に瑕疵する事は出来ませんか?

 どうせ捨ててしまうのならば、有効活用した方が良いと思いまして。」




 父様は、うむうむと頷きながら、しかし疑問を持ったような顔をする。




「料理か…確かに、あれだけの物を捨ててしまうのは勿体無いな。

 だが、のようにして実行するつもりだ?そんな上手くいく方法など…」





 確かに、父様の仰る通り。



 そんな都合のいい魔法は存在しないし、費用の面でもさらに負担が増えて面倒臭い事になる。





 じゃあ、どうすればいいか。




 そんなの、答えは一つしかない。










「魔法を作れば黒銀魔法を使えば良いのです。」






 発動条件は、民を害する対象を排除する…まぁ、要するに民に利益がある事。


 本にはそれしか書いていなかったが、試してみた事があるので知っている。




 案外融通が効くのだ、この魔法。



 民を対象とする種類のものなら、大体使える。




 黒銀魔法を他人に勘付かれることはアレだが、民の為なら少しくらい荒使いしても良いだろう。





 わたくしは、心の中で黒い笑みを浮かべて、ニヤッとする。




 …黒銀魔法を与えた何処かしらの神様へ。



 別に使い方は間違ってないし、許されるよね?







 わたくしはそう誰かに向かってドヤりながら、父様の疑心暗鬼な目を見つめ返したのだった。




ご覧いただきありがとうございます。


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