第二十
お久しぶりぶりです!
投稿再開します!
ここまでついて来て貰った読者様、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡
は、わたくしを指さしてラーゼ姉様に問うた。
「ラーゼ姉上、こいつがあの第一皇女なのか?!」
「おい、ラド。こいつと呼ぶんじゃない。アイティアと言え。失礼だぞ。」
ラーゼ姉様は、こちらへ来た少年の頭を鷲掴みにし言い聞かせる。
しかし、少年は大して懲りた様子もなく、元気よくこちらに話しかけてきた。
「アイティアか、よろしくな!俺はラドイーデだ。ラド兄様と呼べ!」
「はぁ…。」
まるで、ガキ大将だ。
こう言う場合はどういう風に反応したら良いか分からず、中途半端な返事をするが、少年…ラド兄様は対して気に留めた様子もなく。
「それにしても、アイティアは父上に似てるなぁ。…俺は全然似てないから、羨ましい!」
とわたくしの顔をまじまじと見る。
…まるで動物園のパンダになった気分。
ラド兄様はこの顔を羨ましいと言うがわたくしはそうは思わず、言い返してしまう。
普段から、ほんの少しだけその事を気にしているからかもしれない。
少しだけ声が硬くなってしまったが、そこはご愛嬌だ。
「確かに、自分でも似てると思いますね。…ただ、それが良いとは思いませんけど。」
…わたくしは、以前から言っているが母様に似たい。心の底から。
父様の顔は不便な事ばかりで嫌になってしまいそうなのだ。
だが、ラド兄様はわたくしとは違う意見のようなので、不思議そうな顔をする。
「何でだ?父上に似てると言われたら、俺は嬉しいぞ?」
それは、父様が大好きだから思う事だ、と呟く。
「わたくしは、別に父様が大好きな訳ではありませんから。そう言われても嬉しくも何ともありません。
それにわたくしは女の子ですし、母に似たと言われた方が嬉しいです。」
そう断言するわたくしにラーゼ姉様が、うんうんと頷きながら賛成する。
「確かに、皇后様はとても美しかったからな。ティアが似たいと思うのも頷ける。」
「ふ〜ん、そうなのか…。」
ラド兄様はあまり興味が無さそうだ。
どうやら父様に関わることしか興味がないらしい。
…あのみるからにヘタレっぽい父様に似たいって、逆にどうしてそう思えるんだ?とこっちが不思議に思う。
この顔は威厳ないし、顔を見せただけで正体バレるしで、剥ぎ取ってしまいたいと思う事が何回あったことか。
いや、剥ぎ取れないのはハナから分かってるけども。
それだけ思う事があったのだ。
一応、ラド兄様に聞いてみた。
「ラド兄様は、どうして父様に似たかったのですか?」
気になったので聞いてみると、ラド兄様は瞳をキラキラさせてこう言った。
「父上は、俺にとっての目標だからだ。俺はいずれ、父上のような立派な皇帝になってみせる!」
…なんかすごい熱量で言うけど、皇帝なんて興味ないなぁ、わたくし。
ラド兄様には悪いけど、若干聞いて損した。
正直今は冒険者業に集中してるので、そこまで気を回す余裕なんて無かったしね。
「へぇ、そうなんですかー。頑張ってくださーい。」
というわけで、共感できる部分が一ミリも無かったのでものすごく棒読みで返事してしまった。
そんなわたくしの様子に気づいたラド兄様が、怒った様な顔でわたくしに詰め寄る。
「おいお前、今俺の事馬鹿にしただろ?!どう言う事だ!」
…あ、話を真面目に聞いてないのは分かったんだ。思ったよりラド兄様が鈍くなくて安心した。
わたくしの中でラド兄様の第一印象のアホっぽさというか、空気が読めなさそうなクソガキといった印象を訂正する。
…まぁ、どっちにしろ皇族なのかと目を疑う行動も多い訳で。
大きな夢を持つのは別に良い事だと思うが、いかんせん行動が駄目だ、この兄は。
こんなままで本当に皇帝になれるとは思えない。
先程倒してダメににした食べ物なんかも、せっかく美味しそうだったのに勿体無い。
まずはこの悪癖から直さないといけないだろう。
と言う訳で、わたくしはラド兄様に悟す。
「だって父様の様な皇帝なら、先程みたいに国民が精魂込めて作った食べ物を粗末に扱うはずありませんもの、ねぇ?」
「ぐっ…だが、あんな量食べ切れる訳でもないのに、出してくるのが悪いんだろう!
幅も取るし、ほぼゴミの様なものではないか!」
ラド兄様は、思ったより的を得たことを言っている。
確かに、こう言った貴族や皇族のパーティーでは財力や権力を見せつけるために華美な装飾や大量のグルメやスイーツが出される。
実際、ラド兄様は何個ものテーブル上にあった食べ物をダメにした訳だが、パーティー自体に支障は出ていない。
ただ散らかって、ちょっと近寄れないなくらいの感覚だ。
なんだ、ちゃんと考える脳はあるじゃないか。ラド兄様を少しだけ見直した。
だが、だからと言ってゴミ呼ばわりは良くないだろう。
わたくしは、小さな子供に言い聞かせる様に指を立てて言う。
「今、食べ物を“ゴミ”と言いましたね、ラド兄様?
わたくしは、それがゴミだとは思いません。
…実際、その残ったゴミを食べて何とか生き延びている人も居るのですよ。
沢山の人の命を救えるのに、ただのゴミだと言うのは失礼です。」
この余った食べ物は、料理人や使用人にまず賄いとして与えられる。
その後は廃棄されるが、暫く置きっぱなしになり放って置かれているのでわたくしはよく其処から食べ物を拝借していた。
頻繁にある訳では無かったので何も無い間は苦労したが、とても助かっていたのに。
あれがゴミだと言うなら、わたくしはそのゴミを漁るカラスみたいじゃないか。
「え、そうなのか?!」
どうやらラド兄様は知らなかったようだ。
まぁ、逆に知っているわけがないんだけどね。
「ですから、食べ物を粗末に扱わないでくださいませ。
ラド兄様が暴れるほど、助けられる民の数は減るはずですから。
…もう、こんな事しませんよね?」
わたくしは、ラド兄様を試す様な瞳でじっと見る。
どんな答えを返してくるかによって、わたくしはラド兄様への態度を変えなければいけないから。
…因みに、今のこれは忠告ではない。忠告に見せかけた、最後通告である。
ラド兄様がそれでも行動を改めなかった場合、わたくしはラド兄様をあっさりと切り捨てるつもりだ。
例え血が繋がっていようと、いずれ不利益が生じる様な者は置いておけない。
ラド兄様の《《これ》》は、今は笑って流せるがそれを許してしまうと元々の性格も相まって暴君になる可能性だって大いにあるわけだ。
ましてや皇帝など、成らせる筈もない。
穀潰しはいつか、わたくしが徹底的に追い出す所存。
なので、そのリストに加わるかどうかの瀬戸際に居るわけだ、ラド兄様は。
何らかの雰囲気をわたくしから察知したのか、ラド兄様は顔を青くして
「す、すまん!これからはそんな事しないから、許してくれ!!」
とバッと頭を下げて謝った。
…いや、別に空気を読んだわけでは無さそう。
ラド兄様の視線の先を見て、納得する。
多分、ラーゼ姉様に示されたのだろう。
ラーゼ姉様は、やはり身内に甘い。
厳しいと言う定評があるラーゼ姉様だが、それは愛ある故だ。
取り返しがつかなくなる前に躾をして、何とか皇族として生きていける様にしようと言う教育方針だからこそ、こうして悪戯をしても叱りはするものの、それ以上の処罰はない。
だが、わたくしは違う。
皇族として相応しくない振る舞いをした時、わたくしは最低でも必ずそいつを平民に堕とすだろう。
わたくしの最愛は、皇族ではない。
…わたくしは、民の為に在る皇女だから。
ラーゼ姉様は、多分それを分かっている。というか、何となく気づいていると思う。
故に今、必死に合図をしてラド兄様の反論を防いだのだろう。
…まぁ、今回は見逃そう。まだラド兄様は子供だから。
これに懲りて、真面目になる可能性だってあるのだし。
それに、この大量の料理を無駄遣いしない為にはどうしたら良いか対策を考える方が先だ。
「…許します。二度目は有りませんからね。これから、よろしくお願いします。ラド兄様。」
わたくしは軽くお辞儀をして、当初の予定通りさっさと凍りついたその場から退散した。
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