第92ゲーム『1つの世界とおかえりなさい。』
世界が戻りつつある!!
天井には師匠と僕らが開けた穴があるけど、上には学校を支えるほどの土があるんだ。
このままだと押しつぶされてしまう。
「まずい!!脱出しないと!!」
「でもどうやって!?」
ナミカも慌てふためいている!
動けない人達があまりにも多すぎる。
黒幕たち2名。
師匠……。
スミさんとハナビさん、ヒバナさん達はバッテリー切れ。
今にも天井の土が降ってきそうだ。
くり~む君とリュフォーは天井が崩れてきそうなのを察知したのか猫らしい反応をしている。
仮にここから昇れたとしても僕が担げるのは1名だろう。
夏祭りでもらったバフの感じから僕と1名は担いで脱出できる……。
選べっていうのか……。
こんなのトロッコ問題じゃないか!
この選択肢はダメだ!
仮に能力を使って上から降ってくる瓦礫を防げても生き埋めなことには変わりない!
そうなればさすがに能力を使ったとしても都合のいい全員脱出はできない!
このままいけば人生が詰んでしまう!
まてよ……確か昨日のビクトリアの予言……。
【結局は地面を超えなくてはならない。】
が、今の状況だとして……。
【『あめちゃんパチパチ』のA袋を先に入れるのを阻止しなければ人生が詰む。】
【オルガンのドの音。】
【時々止まる。】
【明日、時間はチューインガムということを知る。】
この4つ。
この4つの予言の意味が分からない。
どれか一つははずれのバグ予言だ。
だがもし仮にここから脱出し家に帰れる方法が予言にあるなら……!
「みんな!このままだと生き埋めだ!
だけども昨日された予言で回収されていないのが4つある!
このまま全員帰る方法があるならきっとこの4つの予言のどれかだ!
何か心当たりがあるなら教えてくれ!」
僕はみんなと予言の内容を共有する。
もう時間がない。
まず、あめちゃんパチパチは確かケムリさんから受け取っている。
これを使ったところでどうしろと?
オルガンのドの音……。
オルガンなんてない!!
天井は迫ってきているだけだし!!
時々止まる……何が!?
時間はチューインガム……。
チューインガムなんて関係ないだろ!?
ビクトリア~~!あいつが余計な予言をしたからどれが外れか混乱するじゃないか……。
最後の最後までこれかよ!!
「チューインガム……引き延ばす……。
時間が引き延ばされてるんじゃない?」
倒れているハナビさんの発言に少しハッとする。
「元の世界に戻り始めているなら、時間の感覚も……。」
「多分、アタクシ達全員一般の人からしたら素早くか遅く動いているほうだと思う。
姉の感じからして恐らく若干アタクシ達の方が早い時間感覚。」
つまり全員、時間の感覚がおかしくなって素早く移動できる。
おそらく天井が落下してくるのもゆっくりに見えるだろう。
それでも全員助からない。
これが恐らく
【時々止まる。】
【明日、時間はチューインガムということを知る。】
この予言たちだ。
時間がゆっくりになる、だから時々止まる。
あるいは天井の落下がゆっくりという意味を持つんだと思う。
「ちょい待ち!ってことはまだ、だれかに豪快に助けを呼べる猶予があるかもしれない。」
「だが、リュフォーはただの猫になっちゃったから、ここへ転送できないよ。」
「それにアンテナは圏外だよ。地面の中だから!
ホーリーたち大人につながるトランシーバーもさっきから繋がらないよ。」
ナミカとヒバナさんの会話から推測するに呼ぼうにも圏外、そして移動距離……。
「…………1人だけ何とかなるかもしれない人物がいる。」
「それって?」
「テルお姉ちゃん……。
飛行能力があって六本の腕をドリルのように変形できるからアカリお姉ちゃんと協力して、磁力のカタパルトのようなものを使えば。
ここまで来ることは容易なはず……。」
なるほど……となると問題は。
「通信はどうする?」
「せめてアタクシ達に電力があれば出力を最大にすればギリ通信できなくはないと思うけど……。」
師匠の時にも思ったけどエネルギーが足りないから、できないのか。
急がないと天井が崩れるかもしれない……。
電気になりそうなもの…………。
僕は周りを見渡す。
崩れ落ちそうな天井、震える仲間達。
走り回るリュフォーと倒れているリュフォーの身体。
あ、電気があればいいのなら……。
「ハナビさん!リュフォーの身体!
まだ電気残ってましたよね!!」
「……それよ!!」
「「ウェええ……!?」」
ハナビさんはそれだっていう顔をしているがほかの姉妹2名はすごくげんなりしている。
「あたいは嫌だからね!
だってそれ、男の死体のへそにキスするようなもんじゃんか!」
「病室の時も思ったけど、ハナビ姉様!ものすごく気持ち悪い!」
機械人にとって、そういう感覚なの!?
「四の五の言ってられないの!」
ハナビさんはコードを背中からだし、僕はそれを病室の時に見たリュフォーの耳の裏にあるコネクタにつなげる。
「急速充電するから、あとでお腹下すだろうけど。
仕方がない!テルお姉ちゃんに広域電波でつなげるね。」
ハナビさんが通話をかけて数分後……。
もう落石がすごく、僕らの頭上に天井がギリギリまで迫ってきている。
「テルお姉ちゃん!!
助けて!!」
ハナビさん達だけで通話している。
スピーカーにするような余裕もないんだろう。
「天井が迫ってきてるの!!
このままだと死んじゃう!!
ヒバナの学校の地下!!」
息をのむような時間だ。
「もう時間が無いの!!2611お姉ちゃんッ!!!」
ハナビさんの絶叫と共に壁がきしみ
いよいよ秒読みだ。
そう思った矢先、天井がぶち抜かれていく。
これまでかと思ったが、それは先ほどまでの通信相手の腕だと判明した。
「六手解体ッッ!!
助けに来たわよ!!妹達ッ!!」
テルさんだ!!
いやそれだけじゃない!!ケムリさん、アカリ先生、レンガさん。
蒲公英姉妹全員が駆けつけてくれた。
そうか師匠がここまでぶち抜いて来たから
「アカリとお姉様が謝りに来てからずっとスタンバってたわ。
ハナビが信号を出してくれなければわからなかった。
さぁ、みんな掴まって!!」
僕らは姉妹の背中へ乗って無事地上へと救出される。
だがリュフォーは猫の身体だけ救助されたのだった……。
▽ ▽ ▽
地上へ出て1,2時間気絶していたようだ。
疲れか、僕は少し気絶していたようだ。
身体をゆっくり起こす。
周囲を見渡すと学校のグラウンドに見えたが、学校は地盤沈下とでも言うのだろうか地面に半分埋まっていた。
周りは警察と消防だらけで、テロ事件の時よりも混沌とした状況だ。
朦朧とする意識の中、ナミカの手が僕に絡まっているのに気が付く。
「おはよう。おかえりなさい。ナオト。」
僕は思わず、ナミカを抱きしめる。
「……ただいま。ナミカ。」
そう言った時、周囲の視線に気が付く。
だいぶ二ヤついている友達の顔を。
「何見てんだよ。」
「いや、豪快な帰還おめでとう。」
「お疲れ様なの。みんな。」
タクロー、そしてようやく世界が戻ってきたおかげで合流したんだろうメルカの姿がそこにはあった。
――だが……ここにリュフォーはいない。
「ねぇ……リュフォーは…………どうなったの?」
メルカのその質問に僕らはうつむく。
「リュフォーは……。」
何かを察して青ざめるメルカ。
僕らだって彼とお別れなんてしたくなかったさ。
――大切な友達とお別れなんて……。
そう思った時スマホから電話が鳴り響く。
画面を見てみると、ありえない名前の表記がそこにあった。
『リュフォー』と。
僕は思わずすぐさま電話に出る。
「リュフォー!?」
「「「ええ!?」」」
三人が驚く中、近くにいた猫が駆け寄る。
「にゃお。」
『ただいま。』
「ほ、本当にお前なのか!?」
猫を見つめる。
『うん。まぁ突入する前の記憶しか持っていないけど……。』
「どういうことだ?」
「私が頑張ったからだよ。」
僕らが困惑しているとハナビさんがレンガさんと松葉杖に支えながら、やってくる。
「ハナビさん?」
「私の機能は高度ストレージ。
リュフォーの中で『最もリュフォーである一部の記憶』をバックアップとして、私と警察に借りた数十個の記憶媒体にコピーしておいて、さきほどレンガお姉ちゃんに協力してもらって猫の体の中に入れさせていただきました。
ゲームが停止しても自分が自分であるために、突入前にあらかじめリュフォー君と仕組んでおいたのよ。」
「そ、そういうこと……。
ふひひ。なかなかニッチな趣味を持った兄機だったなのだぜ……。」
「にゃぁあぁ……。」『いちいち言わないでください。レンガさん。
記憶を覗かれるの恥ずかしいんですから……。』
「さーせん。」
「にゃぁん。」『ちなみに基礎的な人格や人間でいうところの魂はこの猫の身体に入っているから、記憶さえ取り戻せればいつだってボクさ。』
「猫と人間の身体を行き来するリュフォー君しかできない芸当だわ、こんなの……。」
ああ、だからハナビさん達は、別れの言葉が質問じゃなかったのか。
しかし倫理的に問題が……と、言いたいところだけど僕はリュフォーとまた話せるだけでも十分嬉しい。
ゲーム終了時に自分の消えてしまうためによくやったよ……。
記憶はゲーム突入前の物だけど……。
「にゃ」『人間の身体は恐らく地面に押しつぶされたけど、これからは猫として君たちのそばにいるよ。』
「……あ、あとおまいら…………。
あっち見てみそ……。」
レンガさんが指さす救急車の前。
テルさんとケムリさんが互いにほぼ直角に謝り倒している。
「ようやく仲直りしたんだ……。」
見ている僕らに気が付いたのか、こっちへ寄ってくる。
「いや~~お疲れさん!迷惑かけてごめんね!」
ケムリさんはいつもの調子だ。
「アタシも迷惑かけてしまってごめんなさい。そして間に合ってよかったわ。」
テルさんも僕らに喧嘩して連携が取りづらかったことを謝罪する。
僕らは互いに「いいですよ」と言いあい、彼女に渡すべきものを渡す。
「テルさん、これはケムリさんからです。」
「?」
それは恐らくバグ予言を除いて最後の予言。
【『あめちゃんパチパチ』のA袋を先に入れるのを阻止しなければ人生が詰む。】
その『あめちゃんパチパチ』をテルさんに渡す。
「あ……これ…………。
懐かしい……。」
何の意味があるかはわからないけどケムリさんはテルさんに渡せって言った。
「懐かしいでしょ?テル。」
「ええ。
昔、まだ研究所であたしとお姉様しかいなかったころ。
初めて食べたわね。」
「うん。先生もいなくって、ボクとテル、そして制作者であるあいつの3人だけ。妹たちが作られてくる前。」
「あの時はお姉様が作り方を見ずにやってしまって大変だったわ。」
「……ああ、ごめん。」
「謝らなくていいわ。
今思い返せば素敵な思い出だもの。
初めて食べたお姉様とのお菓子。
きっと2人とも同じ人に恋をしたことも、姉妹でこうやって七人でぎゃぎゃー騒ぎながら日々を生きることも。」
「そうだね。」
「ありがとう……あたしのお姉様。」
テルさんはケムリさんに向かって手を差し出す。
「握手?」
「いや、B袋と水と混ぜなきゃできないでしょ?
だから水……。」
その様子に思わずみんなでくすっと笑っちゃう。
握手ではなくて水が欲しかっただけか。
「何よ……。」
「いや、蒲公英姉妹の皆さんは食いしん坊だなぁって……。」
僕がそう言って少し呆れたように微笑むテルさんを見て思った。
ああ、これは『人生が詰む』ところだったかもしれないな。
ビクトリア、お前の予言はいつもいいことを教えてくれる。
それは帰ってきたということ。
僕らの現実に。
「みんな、おかえり!」
僕らが笑いあっていると、何か遠くの方から騒ぎ声が聞こえる。
逡巡して僕の目の前に銃を持ったリュウナが現れる。
おそらく警察から奪ってきたリボルバー式の銃を僕へ向ける。
「ナオトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
リュウナの咆哮と共に銃口から凶弾は放たれる。
※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます…!!
この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
■ ■ ■ ■
~FrG豆知識のコーナー~
■ ■ ■ ■
幼少期のケムリ「いもーと!いもーと!これつくてあげる!」
幼少期のテル「2561姉さま……これつくるの?お水いるよ?」
幼少期のケムリ「へーきへーき!あいつのつくえからもってきた。このたてながのビーカーにはいったおみずあるからー!」
幼少期のテル「でも、いれる袋まちがってるよ?姉さま?」
幼少期のケムリ「あ…………。うわぁーーーーん!いもーといじめる!」
幼少期のテル「あ、アタシつくる手伝うからなかないで~。」




