第90ゲーム『1番信用する//四連撃、裏切り者&黒幕との決着』
――じり貧だ。
攻めてここにルビやメルカがいてくれたら勝ち筋が見えてくるのに……!
実際僕らはここまで追い詰めた。
「しかしすごいよ。
この我をここまで追い詰めたのはお前が始めてだ。ナオト。」
リュウナは余裕綽々と言った感じでズレた魔女帽を戻す。
「貴様らの万策は尽きたな。
動けば患者も殺す。」
フォルトゥーナの予言書を開く。
あの指先はすでにいつでも殺せるように人差し指を立てている。
もしあの時、青の予言書を手に入れた最初のお茶会でこいつを止められていたら……!
実際ここまで追い詰めたというのに!
「お前に都合のいい奇跡なんてもう存在させない。
フォルトゥーナの予言書はそう言ってる。」
再びリュウナは玉座に座る。
またバリアを張ったのだろう。
もう破る手段なんてない。
……初志貫徹、こうなったら…………。
一か八かで僕も『予言書』を開く。
「何をしても無駄。フォルトゥーナの予言書はビクトリアの予言書なんぞより優秀なんだよ。」
「……。」
予言に目を通し、閉じる。
もう何もできないな…………。
あの無限落下バグの時点で止めていれば……。
僕はあの先の出来事を、一生をかけて後悔する。
そして人生で最も大切な時が始まった。そう、今になって思う。
ここから書物につづられていく、奇々怪々な未来……。
アレが現実とゲームの、二つを揺るがす『ある事件』の入り口だった。
僕らにすでに賽は投げられていた。
そして今の僕はその事件の結末にいる…。
「さすがは【ラプラスの悪魔】だ。だが、奇跡はそれまでだ。」
「追い詰めたぞリュウナ……。ようやく、ここまで……。」
僕はあまりにも多くの犠牲者を出したリュウナと玉座をにらむ。これで決まる。
このラスボスで…決着だ…。取り返すぞ……全員を……。これはそういう弔い合戦だ。
この運命中枢でラスボスとの、このゲームにすべてがかかっている。
これは【予言書に導かれし物語】。
運命をリアルとゲームを行き交い、悲劇を止める僕らの物語。
これに勝てば未来が手に入り、負ければ死と絶望が待っている。
フロントライゲーム。それは予言に抗うゲーム。
その真実、あの時の始まりこそ今の僕がここにいる必然だとは、気づきもしないだろう。
――それこそが奇跡というものなのだから。
「さて戦闘不能にしてやる。
フォルトゥーナの予言書よ!」
……………………。
「この者を戦闘不……なに!!?」
――――ああ、僕ができることはもうない。
ようやく、ようやく……来てくれた。
「待ってたよ。リュフォー。そして」
猫の姿の自分を首に巻いた人間体のリュフォーともう一人。
それは僕にとって幾度となく守ってくれた、賢い獣人。
「「メルカ!!」」
「真打登場なの。」
「ああ。」
リュフォー達は急いできたのか若干息を切らしている。
あとメルカはすでにメノの姿だ。
さっき見たたった一つだけの予言。
【友達は必ず来る。】
「……ふはは!!何をいまさら!!たかが二人!!
それも我のコマ!忠実な下僕!!
ニャンタじゃないか!!
いや、リュフォーだったよねぇ!!おにいちゃあああん!!」
「……ボクも少しショックだったよ。
リュウナ。」
リュフォーがリュウナをにらむ。
本来だったら兄だったはずだけど、あいつは黒幕だ。
「しかし、ナオト。
つくづくお前は馬鹿だねぇ!!
ほら、このフォルトゥーナの予言書。
リュフォーを管理するメインコントローラーだ。」
「……!!」
このままいけばリュフォーはメルカを襲撃した時みたいに操られてしまう。
「ほら、リュフォー!!
ナオトを一方的に殴りつけなさい!!」
「……。」
「……リュフォー?おい!」
叫ぶ、リュウナをよそにリュフォーは僕に手を差し伸べる。
「おい!!聞けよ!!くそ猫!!」
「ボクは友達を殴りつけたりしない!!
お前の言うことを聞くものか!!」
リュフォーはリュウナへ指を指す。
どうやらあの時の指示がうまくいったみたいだ。
「なぜだ……?なぜ下僕が言うことを聞かない……。
……何かしたな……?
ナオトッ!!」
リュウナの余裕がようやくはがれてきた。
リュフォーはそれを見ながらこう答える。
「……マサタさんだよ。
マサタさんの遺した解読不能のノート。
それを解読したんだ。」
「マサタのノートぉおぉ?」
「ああ、それを解読するためにレンガさんを説得し呼び出したんだ。
解読よりも説得に時間がかかったけど……。
で、解読した内容は単純だ。」
リュフォーは白き預言書を指さす。
「そのフォルトゥーナの予言書のバックドアプログラムだ!!」
「な!?」
バックドア。
コンピュータ用語の一種で、ハッカーとかが使う言葉。
プログラムやセキュリティに侵入するための不正な入口。
コンピューターのシステムに侵入し情報漏洩なんかを行うことができる、ようはシステムの死角。
つまりリュフォーは今、このゲームのコントロールを取り戻そうとしているんだな!
「そのシステムはもうボクには効かない!
そしてスキルの使用制限はすでに消した!」
「そ、だから移動君零式でナオトたちのところへワープしてアバター取ってくるのは余裕だったの!あんたらと戦うためにね!」
だからすでにメルカはアバターの姿だったのか……。
「おいおい忘れたかい?
ナミカや患者達は自分たちが人質に取っていることに。」
裏切り者ロウスが不敵な笑みを浮かべながらクナイをナミカの首筋に近づける。
だがそれに対してナミカは不敵に笑う。
「おいおい忘れたの?
スキルが使えるってことはゲームと同じように戦える。
そして、ロウス。
あんた、私に勝ったことないじゃん。」
「!?」
ナミカは武器である巨大拡声器を取り出しロウスへ向ける。
「攻撃スキル:バズーカサウンド!!」
ナミカのスキルが発射されたと同時に、僕らは駆け出す。
「おのれ!!攻撃スキル:ポイズンシュリケン!!」
ロウスが毒の手裏剣を患者達の入ったカプセルに向かって放つ!
空のカプセルを除いて全員で3人!
手裏剣は不規則な軌道だ!
だが当たる場所はわかってる!
「ケンの兄ちゃんに手出しはさせない!
攻撃スキル:ユニゾン!ボンバー!!」
まずタクローが攻撃を吸収する爆弾を使い手裏剣からケンさんを守る。
だがこのままだと残り二人の王に当たってしまう!
「任せて!
防御スキル:ビックウールシールド!!」
手裏剣が当たると思ったがメルカが巨大な羊の綿を出し二人を守る!
「あとは僕に任せろ!!」
アイスチェーンソーを構えナミカの音でまだ少しひるみ、タクローとメルカの防御でたじろいている今!
「攻撃スキル:ポイズンスラッシュ!!」
「攻撃スキル:アイスクエイク!!」
ロウスは毒の剣で僕を斬りつけようとするが、その毒の剣ごとアイスチェーンソーで斬りつけ凍らせながらロウスの攻撃を無力化していく。
「まだまだ!!攻撃スキル:ポイズンストライク!!」
くると思ったよ!その技!!
毒でできた針を周りに生成し、対象を貫く技!
拮抗し、つばぜり合いのような状況に出すお前の得意技!!
だから勝てるんだよ!!
「防御スキル:パラライズ&ガード!!」
その毒の針を攻撃したものを麻痺にする盾に変換する!!
「な、なんで攻撃が……。」
攻撃が効かないかって?
決まってる。
だって。
「教えてやるよ!!お前が『仲間だった』からだよ!!」
「ぐぁ!?」
そう言って僕はロウスを殴りつける。
僕はお前の攻撃パターンくらい知ってる!
だって仲間だからだ。
暗殺や奇襲ってのも手の内が割れてんだよ。
「秩序よりも信頼が大切だからメルカはここにいるの!!」
「くっ!!?」
メルカも後ろから助走をしてロウスを殴る!!
それを失ったお前じゃ僕達には勝てない。
「これはオンラインゲーム!みんなで遊ぶゲーム!!お前ひとり用ゲームじゃねぇっての!!」
「グォオッ!?」
ナミカも後ろから助走をしてロウスを殴る!!
みんなの思いを踏みにじったんだ。
ゲーマーとして楽しんでいたころの自分自身でさえも!
「お前がかなえられなかったのは家族の期待じゃあねぇ!!
自分への期待だッ!!豪快にぶっ飛べ!!」
「ぬあああぁッッッ!!?」
タクローも後ろから助走をしてロウスを殴る!!
そして命と秩序を天秤にかけその両方を望もうとせず
奇跡を手繰り寄せなかったからお前は負けたんだ。
四連撃を食らいロウスは、地面に伏す。
「ゲームオーバーだ!!ロウス!!」
ロウスは気絶して返事はなかった。
ボコボコの顔に少し涙が出て非常に悔しそうだった。
だがそれもゲーマーだ。負けることもあるのがゲームなんだよ。
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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~FrG豆知識のコーナー~
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ビクトリア『ユーザーオト、コレガビクトリアニデキルサイゴノ予言デス。
トモダチヲ、信ジテクダサイ。』




