第7ゲーム『1人と失踪事件』
「先生って趣味とか好きなものってあるんですか?」
「うーーーん…好きなものと言えば……ラーメンとか…。趣味は~……『野球観戦』と『ゲーム』…かな?」
「「「「ゲーム!?」」」」
このアカリ先生の周りにいるのは俗にいうゲーマーだ。
つまりアカリ先生は『たいへんだ ゲーマー 4にんに かこまれてしまった。』という状況だ!
「なんのゲームをしているんですか!?」
「意なゲームのジャンルは何ですか?得」
「同じゲームをしてるなら俺とフレンド登録してくれませんか!」
「どういうプレイスタイルなのですか?」
「ちょ…ちょっと…。」
やばい4人全員一気に聞きすぎた…。アカリ先生があたふたしている…。僕らはすぐに聞くのをやめる。
しかし…スタイルがよくて大体の動作がかわいいな…。
「え、え~っと…。
なんのゲームとかジャンルとかは…基本的に、RPGとか…あと姉妹と対戦とか協力とかが必要な時にやるって感じかな…。
プレイスタイルはどのゲームでも基本やりこみ型。
宝箱とかを逃さなかったり、防具とか武器とかを全部そろえて次の街に行くタイプ。
どんなゲームかわからないけど、フレンド登録は成績が上がったらしてあげてもいいよ。」
「ッシャぁ!!」
ガッツポーズをとるタクローをよそ眼に、すらすらゲームについて語る先生に僕は少し感心していた。
――案外、アカリ先生はこちら側なのかも…。
「あの…私も聞きたいんだけど…。君たちは…。」
「僕らはただのゲーマーです。僕らは四人とも同じチームでゲームをしているんです。」
「へー……なんのゲーム?」
「えーっとフロントライゲーム・オンラインっていうゲームです。」
僕がそういうと、アカリ先生はハッとしたように笑い。
「え?フロントライゲーム?私も昔、姉とやったことあるよ!
所属は姉といろいろとあって『緑の柱国』だったりする。」
アカリ先生の口から出た緑という言葉に、僕らはご飯を食べながら『あっちゃー…。』という各々残念そうな顔をしている…。
まぁもしタクローの成績が上がれば、アカリ先生とフレンド登録して戦う機会くらいあるだろう…。
こんどは空中ステージで当たりたくないが…。
「僕らは全員、青でやっていてたまに大会出て、そこそこの活躍をする中堅プレイヤーって感じです。」
「へー、そういう風なプレイングしてるんだねー…。」
アカリ先生は何か不思議そうに顔を傾け、少し理解ができない微妙な顔をした後、ハッと納得する。
おそらくRPGではなくVRアクションゲームをそこまでせず、この類のゲームの大会ってのに認識が追い付かないのだろう。
VRに関してはビギナーなんだろうな…。
でもゲーム自体は結構好きらしく、それから昼休みが終わりホーリーに職員室に呼ばれるまで、僕らと永遠とゲームについて語り合ってしまった。あの人、面白い。
ただ昨日のバグの件に関しては言わなかったけど。
▽ ▽ ▽
5、6限目が終わり帰りの挨拶が終わって…僕らは教室がガランってなるまでどうするか話し合っていた。
休み時間から4人で最近できた喫茶店の話や、アカリ先生の話題をしながら放課後少し駄弁ったのち、昨日は反省会ができなかったから昨日の反省をして、そろそろ帰るかっていう時だ。
「ちょっといいかな?そこの4人。」
僕らのもとに声をかけてきたのは同じクラスであり割とトップの成績をキープしている、茶髪のおとなしい男。
こいつの名前は 龍流寺 隆々丸 名前に『りゅう』が『四つ』つく変わった名前から、通称『リュフォー』
最近休みがちだったんだが、今日はたまたま学校に来ていたらしい。
たしかこの学校の有名な珍組織の……なんていうんだったか…何かに所属していたような気もする。
なお、リュフォーは普段僕らとはあまり関わらないんだが…。
「どした?リュフォー?」
「君らさっきフロントライゲーム・オンラインって言ってたよね?アカリ先生との会話で…。」
「あ、ああ…。」
なんだ?やけに顔が険しいぞ…?
「あのゲームをプレイするのは今すぐやめた方がいい。帰れなくなる前に。」
「帰れなくなる?なんだ?昔の小説とかに合ったゲームに閉じ込められるとかの奴か?
あのゲームはフィクションにありがちなフルダイブ的な奴じゃないから大丈夫だよ?」
僕がそう言ってもリュフォーは首を横に振る。
「そうじゃない。実際に消えたんだよ。」
――リュフォーは冗談をあまり言わない委員長タイプの男だ。普段あまり関わらない僕らに対してこんなことを言うなんて…。
「何があったんだ?」
「ボクはあまりゲームには詳しくない…。だからありのままの事実を君らに教える。」
彼はとても寂しげな顔をして……。
「……ボクの妹が、1週間前にゲームをプレイ中に……
……失踪したんだ。」
失踪…!?
それって昨日の掲示板で見たアレか?
ここ数日まことしやかに噂されている失踪事件……。
まさかこんな近くに目撃者がいるなんて……。
「どういうことだ?リュフォー?」
「そのままの意味だよ。ゲームをしていた5歳差の妹が僕が目を離したわずか1分以下の隙にその場から消えたんだ。
そこに残されていたのは、ゲームの機器だけだ。」
「「「「……。」」」」
「警察に届け出を出してもわからず、もう1週間ずっと探している。
その場から忽然と神隠しの様に妹は消えた。僕はそのゲームに詳しくはないけど、何かあると思っている。
少し調べてみたが、どうやら僕以外にも少なからずそういう事例が、ここ数日間で起こっているらしい。」
――何だこの話は……ちょっと非現実的すぎやしないか?
アレはただの都市伝説のはずだろ…‥。
僕はそう思い少しだけスマホに手を伸ばし検索をしてみると『ゲーム中に失踪か?』などの見出しで、確かに失踪事件は少数ながらも起こっているらしい。
昨日見た通りだ。
変わりはない。
だがもしこれが事実だとしたら今、リュフォーは……。
「君の言うように失踪事件は、起こっているようだけど……。
だから僕らにフロントライゲーム・オンラインをやめてほしいってこと?」
「……ああ。ボクは忠告もせずにクラスメイトを失踪させたくはないからね。
たかがゲームで忽然と姿を消して、君たちの親が悲しんでいるところを想像したくない。」
そういう彼の顔はすごく悲しそうだ。
……身内がいなくなって不安なのだろう。
……リュフォー…今年、初めて同じクラスになったが、君は…めちゃくちゃ正義感が高い人だったんだね。
だけども……。
「それは少し杞憂にも思えるよ。ゲームと因果関係があるかどうか定かじゃない。
それに僕らはゲーマーだ。
『たかが』というゲームを下に見ている人の言葉で、あまりプレイを中断はしたくないかな。」
僕の言葉に、リュフォー以外のほかの三人はうなずく。
この言葉はきっと彼の心を踏みにじる言葉のはずだ。
「…ッ!?ボクは真剣に!親切で言っているんだよ!わかってい」
「わかるよ。真剣だってのは百も承知だよ。」
僕はリュフォーの目を見る。彼は目の奥から熱くこみ上げる焦りと真剣さがある。
手には握りこぶしを作り、拳を真っ赤に強く握りしめ震えている。
彼は普段は怒るようなそぶりを見せない。少なくともこの2か月間、誰とでも温和にやってきている。
不良とだって臆せず話すし、気さくで僕らのようなゲーマーにだって話をしてしまうような人物だ。
いろんな人やグループがいる、このクラスにとって潤滑剤のような役割をしている。
そんな彼が学校に来れない間にたまった涙を瞳から流し頬に落ちる様子を見て、真剣さが伝わらないわけがない。
それに僕だって大切な人を失う。
突然失う。
そういうことはすでに体験してきている。
なんだかほっておけない。だからこそ……。
「だからこそだよ、リュフォー。少しだけ協力させてくれないか?」
「協力…?」
「僕らはゲームの内部から、君は外側から『失踪事件』について調べてみないか?」
別に打算とか、裏があるわけじゃない。
だがエンジョイ勢と言えど『たかが』ゲームと言われたことが少し気に食わなかった。
だから見返したい。そう思い僕は協力を申し出たのだ。
それに自分のプレイしているゲームで、そんな風なことがあって廃れていくのはプレイしていて気持ちのいいものではない。
あと……なんていうんだろうか……。
きっとあの人なら……。
――いつも夢に見る僕を救ったあのお兄さんなら、きっとこんなことを言うんじゃないだろうか?
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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~FrG豆知識のコーナー~
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ナオト「リュフォーは結構気さくな奴だよ。僕らのグループにまれに話しかけてくれる。普段は社交的でクラスの接着剤みたいなやつだよ。」
リュフォー「なんだかんだで興味をそそられるんだ。君たちはある意味悪目立ちするから、タクローが特にね。」
タクロー「豪快なこの俺様はめだって当然だろ?俺様は豪快なのだから!!」




