第5ゲーム『4人と朝の日常』
※現実世界での舞台は日本ではありません。
前作と同じ世界なので若干ローファンタジーが混じっています。
いつだったか…。
この見ている光景はいつかの僕の夢だ。
最近、この夢をよく見る。
――まだ小さく黒い服を着た幼い日の僕はあの日、雨とともに泣いていた。
――そこに一人のお兄さんがフラ~って、やってきていろんなことを話してくれたんだ。
そして雨がやみ光に照らされたあの人が僕へ指さして、精一杯な声で励ましてくれたんだ。
何か大切な言葉を僕へ向けて励ましていたな……。
名前も知らないあの人は泣き笑いながら……。
▽ ▽ ▽
――朝、7時。
少し湿っぽい6月の朝。そのなか僕はピピピ…と、うるさく鳴る目覚まし時計を勢いよく叩く。
憧れるような、いい夢を見ていたのになぁ…。
僕は親や兄妹の中で一番の遅起きだ。
妹であるナミカは朝の6時にジョギングをしている。
僕の兄なんかは社会人で朝の5時に起きて6時に出社し終えている。
父さんもほぼ同時刻に出社している。違う会社なのに…。
だからこの家族だと朝7時は遅起きなのだ。
僕はパジャマから制服に着替えて、二階にある自室を後にして階段を下りてリビングを通りキッチンへと向かう。
見てみると、ナミカがすでに制服+エプロン姿だ。
「おはぁよぉ…。」
「おっはー!」
僕はあくび交じりに返事をしつつ、ナミカがコンロで何かを焼きながら朝食を用意していることに気が付く。
食器にはサラダがすでに盛り付けられているので、ナミカのわきを通りまだトースターの中にある食パンをあらかじめ盛り付けておく、ナミカの調理が終わり次第持って行ってくれるだろう。
冷蔵庫から二人分のジュースをグラスに注ぎテーブルへとフォークとスプーンも並べる。
僕が準備している間にナミカが調理終えたらしく先ほどのトーストとサラダ。
目玉焼きとベーコンを食器に盛り付けテーブルへと置く。
「どうよ!私も料理うまくなったもんっしょ!」
「ああ、前まで焦がしてたのとは大きな進歩だな。」
なお、まだ難しい料理はこいつはできないだろうけど。
そういえば昨日…目玉焼きには醤油がどうとか…。
僕はちらっとテーブルに置かれている醤油瓶を見てみる。
「なぁ昨日書いていた目玉焼きには醤油ではないって…。」
「ふふふ…。」
なんだかよからぬ笑いを僕の妹はしている。
「私は今朝ジョギングに行く前に少し気になってみてみたら、醤油瓶が見事に空だったのだよ!」
「え…。」
まさか…あの予言じみたゲームの一文がたまたま当たったのか??
「んでんで、ジョギング行くついでにコンビニ行って醤油を買って詰め替えておきました!」
「おおぉお~~!」
まぁあんな占いじみた言葉が当たるわけがない!これで今朝の目玉焼きには醤油だ!
なんだかあの文の言うことに従うのは癪だったんだよね!
「よくやったナミカ!さすがだ!ナミカ!」
「ふふ、もっと!も~っと!よくできた双子の妹の私をほめたたえてもいいんだよナオト~!」
「ああ、上出来だ!じゃあ飯を食うか!」
「うん!」
僕らはテーブルをはさんだ対面の席に座り、朝食を前に手を合わせる。
「「いただきます!」」
僕はトーストをかじりつつ、目玉焼きにナミカが買ってきた醤油をたらす。
だが口の中に伝わるトーストの香ばしい匂いと触感に紛れて鼻腔に妙な違和感を覚える。
それは単純明快で、なんだか酸っぱい匂いがするのだ。
「「?」」
対面しているナミカも不思議がり二人して首をかしげる。
その匂いの元は、僕の手元…醤油瓶からした。
……。
「まさか…。」
僕はフォークでそれがかかった目玉焼きを口に運ぶ。
口に伝わるのは目玉焼きと醤油ではなく。独特な酸っぱさ…。
「……これ、醤油じゃなくて『ポン酢』だぁ……。」
よくよく見ればいつも使っている醤油瓶の中は若干、色が違く薄い…。
「え…ガーンだな…。」
ナミカは肩をがっくりさせる。
寝ぼけた状態でコンビニに入って間違えたんだな。
僕ら二人に形容しがたい敗北感のような空気が漂う。
それに伴い何とも言えない微妙な表情を互いに取り合う。
――なんだろう……朝から日常に潜む何かに負けた感じがする。ちょっと悔しい…。
まぁ醤油には及ばないけど、これはこれでアリだなと思いながら目玉焼きをはじめとする朝食を平らげる。
結果として昨日ゲーム中、最後に見たあの謎の文の通りに、朝の目玉焼きは醤油ではなかったのだ。
▽ ▽ ▽
僕ら双子は同じ高校に通う高校生2年生だ。
僕らの学校『私立 丘の上々高等学校』と言ってこの街では割と大きく結構自由な校風だ。
二人が羽織っている色違いのパーカーなど上着を私服にしてよかったり、ゲーム機はさすがに無理だけどカードゲームは大丈夫だったり私物に関してもだいぶ甘い。
校章にはぎょろっとした目玉に三角形のマークがついて『なんだか秘密結社みたいだ』というのが、近隣住民からよく言われる。俗にいうマンモス校で在籍生徒は1000人以上。校舎は旧校舎も併せて全部で5つ、どれも大きい。
学校は僕らの国『旭我国』という国の陸谷というやや西南の都市の少しはずれ徳敷町にある。
住所は旭我国 陸谷 徳敷町 だ-28 だったけな。
余談だけど、この国は人間が住める都市が限られているが、僕らには関係のないことだ。
この世界には動物の特徴がある獣人や光合成できる、怪力の鬼など様々な人種が住んでいて、僕らの国は科学技術を発展させてそれなりの文明を築いた…らしい。
多人種国家であったがゆえに様々な種族が協力しあったからこそ、高度経済成長期を皮切りに科学技術が発展したというのが有名な歴史学者達の定説らしい。
そうでもなきゃ、ここまで科学が進んだVR技術を含む高性能なゲームを開発できなかっただろう。
まぁ、この言葉全て歴史科の先生の受け売りだけど。
当然だけど人種…種族などに関しても差別はほぼないに等しい。
――平凡で穏やか、悪く言えば退屈な僕らの日常だ。退屈しのぎはゲームくらいだ。
僕ら双子はテスト返しする教科の内容を確認しあったりしつつ、一緒に登校する。
登校時間は30分ちょっと。
この登校中の光景もずいぶんと見慣れた、ここは瓦屋根や高い塀がある街並みだ。
歴史科の先生が昔言っていたんだけど、どうやらこの徳敷町は超大昔に戦争していた時の砦や防壁がそのまま残っているらしい。
この都市はそういう歴史的文化財が多く残っていることから、街並みは別の都市に比べきれいな方らしい。
「ナオトー、今日の1限目何だっけ?」
「歴史…僕あの先生苦手なんだよなぁー…。」
「ホーリーか…私もアレはない……。」
「「はぁ~…。」」
なお、先ほどからちょくちょく登場する社会科と歴史を受け持つ先生『堀岡 社太郎』こと『ホーリー』は僕ら双子のクラスの担任だ。
ナミカと名前を1年たっても間違えるから嫌いだ。大体、巻き舌で話すし、前歯が1本かけていて唾が飛びまくる。
そしてテストは、授業中ちょびっとしか言っていないことを4問くらい出す、意地悪すぎる先生だ。
おまけに『社会に出たらなァ!』とか言う癖に、自分は事務のアルバイトを2,3回経験して教師になったもんだから説得力があまりない。
そんな僕らの後方から石畳をドタドタと慌ただしく蹴り上げる音が聞こえ、振り返りつつあった僕の肩をドン!と叩く。
「オッス!双子!今日も豪快に二人だな!」
この僕の肩を勢いよく叩いた男は『鳥摩 宅郎』みんなから『タクロー』と呼ばれている、クラスメイトで友人だ。
彼の種族は『鬼人』。怪力の種族で彼の頭には一本角が勇ましく生えている。
昨日一緒にゲームをプレイし無限落下バグの原因ともなった、僕らのクランのアタッカー『クロス』のプレイヤーでもある。
ナミカたちもそうだが学校とかリアルではタクローと呼び、ゲームではミカとクロスとちゃんとゲームでの呼び名と使い分けている。
「ちょっと~!待ってよ、タクロ~!あ、二人とも、おはようなの。」
そして遅れてやってきた少し身長の低いこの女性は『弥生 芽流華』、呼び名は『メルカ』同じくクラスメイトで友人だ。
種族は『獣人』…正確には『羊の獣人』だ。冬場になると手や首周りにもこもこの毛が生えてきて温かそうになったり耳が羊だったりする。なんなら今も少しだけ手首にシュシュみたいに毛が生えていてもこもこしている。
お察しの通り、ゲームでは拠点防衛の要の一人であるディフェンダー『メノ』のプレイヤーだ。
「あ、タクローにメルカ。おはよ。」
「おっはー!」
僕ら双子は二人にあいさつしつつ、登校しながら昨日のバグと今朝の出来事を話すことにした。
大体、学校での話題もゲームのこととかだから二人とも気楽な友達って感じだ。
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この物語の『更新』は初日の3部、1月2日第4ゲーム、1月3日第5ゲームを除いて基本『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
今後は上記の各曜日午後20時頃に更新していきます!
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~FrG豆知識のコーナー~
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メルカ「私たちの世界っていろんな種族がいるけど他にどんなわかるかな?」
タクロー「俺様のような鬼だろ、ナオトたち人間、メルカのような獣人、背がちっこい草原人、光合成ってのができる妖精人ってのと……。」
メルカ「時間切れ~~。メルカは生物選択しているから教えてあげるけど先生曰く、『人種って無限』らしいよ。
いろんな人種を知るのは大事だけど固定概念にとらわれたら、差別の元になるからしっかり勉強していけばいいよ~。」




