第4ゲーム『三人の始まりのお茶会』
僕は挙動不審になりつつも進められた通り対面の椅子に座ろうとする。
椅子は重厚感のある椅子だ。
だが座ろうとしたら僕は椅子を貫通し尻もちを突く。
「痛て…。」
「おっと済まない……。現実ではそこに椅子なんてないんだったな。
これで三回目だというのに、同じミスをしてしまう。ワタシの悪いところだ。
どこでもいいから腰掛けれるところに座りなさい。我々が合わせよう。」
僕は普段慣れた足取りでベッドのある場所へ向かって歩き、ベッドに腰かけると彼女たちとティーセットが机ごと勢いよく迫ってきた。すごくシュールな図なのにどこか僕はそれを受け入れていた。
「なんだ…あんたたちは……。」
「ワタシの名前は『マーリン』。お察しの通りNPCだ。」
白い魔女は自分の胸に手を当てる…。思春期男子として、手を当てた部位に目が行きつつも、すぐさま顔を上げる。
少しドキッとしてしまった。NPCなのに…。
「そしてこのピクシーは『ビクトリア』」
「ヨロ…。」
ビクトリアと紹介された妖精はマーリンの手のひらに気だるげにトンボの様に止まる。可愛い…。
「君でようやく三人目だ。ようやく真のプレイヤーが揃った。
それもちゃんと赤、緑そして最後に青に所属したちゃんと資格を持つものが。」
「真のプレイヤー??」
「詳しく説明したいところだけど時間が無いの。
運営に感づかれると我々はまずい。
だから最低限しか言えない。」
なんだ?ますますわからない…。
「いったい…何がなんの…。」
僕が困惑している中、マーリンは指先で何かを操作するような動作をする。
それは僕らプレイヤーがアイテムボックスとか、ステータスを確認するときの動きにそっくりだ…。
「……これでいいか。」
マーリンがそうつぶやくと僕のアイテムボックスが唐突に表示され唐突にその中の一つが目の前の空中に出現する。
それは先ほど買ったばかりの、戦闘や日常の記録を自動的に小説化してくれるアイテム『日記小説』だった。
最も買ってきたばかりでほぼ何も記載されていないはずだ。
大したものも書かれていないし、急いで戦闘の準備をしたから個人からしか閲覧出来ないようにするパスワードとかの設定もまだ済ませていない…。
「何をする…!?」
「少し借りるぞ!」
僕の『日記小説』にマーリンは右腕を手刀するかのように、腕がずぶずぶと入っていく。
そのまま肘下までマーリンの右腕は本にのみこまれている。
「データダウンロード中…解凍…インストール…個人アカウントのバッグドアを作成…。
運営の不可侵変数を付与。
セキュリティクリアランス『ビクトリアブルー』を付与。」
バチバチと光を帯びていく僕の『日記小説』へ僕は手を伸ばし取り返そうとするが、手を伸ばすとハンドデバイスから静電気のような感じたことのない痛みがした。
だがその光景は、ものの30秒で終わったのだ。
「これで良し…。」
「何をしたんだ…?」
マーリンは右手を引っこ抜いて『日記小説』は僕の手の中にすとんと落ちる。
「今からいうことをよく聞きなさい。お前は選ばれました。」
マーリンは少し薄く笑う。それと同時に茶器が揺れていく。
「フロントにある【最後の玉座】を目指しなさい。
全てはピクシーの導くままに。予言はあなたの手の中に。
あなたたちとリンクし続けているこのゲームを進みなさい。」
そう言ってマーリンは僕へと手を伸ばし、光の粒子となって消えていく。
マーリンだったものの光が周りへと拡散していく中、僕の手の中にある『日記小説』はパラパラと白いページがめくられていく。
「また会いましょう。」
それを見届けたピクシーのビクトリアはマーリンのいた場所を眺め、僕を無視してどこかへと飛んでいく。
そしてティーセットも消えていき、世界は虚無と言って差し支えない真っ黒な空間へと戻る。
僕は茫然自失としながら手元にある『日記小説』をちらっとのぞき込む。
それはあの光の粒子の中、最後のページまでめくれたのだろうか?
やけに左側のページに厚みがあった。
その最後のページには実に奇妙なことが書いてあった。
――それはただ一文だった。
【明日の朝の目玉焼きは醤油ではない。】
「は?」
その文を見た瞬間、視界に見慣れたゲームオーバーの文字が映る。
下には『ホームに帰還しますか?』と『ゲームを終了しますか?』の文字。
僕は何が起こったのかわからなかったので、とりあえず左のゲームを終了するほうのボタンを押す。
ちょっと何が何だかわからない…。
少し休みたい…。
■ ■ ■
フロントライゲーム・オンライン[ログアウト]
■ ■ ■
現実世界。
僕の部屋だ。青色を基調としたベッドに学習机、小さなテレビと小さいパソコンとさっきまでやっていたVR用のカーペットが敷き詰められている。
さっきまで腰かけていたベッドに倒れるように横たわる…。
変な汗が額から落ちる。グローブ状のハンドデバイスの片手を取り手で汗をかくるぬぐう。
「何だったんだ…?今の…。」
そんな僕が困惑している中、ドアをうるさくノックする音が聞こえる。
「ナオトーーー!!大丈夫ーー!?」
「……あ、ナミカ。」
僕は双子の妹であるナミカがパジャマ姿で勢いよく男の領域であるこの部屋に大侵入してきたので、ちょっとぎょっとしながらベッドから顔を上げる。
ナミカが勢いよく叫ぶ『ナオト』って言うのはお察しの通り
『オト』のプレイヤーである僕、『光菜 波音』の本名だ。
「…あれ?あれれ~?もしかして私ったら何かお邪魔なタイミングだったり??オホホホ…。」
「いや…さすがにちげーよ。」
僕は思春期の男だ。部屋に鍵くらいかける。
だが、この妹はなぜか鍵のコピーをいつの間にか入手して平然と入ってくるから気が気でない。
「まぁいっか…。さっきの試合負けちゃったし、みんな『拠点で反省会しよー』ってなったのに、いつまでたってもナオトこないんだもん…。」
「勝敗は?」
「赤が珍しく耐久勝ち。私達は最下位。」
そしてこの僕の双子の妹、光菜 波香こそゲーム内でオペレーションを務めた『ミカ』のプレイヤーでもある。
双子揃って同じゲームでチームを組むくらいには仲がいい。
少しきょとんとしつつもナミカは少し興奮気味に話す。
「あの時、落下判定に巻き込まれた結果ナオトも退場したはずなのに、いつまでも戻ってこないんだよ!
流石に心配になったから、みんなで連絡したのにいつまでも来ないから私が見に来たんだよ!
大丈夫なの!?」
「え…あ……ああ…大丈夫……。」
…僕はあのマーリンと名乗るNPCのことが頭をよぎる。
そして最後に見たあの一文も…。
【明日の朝の目玉焼きは醤油ではない。】
僕は少し弁明がてらナミカに相談してみることにした。
▽ ▽ ▽
「はぁ~??何そのバグにバグキャラ…。
何かの都市伝説にありそうな内容だね。
レアな現象に巻き込まれてラッキーじゃん!」
僕のさっき会って出来事を離すとナミカは軽くケタケタ笑う。
「いやでも実際結構怖かったぜ?」
「え~そんなに怖いことかな…?それになんでナオトの『日記小説』にその目玉焼きのことが書かれたのかな?
そのマーリンさんってのは、ソース派なのかな?」
「さぁ?」
ちなみに我が家は全員筋金入りの醤油派だ。
僕はちらっと時計を見てみると寝るのにいい時間帯だ。
「まぁ今日はもう夜も遅いし寝るか。詳しいことは明日、他の二人と学校で話そう。
明日はテスト返しだから心構えをしておきたいし…。」
「そ~~~だったぁ~~…テ・ス・ト残酷で冷酷な響き!!」
「前みたいに体育と音楽以外、赤点か赤点すれすれだけは回避してくれよ。ナミカ…。
兄ちゃんに怒られて飯までの時間が伸びるのは、ごめんだから。」
「うぅ~~!ザ・平均点のナオトめ!」
「変なあだ名付けるな。じゃおやすみ。」
「おやすみなさ~い!」
ナミカを自室に消えていくのを見送りチラッとスマホの通話記録を見てみる。
不在着信が32件…。僕がバグに巻き込まれている間に三人に心配をかけたようだ。
チャットアプリを起動し軽く事情を説明したうえで『おやすみ』『また明日』と言いベッドにもぐりこむ。
また明日も日常だ。
――テスト返し嫌だなぁ~…。
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この物語の『更新』は初日の3部、1月2日第4ゲーム、1月3日第5ゲームを除いて基本『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
次の更新は1月3日午前8時頃にあります!
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~FrG豆知識のコーナー~
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ナオト「僕らは双子だけど、僕が先に産まれたんだよね♪」
ナミカ「兄面しないでよ、10分差のくせに~!」
ナオト「まぁ結構好みも一緒だったりするよ。二人とも好きな食べものはプリン。なぜ好きなのかといえば」
ナミカ・ナオト「「カスタードを絡めて舌の上で堪能するのが好きだから。」」




