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第30ゲーム『01歩目と言葉』



 僕のせいか……?



 僕が予言の内容をみんなに言わなかったからか?





『生徒先生諸君、我々は国家転覆を目的としたテロ組織

『マスク・オブ・エンパイア』である。

我々は銃で武装している。

我々は貴様らの教室をすべて占領できるほどの戦力を保有している。

この学校にいる我々以外の全員は人質だ。

貴様らの数はおおよそ1000人。

政府との交渉中、無駄な抵抗をした場合は躊躇なく発砲し射殺するものとする。

1000人もいるんだ1人くらい死んだところで問題はない。

自分やお友達の命が惜しいなら、無駄な抵抗はせずこちらの言うことを聞け。

スマートフォンなどの通信端末、および電子機器を速やかに机の上に置き、両手を上げて頭を伏せろ。

教室を出ている生徒を見つけた場合、即座に発砲をする。

繰り返す、貴様らは人質だ。

貴様らの生殺与奪権はこちらに握っている。』







 校内放送が終わると、教室に約8人くらいのテロリストが僕らを取り囲む。

 恐らく廊下にも他の教室にもいるだろう……。

「というわけだ。ガキども死にたくなければ、はやく指示に従い通信端末を机に置いて両手を上げて頭を伏せろ!」



 僕らは不安と恐怖、不服に思いながら何も言わずにスマホを机に置き、頭を伏せて両手を頭の上に置く。

 そのまま腕は縄で縛られる。

 そして僕のそばを通った男が僕を含むみんなのスマホを回収する。

 アカリ先生は恐らく地面に倒れ伏すような形で拘束されている。

 ナミカを含むみんなは僕と同じような状態だろう。



「これで全部だな?

おいガキども!

おじさんたちはな、貴様らのように国の将来を背負うガキが嫌いだ。

政府が時間をかければかけるほど人が死ぬ。

政府にまず要求するのは150億円。

そして捕まった仲間の開放と現政権及び政党の完全解体だ。

できなかったら大体10分で各教室1人ずつ、見せしめに殺す。

ただし政府が要求をのんだ後も釘をさすために何人か拉致をする。

売り物になりそうなやつは裏で人身売買に使うし、この腐りきった国に傷跡を残し我らという存在を知らしめてやる。

愚かな生き方をしている国民共に血と殺戮を与えてやる。」

 何が腐りきっているだ。

 自己紹介がうまいな、このテロリスト。

 愚かな生き方をしているってのは自分だってのに……!












 しかし……たったの10分……そんなの用意できるわけないだろ!!





「あんたたちの目的は何なの!?」

 アカリ先生の声が聞こえた。

 だが銃を突きつけられる音が聞こえる。

「ぐっ……。」

「おとなしくしろよ、せんせ。

あんたは結構、俺のお気に入りなんでな。

できるだけ殺したくない。

だが壊したい女でもある。

むろん、健全な青少年にはお届けできないような意味でのな。

としてお前はお仕事が終わったら、()()()()()()ねぇ~……。」

「……そうなる前にあんたを殴って警察に引き渡してやるから。

あいにくと小学校の義務教育を守れないような、下半身ばかりの野蛮な男は興味じゃないの。」

「……ケッ可愛いくない女だ。」

 先生……。





「なら、気が変わった。まずは1人、すぐにでも死んでもらおう。」

 その言葉を聞き、誰かがすすり泣く声が聞こえる。

 歯ぎしり。





 誰かが失禁でもしたのかアンモニア臭。



 歯ががちがちと聞こえる音。



 嗚咽。





 僕は嫌に冷静にそれらの周りの恐怖を五感で感じ取っていた。





 こいつらは冗談が通じない。

 本当に殺す。



 う、動かなければ……。



 だが動けない。



 足が石になったようだ。





 腰が上がらない。








「よし、まずはお前だ。立て。」






 そうして犠牲者に選ばれたのは……。





「え」














 僕でした。













 ▽ ▽ ▽ 





「グァ……」

 僕は乱暴に両腕を掴まれて教卓へと押し付けられる。



 アカリ先生の恐怖の顔が見える。



 タクローの歯ぎしりから震える怒りが伝わる



 メルカの貧乏ゆすりの布の擦れる音が聞こえる。



 後ろでナミカの泣く声が聞こえる。



 そして僕の頭にマシンガンの銃口が突き付けられる。


 目の焦点が合わない。



 なんでこんな唐突に僕は死ぬんだ?

 なんで今日死ぬんだ?

 なんで今日死ぬとわかっていながら何もしてこなかった?

 なんでこいつらに殺されるんだ?

 なんで今まで冷静でいられた?

 なんで僕は何もできないんだ?








 そしてようやく、『ああこれは現実だった。』っていうのがわかって、喉の近くに叫び声が来ているのがわかる。





 ああ、死ぬんだ。





 死ぬのってこんなに怖いことなんだ。



 今回も大丈夫だと思った……。

 僕だけは大丈夫だとどこか高をくくっていた。



 だが、こんな『()()()()』にとって()()と言える状況がピンポイントで来るなんて聞いていない。

 ここだとこいつらに殺されるより()()が出てしまう……。



「さてこのガキ……えー名簿によるとナオト君でいいのかな?

処刑までの秒読み開始……。」



「10」



 なぜ明日がある明日も予定調和通りの1日でいられると思った?



「9」



 慎重になったんじゃない。



「8」



 みんなに言うのが、怖かったんだ。



「7」



 だから秘密を抱えたんだ。



「6」



 ごめん、僕の大切な友達。



「5」



 ごめん、父さん、母さん、あんちゃん……。



「4」



 ごめん、ナミカ。



「3」



 ――死ぬのが怖い。













 誰かに言ったことがあるな…………この言葉……。












 いつも見る夢の人……あのおじちゃんに言ったんだ。



=======











 これは……走馬灯か……。











「ガキ、お前はやっちゃいけねーことを一つしてる。」

「?」

 いつも夢に出てくるおじちゃんだ。

 あの夢だ……。



 これは子供の頃に言われた言葉だ。

 小さい時の僕の視線にはその人はとても大きな背中だった。



「弱いものいじめだ。」

「僕、誰もいじめてないよ?」

「今、お前は心の弱い『自分自身』を、いじめて泣かしてるんだよ。」

 そうおじちゃんは僕の前へ1歩を進み言ってくれた。

 死におびえ生きる気力の無くなった僕へ向けて。





「お前はそうやって母親が死んで殻に閉じこもろうとしていた。

だが、それだとお前自身が救われないんだよ。」

 母さんの葬式の日、今日みたいな雨模様の天気の中、おじちゃんは…………その男はふらりと現れた。





「それどころか、お前にかかわってきた、家族や友達いろんな人間も弱いものいじめされたお前をみて、哀しい気持ちになっちまう。」

 雨の中、どこからともなくやってきたその男の頬には目から大粒の雨粒が流れていた。





「そしてお前自身が弱いものいじめをして、何一ついい気持になっちゃいない!」

 まるでその男は自分自身の後悔をも拭うように、ゆっくりと目から頬へと伝い僕を見つめていた。





「確かに死ぬのが怖いこともわかる。

それを恐怖するあまり泣きたくなるのもわかる。

だけどな、泣いていて下ばかりを向いてちゃダメなんだよ。」

 顔を上げると雨の中、雲の間を縫うように太陽がその男の目をゆっくりと照らしていく。



「胸を張って堂々と前を向いて、ガキはガキらしく馬鹿みてぇに笑ってるくらいが、ちょうどいいんだよ。」

 死へ怯え誰とも関わらないつもりでいた僕へ向けて、あそこまで堂々とした態度で僕へ向き合ってくれた名も知らぬ人がいた。

 苦しい中、ボロボロになった服を誇らしげに着て、腕につけたバンダナをなびかせて向き合ってくれた。









 あの日、出会ったばかりなのに、名前の知らない人は僕に声をかけてくれたんだ。







「でも怖くてたまらないよ!」

 僕は怖かった。死ぬのが怖かった。

 母さんみたいに冷たくなるのが怖かったんだ。

 大切な人に永遠に会えないのが怖かったんだ。



 死ぬのが怖くない勇気を持った人にはわからないだろうと思った。



 だけどその人は……。



「死ぬのが怖い?当たり前だ!俺だって怖い!

でもな、その気持ちがないと『もっと生きていたい』って思えねぇだろ?

だからその気持ちを大切に持って……。」



 涙を流しながらそんな風にいう彼は僕を救ってくれた。

 この言葉で……。



挿絵(By みてみん)



「今を生きろ!!!!」





=======





「……2!」





 僕の中で1番好きな数字がテロリストの口から出てきたとたん。









 体は勝手に動いていた。





 怖かったから。









 もっと生きていたいから。







 僕は自分に銃を向けていた男へ、タックルをかましていた。

 火事場のバカぢからというものだろうか?

 男は予想していなかったものの反撃をくらい大きくのけぞる。

 僕の行動へ気づいたテロリストたちが銃口を一斉に向ける。









挿絵(By みてみん)



「ああァッ!!生きてやるさッ!!!!」









 僕に【第01歩目】を教えてくれた、赤いバンダナのおじちゃん。

 僕はもう少しだけ……

 ……悪あがきかもしれないけど、馬鹿馬鹿しい今を精一杯、生きてみるよ。

 がむしゃらでも

 やけくそ気味でも

 あの時のおじちゃんみたいにボロボロの姿になりながらでも。







 ――あの夕日の中、2人分の泣きはらした顔が、今もあるっての自分に堂々と言えるように。







 ――――そうだろ?

※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます…!!

この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。



■ ■ ■ ■

~FrG豆知識のコーナー~

■ ■ ■ ■

???「ハナビッ!!レンガッ!!社会人組ッ!!そっちはどう!?アカリ達と合流できるの!?」

ハナビ「ごめん、バス待ち……タクシーも捕まらない!レンガお姉ちゃんを外に連れ出さなければよかった……。」

???「姉さん……あたいも都市外にいて無理だ……。」

???「お姉様……あたしはハナビ達と真逆のところ……!」

???「わかった!あんたたちは念のため待機!ボクは協力者を連れていく!」





■ ■ ■ ■

作者の独り言。

■ ■ ■ ■

※今回はもしも前作『nOva urGE』の11話を読んだことがある人なら恐らく勘づくだろう。

 そう、ナオト君はあの時の少年だよ。

 これは前作の完全な続きとは言わない。

 でも同じ世界線だから前作で起こした出来事や結果はしっかりと反映します。

 今回書いていてわかったのは、ナオト君にあいつの心はしっかりは受け継がれている。

 頑張れ。ナオト君。


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